「バイキン」と一括りにされがちだけど…。「カビ」と「細菌」の違いを解説!

私たちは、何となく悪いイメージを持つ微生物を「バイキン」と呼びますが、漢字ではどのように表記するかご存じでしょうか。その答えは「黴菌」。「黴」とはカビ、「菌」は細菌のことですが、もちろん「黴菌」という種類があるわけではなく、物を腐らせたり病気を引き起こしたりする、人体に有害な微生物の俗称です。

カビと細菌は私たちの生活に身近であるがゆえ、その違いについて知らずに過ごしていることも多いのではないでしょうか。「バイキン」としてまとめられてしまいがちなカビと細菌の、生物としての共通点や違いについて調べてみました。

カビと細菌に共通するのは「単細胞生物」という点

「バイキン」と一括りにされがちだけど…。「カビ」と「細菌」の違いを解説!

まず、カビと細菌とに共通するのは、単細胞で生きている「原生生物」だという点です。原生生物は、その細胞内に核を持っている「真核原生生物」と、核を持たない「原核原生生物」との2種類に分かれます。カビなどの真菌は前者に、細菌は後者に該当します。

カビと細菌は、同じ「単細胞の微生物」ではありますが、実はさまざまな点で異なる生物です。それでは、その違いを見ていきましょう。

カビと細菌の違い その1:「核」の有無

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「真核原生生物」のなかで、カビは「真菌類」というグループに分類されます。食品などについて繁殖する青カビやお風呂場でよく見られる赤カビのほか、パン作りや味噌造りには欠かせない「酵母」、椎茸や松茸、しめじ、マッシュルームなど食卓に身近な「きのこ」もこの真菌類の一員です。

カビは別名「糸状菌」とも呼ばれるように、その形態は、糸状に長く伸びる菌糸と胞子から成り立ち、菌糸の先端部に胞子を作って繁殖します。きのこはその菌糸体が寄り集まって大型の子実体(胞子を生み出す、菌類の生殖体)になったものなのです。

「真核原生生物」であるカビの細胞内のDNAは、膜に包まれた核の中に存在しています。核以外にも、細胞内にミトコンドリアや小胞体などたくさんの小器官を持っており、子孫を残すには生殖専用の細胞「胞子」を作るなど、その仕組みも複雑です。

一方、「原核原生生物」である細菌の細胞内には、核がなくDNAが“裸”で存在していて、単純な細胞分裂を繰り返して繁殖します。核の有無だけでなく、細胞の内部の構成や子孫の増やし方も、カビと細菌とではまったく異なっているのです。

カビと細菌の違い その2:大きさ

「バイキン」と一括りにされがちだけど…。「カビ」と「細菌」の違いを解説!

カビと細菌の違い、2つ目は「大きさ」です。カビを見たことがあっても、細菌をじかには見たことは恐らくないでしょう。

カビを構成する「菌糸」「胞子」のサイズは、細菌と同様に大変小さなもので、菌糸の直径および胞子の直径は0.002〜0.01mm程度といわれています。肉眼で見えるのは0.1〜0.2mm程度の大きさまでですから、菌糸の1本1本は肉眼では見えないほどの小ささですが、パンなどの食品に生えたカビは肉眼でも分かるサイズです。

この目に見えるサイズのカビは、盛んに枝分かれしながら成長した菌糸が集合してできる「菌糸体」と呼ばれるもの。ちなみに「胞子」を作る器官が地表に現れたものを「子実体」と呼びます。これが皆さんご存じの「きのこ」です。

「バイキン」と一括りにされがちだけど…。「カビ」と「細菌」の違いを解説!

それでは細菌のサイズはというと、種類によって異なりますが0.01〜0.0002mm程度とされています。カビの菌糸や胞子の直径に比べると、さらに小さなサイズなのです。

カビと細菌の違い その3:誕生した時期

「バイキン」と一括りにされがちだけど…。「カビ」と「細菌」の違いを解説!

カビと細菌との違い、もうひとつは「地球上に誕生した時期」です。約46億年前に地球が誕生した当初は生物がすめる状態ではありませんでしたが、約40億年前、徐々に冷やされた地球に海が現れます。

そして、約38億〜35億年前には、地球最初の生命である細菌が誕生します。約27億年前になるとらん藻類の「シアノバクテリア」が大量に出現し、太陽の光と二酸化炭素を使って光合成を行うようになります。無機物である二酸化炭素と水からブドウ糖などの有機物を、そして酸素を作り出せる微生物が誕生したのです。

酸素を作る微生物が爆発的に増殖して地球全体に広がり、徐々に大気中の酸素濃度が高まったことで、酸素を利用して呼吸する微生物も誕生していきます。その後、微生物は長い年月をかけて多様な進化を続け、やがて約18億年前に核を持った生物が生まれ、約12億年前にはカビなどの多細胞生物が誕生したといわれています。

約38億〜35億年の歴史を持つ細菌と、約12億年の歴史を持つカビ。生物としては細菌の方が“先輩”にあたり、またカビは細菌よりも進化の進んだ高等な微生物なのです。

カビの除去に特化した「カビ専用」の洗剤があったり、細菌は生き残れない環境でもカビが生息できたりする理由の1つには、同じ「バイキン」ではあっても、カビと細菌とにある生物として数々の違いがあったのです。

【参考文献】
「はじめに」「1.カビとは」(文部科学省WEBサイト「カビ対策マニュアル」)
「カビQ&A」(東京都福祉保健局 WEBサイト)
「真菌の細胞構造」(千葉大学真菌医学研究センター「目で見る真菌症シリーズ 2」)
細野明義「Ⅰ.乳酸菌とビフィズス菌の一般特性」(『乳酸菌ニュース』No.492 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会・発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会 2016年)

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