腸内細菌が「感染症」を引き起こすことがあるって本当?

人間の腸内には数百種類、約100兆個の細菌がすみついていると言われています。それらの菌は人にとって良い働きをする有用菌だけではなく、腸内腐敗を起こす有害菌もすんでいます。気温が高くなるこれからの季節、菌に汚染された飲食物を食べたりすると、そうした有害菌が腸内で増殖して感染症になる場合があります。中でも特に気をつけるべき代表的な3つの感染症の特徴と、その予防対策について調べてみました。

感染力が非常に強い、病原性大腸菌による「O-157感染症」

腸内細菌が「感染症」を引き起こすことがあるって本当?

そもそも腸内細菌は、そのほとんどに害がありません。しかし、下痢や嘔吐、腹痛などの原因となる「病原性大腸菌」と呼ばれる大腸菌がいます。その代表的なものが「腸管出血性大腸菌O157」というもので、一般には「O-157(オー・イチ・ゴー・ナナ)」と呼ばれています。

「O-157」の発生源は牛や豚などの家畜の大腸で、主に家畜糞便から水や食物を介して人に感染し、感染した人から人へと二次感染していきます。感染力は非常に強く、通常の細菌性食中毒は100万個単位の細菌を摂取しないと感染しませんが、「O-157」はわずか100個程度の摂取で発症します。重症化すると脳症を起こしたり、死に至ることもあるため非常に危険な大腸菌として知られています。

日本では1996年に、相次いで「O-157」を原因とする大規模な食中毒が発生し、社会問題となりました。2019年までの過去10年間では、「O-157」による食中毒の件数は年間10~30件、患者数は100~1000人で推移しています。

「O-157」の感染を予防するには、必ず調理前の手洗いをすること。生鮮食品はすぐに冷蔵庫に入れ、食材は中心までよく加熱する。大腸菌が死滅する目安、75℃で1分間の加熱を心がけてください。

夏に発生しやすい食中毒「ウエルシュ菌感染症」

腸内細菌が「感染症」を引き起こすことがあるって本当?

ウエルシュ菌は、大腸の常在菌。健康な人の便からも検出されています。この菌は酸素のないところで増殖し、熱に強い性質があります。

特に食べる日の前日に大量調理され、大きな器で室温のまま放冷されていたものから感染するケースが多いとか。梅雨から夏場にかけて、気温と湿度が高くなる時期はさらに注意が必要です。

ウエルシュ菌感染症は、原因の食品を食べてから6~18時間後には発症し、下痢や腹痛を起こします。多くは軽症に経過し、2日程度で治癒されます。予防対策としては、一度に大量の食品を加熱調理したときは、そのまま常温で長く放置しないこと。そのまま鍋の中に放置せずに、きちんと小分けして冷蔵庫に入れる。そして十分に再加熱してから食べるようにしてください。

手づくり食品から感染する「黄色ブドウ球菌感染症」

腸内細菌が「感染症」を引き起こすことがあるって本当?

黄色ブドウ球菌は、食中毒の原因となるだけでなく、おでき、にきび、水虫等に存在する化膿性疾患の原因となる細菌。人や動物の傷口をはじめ、手指、鼻、のど、耳、皮膚などに広く生息していて、健康な人の約30%が保菌していると言われています。

黄色ブドウ球菌は、手の傷や手荒れの部分に通常より多く存在します。そのためおにぎりやお弁当、サンドイッチ、ケーキなど、素手で扱う「手づくり食品」を介して感染することが多いそうです。

感染後の潜伏時間は30分~6時間(平均約3時間)で、吐き気、嘔吐、腹痛が主症状。下痢をともなうこともありますが、一般に高い熱は出ないとされています。

予防対策としては、手指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れたり調理したりしないこと。手指の洗浄・消毒を十分に行い、食品は10℃以下で保存して菌が増えるのを防ぐ。調理のときはなるべく帽子やマスクを着用するようにしましょう。

これから梅雨が近づくにつれ、食中毒のリスクはますます高まります。手洗いを徹底する。生鮮食品はすぐに冷蔵庫に入れる。生鮮食品は中心まで火を通す。この基本原則をしっかり守って、安心安全な食生活を心がけていきましょう

【参考文献】
「腸管出血性大腸菌感染症」(厚生労働省 関西空港検疫所WEBサイト「疾患別解説」)
「O157」(日本医師会WEBサイト「知って得する病気の知識」)
「腸管出血性大腸菌Q&A」(厚生労働省)
「ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)」「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」(東京都福祉保健局「食品衛生の窓」内「たべもの安全情報館 」)
「ウエルシュ菌食中毒」(公益社団法人日本食品衛生協会「食中毒・食の安全Q&A」内「食中毒菌などの話」)
池田徹也「黄色ブドウ球菌による食中毒」(『しゃりばり』No.293 北海道総合研究調査会 2006年7月)

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