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腸内フローラは運動で変化する? 「アスリート型」腸内フローラの特徴とは

数百種類以上、およそ100兆個によって構成されているというヒトの腸内フローラ。そのバランスは、毎日の食事や運動習慣によって常に変化しています。最近の研究では、激しい運動を行うトップアスリートたちの腸内フローラは、一般人とは明らかに違う状態に変化していることがわかってきたそうです。

どうして運動すると腸内フローラが変化するのでしょうか? アスリートじゃない一般人が運動しても腸内フローラは変化するのでしょうか? 「運動と腸内フローラの関係」をいろいろと調べてみました。

アスリートの腸内フローラは、一般人と違う!?

腸内フローラは運動で変化する? 「アスリート型」腸内フローラの特徴とは

人間の腸内細菌は、重量が約1.5キロあると言われ、数百種類以上、およそ100兆個の微生物たちによって腸内フローラが形成されています。バランスの取れた多様性のある腸内フローラを維持するには、ビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維などを多く摂取し、腸内細菌を活性化させるのがいいとされています。

さらに近年の研究では、食事だけでなく、運動によって腸内フローラの構成が大きく変化することが分かってきました。

運動が腸内フローラの多様性を“鍛える”という報告

腸内フローラは運動で変化する? 「アスリート型」腸内フローラの特徴とは

トップアスリートなどの腸内フローラを調べた海外の研究論文には、一般の健常者たちとは明らかに異なる結果が報告されています。「運動する人」と「運動しない人」の腸内フローラを比較してみると、複数の研究で「菌種の多様性」が確認されています。

2017年のMörkl氏らの研究論文では、1週間で最低7時間はトレーニングプログラムをこなし、何らかの競技大会に出場している、運動部の女子大生レベルを「アスリート」と定義し、106人の女性を対象として腸内フローラを調査しました。

ボディマス指数(BMI)が「22」「27」「35」の3つの一般人グループと、BMI「22」のアスリートのグループの腸内環境を調べてみたところ、アスリートの腸内フローラには「菌種の多様性」がもっとも認められたという報告があります。

また、Clarke氏らが発表した論文では、アイルランドの国際ラグビーチームの選手の腸内フローラに、通常より高い多様性があっただけでなく、一般人よりも消化管下部で食品成分を効率よく分解・利用できる状態になっていたという報告もされています。

2018年のAllen氏らによる実験では、BMIが25未満の「平均〜少しやせ気味」グループ18人と、28以上の「肥満」グループ14人とに対して、週に3回30〜60分の中程度〜強度の運動を行う生活を6週間続けた前後と、そのあと、運動を行わず主に座っている生活を6週間送ってもらい、腸内フローラと腸内代謝物の変化を調べました。

まず、実験開始前は腸内での「酪酸」の産生量が多いほど、体脂肪率が低い傾向が見られました。

続いて実験を開始し、運動を行う生活を送っていると、被験者たちの腸内では酪酸を生み出す菌種が増え、さらに運動を行わない生活に戻ると、これらの菌種が減り酪酸の産生量も減っていました。つまり、体脂肪率を低くしたい場合は、定期的な運動がよい影響をもたらす可能性がありそうです。

「アスリート型」腸内フローラを形成する要因

腸内フローラは運動で変化する? 「アスリート型」腸内フローラの特徴とは

こうした研究結果をまとめてみると、アスリートの腸内フローラが一般人と異なる理由に、アスリート特有の「食生活」と「運動習慣」の両方が関係していると推測できます。アスリートは体脂肪率を気にするため,高タンパク質の食事を念頭におく傾向があり、一般人の食事よりも「栄養密度が高い食事」になりやすく、その食事内容が腸内フローラを変化させている可能性があります。

それと同時に、体にダメージを受けるような練習や試合をするアスリートは、激しい運動によるダメージを修復しやすいよう、高エネルギー獲得系の腸内フローラを獲得していると言えるでしょう。

アスリートの腸内が一般人とは違うとはいえ、特定の細菌が影響を与えているわけではありません。アスリート特有の食生活、運動習慣を継続することで、「アスリート型」の腸内フローラが形成されているのです。アスリートのような激しい運動はできなくても、毎日適度な運動を継続することで、多様性のある健康的な腸内をキープすることはできそうです。

【参考文献】
森田英利「運動と腸内細菌叢」(『腸内細菌学雑誌』34巻1号 腸内細菌学会 2020年)
Mörkl S,et al.「Gut microbiota and body composition in anorexia nervosa inpatients in comparison to athletes, overweight, obese, and normal weight controls」(『Int J Eat Disord』 2017; 50:1421–1431.)
Clark A, Mach N. 「Exercise-induced stress behavior,
gut-microbiota-brain axis and diet: a systematic review
for athletes」(『J Int Soc Sports Nutr』 2016; 13: 43.
eCollection 2016)
Clarke SF,et al.「Exercise and associated dietary extremes impact on gut microbial diversity」(『Gut』 2014;63:1913-1920)
Allen JM, et al.「Exercise
alters gut microbiota composition and function in lean
and obese Humans」 (『Med Sci Sports Exerc』 2018; 50:
747–757)


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