花粉症の季節にヨーグルトが注目されるのはなぜ?「アレルギーとプロバイオティクス」の関係性とは

毎年、春先になると気になる人が増えるのがスギ花粉症。すでに薬を飲んでいたり、花粉を防ぐマスクやメガネを着用したりと花粉症対策を行っている人も少なくないでしょう。スギの写真を見るだけで鼻や目がむずがゆくなってくるという人も…。

近年、腸内環境に関する研究が進められるようになったことで、さまざまな疾患と腸内細菌との関係性が解き明かされつつあります。今回はそれらの研究から、花粉症などのアレルギーとプロバイオティクスや腸内細菌の関係について判明していることを紹介します。

花粉症患者は年々増加傾向に

スギ花粉症の治療法は飲み薬や点眼薬があり、最近ではアレルゲン免疫療法が認可されるなど選択肢は広がっていますが、スギ花粉症の患者数は増えているといわれています。少し古い調査ですが、環境省が2008年に行った調査では人口の26.5%がスギ花粉症の症状を有しています。この割合は、これより10年前である1998年時点と比べて10ポイント増加していたということです。

また、東京都が実施した「花粉症患者実態調査(平成28年度)」によると、都内3区市を対象としたアンケート調査と花粉症検診の結果から推計した「島しょ地区を除く都内」でのスギ花粉症推定有病率は2016年で48.8%。調査基準が異なるため単純に比較はできないものの、過去に行われた1983年〜1987年度の10.0%、1996年度の19.4%、2006年度の28.2%と比べても増加していることが伺えます。調査対象となった「あきる野市」「調布市」「大田区」のいずれでも同様の傾向で、花粉症の患者は都市部に限らず増加していると見られます。

ビフィズス菌と花粉症に関する研究によると…

プロバイオティクスにより効果が高められるとされている健康効果は複数ありますが、「免疫機能調節作用」についても研究が進んでおり、すでにいくつかの研究結果の中には、花粉症軽減効果が見られたというものがあります。

2006年に発表された論文では、中程度のスギ花粉症の症状がある40人を対象に、14週間にわたってビフィズス菌の一種「ビフィズス菌BB536(ロンガム種)」を摂取したグループと、同期間プラセボ(偽薬)を摂取したグループとで比較したたところ、前者のグループには、くしゃみや目のかゆみ、鼻詰まりといった症状の軽減が認められたという報告がありました。

また2008年の論文では、自覚症状への影響だけではなく、アレルギー症状が出ている人のバクテロイデス・フラジリス(アレルギー疾患に関連していると言われている腸内細菌)の変動を抑えるといった報告もなされています。

アレルギーの要因となる「Th1/Th2バランス」とビフィズス菌との関係

先の2006年に報告された論文では、ビフィズス菌BB536を摂取したことにより「Th1細胞」が活性化された一方で、「Th2細胞」の活動が抑えられたことにより「Th1/Th2バランス」が改善されたため花粉症の症状が改善されたと考えられています。

アレルギー反応に関わる細胞に、T細胞の「Th1細胞」と「Th2細胞」があります。「Th1細胞」「Th2細胞」はいずれも免疫の働きを促進する役目があり、「Th1細胞」は細胞みずからが病原体やウイルスなどの異物を攻撃して殺す細胞性免疫を促進します。これに対して「Th2細胞」は抗体を産みだす細胞を活性化させ、抗体によって異物である抗原を攻撃します。この「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスが大切であり、これを「Th1/Th2バランス」といい、「Th2細胞」が活性化しすぎると、アレルギーの原因になるといわれています。

スギ花粉症をはじめとするアレルギーは、「Th2細胞」の免疫反応が過剰になっていることが原因と考えられていて、ビフィズス菌BB536の摂取によりTh1/Th2バランス(「Th1細胞」と「Th2細胞」のはたらきのバランスが)正常に近づいたため、症状の軽減が見られたと推察されています。

プロバイオティクスに期待できる花粉症への効果

上記の研究のほかにも、ビフィズス菌や乳酸菌などの人に有益な菌(プロバイオティクス)を摂取することにより花粉症などのアレルギー症状が軽減されたという研究結果が報告されています。このため、最近ヨーグルトやビフィズス菌が花粉症対策として注目されていると考えられます。

今後研究が進むことによって、プロバイオティクスのなかでも、どの菌がより花粉症の症状改善に期待できるかなどが解明されるかもしれません。

ただ、現時点では治療に代行できるとまでいえる研究報告はされていないため、花粉症の治療は医師による診察や助言を受けて行うことが大切です。また、乳酸菌に限らず食生活の見直しや適度な運動など、健康的な生活を送ることを心がけましょう。

【参考文献】
「花粉症患者実態調査報告書(平成28年度)」(東京都健康安全研究センター 2017年)
『スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)』(日本アレルギー学会 2018年)
『花粉症環境保健マニュアル2019 -2019年12月改訂版-』(環境省 2019年)
辯野義己「プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌の分類と効能」(『モダンメディア』57巻10号 栄研化学 2011年)
「Th1細胞とTh2細胞(Th1 cell and Th2 cell)」「細胞性免疫(cellular immunity)」(腸内細菌学会Webサイト 用語集)
岩淵紀介、清水(肖)金忠「ビフィズス菌による抗アレルギー作用」(『日本乳酸菌学会誌』21巻2号 日本乳酸菌学会 2010年)
加藤豪人「ヒトにおけるプロバイオティクスの有効性と腸内細菌叢との関わり」(『腸内細菌学雑誌』33巻4号 腸内細菌学会 2019年)
Xiao JZ et al.:「Effect of probiotic Bifidobacterium longum BB536 in relieving clinical symptoms and modulating plasma cytokine levels of Japanese cedar pollinosis during the pollen season. A randomized, double-blind, placebo-controlled trail」『 J Investig Allergol Clin Immunol』vol.16 2006年)
Odamaki T, et al. 「Distribution of different species of the bacteroides fragilis group in individuals with Japanese cedar pollinosis」(『Appl Environ Microbiol』 2008年 Vol. 74)
「抗体産生のしくみ」(独立行政法人 科学技術振興機構Webサイト「研究成果」)

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