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“乳酸菌”が作るお茶があるって本当?!〜世界でも珍しい「後発酵茶」〜

お茶には大きくわけて「不発酵茶」と「発酵茶」の2種類があります。その「発酵茶」の中でも、世界的に珍しいのが「後発酵茶」と呼ばれるもの。茶葉に含まれる酸化酵素ではなく、乳酸菌のような「微生物」を加えて発酵させます。日本に存在する「後発酵茶」の種類と特徴、さらに緑茶との違いなども調べてみました。

微生物で発酵させるお茶「後発酵茶」

“乳酸菌”が作るお茶があるって本当?!〜世界でも珍しい「後発酵茶」〜

後発酵茶とは、摘採された茶葉を微生物で発酵させたお茶のこと。紅茶などの「発酵茶」が茶葉に含まれる酸化酵素で発酵させるのに対し、後発酵茶はカビや乳酸菌などの微生物の働きによって茶葉を発酵させます。中国雲南省で作られる「プーアル茶」、タイの「ミャン」なども後発酵茶に分類されています。

お茶を微生物で発酵させる文化は世界でも珍しく、それほどたくさんの種類があるわけではありません。しかし、日本にも複数の地域で「後発酵茶」が作られています。その中でも愛媛県の「石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)」、高知県の「碁石茶(ごいしちゃ)」、徳島県の「阿波晩茶(あわばんちゃ)」の3種類は、乳酸菌の働きによってお茶を発酵させるのが特徴です。

「乳酸発酵」で作る日本のお茶

徳島県の「阿波晩茶」

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阿波晩茶は、徳島の庶民の間に伝えられてきたお茶。一番茶、二番茶の残り茶葉で作られた「番茶」ではなく、十分に育った一番茶葉から作られます。普通の緑茶とは異なり、茶葉を大きな釜で茹で、茶すり機ですり、桶で1週間から2週間ほど乳酸発酵させたあと、天日で乾燥させて作られます。コクがあり、少し酸味のある味わいが特徴のお茶だそうです。

高知県の「碁石茶」

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高知県の碁石茶は、乳酸菌に漬け込む前に「カビ発酵」させてから作る「二段発酵」が特徴。碁石茶のルーツは、中国雲南省に住む少数民族のプーラン族が作っていた「酸茶」というものだそうで、酸茶と碁石茶の製法は原理的には同じだそうです。甘ずっぱい香り、独特の風味、そして緑茶よりタンニンが少ない後発酵茶です。

愛媛県の「石鎚黒茶」

西日本最高峰の石鎚山の麓、小松町石鎚地区に古くから伝わり、独自の製法で作られているのが石鎚黒茶。碁石茶と同じく、カビと乳酸菌の二段発酵によって作られています。渋みはほとんどなく、爽やかな後味が特徴。黒茶だけで飲むのはもちろん、食中茶として肉料理や脂がのった焼き魚とも好相性。また「食すお茶」として、ご飯と一緒に「茶粥」にして食べることもあるそうです。

「緑茶」と「後発酵茶」の違いは?

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後発酵茶は、緑茶などの不発酵茶とはさまざまな点で異なります。製造過程で発酵の手間がかかるのはもちろん、煎れたときの色は「緑色」というより「茶色」っぽくなるものが多いとか。

また、成分データを見ると、後発酵茶は緑茶よりもカテキン、カフェイン量が少ないことがわかっています。カテキン類はお茶の渋みの原因でもあるので、カフェインやカテキンが少ない後発酵茶は子供にも飲みやすいお茶と言えそうです。

後発酵茶の成分の多くはいまだ不明なところがある一方、健康面での効果は少しずつ明らかになってきています。二段発酵を行う石鎚黒茶と碁石茶は、緑茶よりもカテキン含有量が低いにも関わらず、抗酸化活性が意外と高いという研究結果も出ています。

おそらく後発酵茶もしくは後発酵茶の中の発酵生成物が、緑茶に含まれる一般的なカテキン類と同等、あるいはそれらを上回る効果を発揮しているのでは、と推測する研究者も多いようです。

乳酸菌など微生物の働きによって作られる後発酵茶。緑茶のように健康面での効果が明らかになっていけば、これまで以上にその文化と歴史が見直されていくかもしれませんね。

【参考文献】
「阿波晩茶」(『事典 日本の地域ブランド・名産品』日外アソシエーツ)
「阿波晩茶」(徳島県・一般財団法人 徳島県観光協会「徳島県観光情報サイト 阿波ナビ」)
「碁石茶」(『飲み物がわかる辞典』講談社)
「『本場の本物』大豊の碁石茶」(大豊町公式Webサイト)
「石鎚黒茶」(西条市公式Webサイト)
「特集 毎日の暮らしに石鎚黒茶」(『広報さいじょう』2018年10月号)
「お茶の種類と作り方」(入間市博物館ALIT Webサイト)
「さがせ、菌の『お国自慢』 いま地産微生物が熱い!」(国立研究開発法人産業技術総合研究所Webサイト)
折居千賀「菌が作るお茶の科学」(『生物工学会誌』第9号 日本生物工学会 2010年)

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