母乳と粉ミルクとでは赤ちゃんの腸内環境が変わるって本当? その答えと理由を解説!

ママが赤ちゃんに与える母乳には、多くの栄養素はもちろんのこと、赤ちゃんの成長や健康にとって重要な細菌も含まれています。近年、赤ちゃんの腸内フローラに関する研究が盛んに行われるようになり、母乳に含まれる細菌と赤ちゃんの腸内フローラは密接な関係があることが分かりつつあります。

今回は、母乳と赤ちゃんの腸内フローラの関係、また多くのママが気になる「母乳でないと赤ちゃんの体内でビフィズス菌は育たないの?」という疑問への答えと理由を紹介します。

乳児の腸のビフィズス菌は「ママからの贈り物」

粉ミルクでは赤ちゃんの腸内のビフィズス菌は育たないって本当? その答えと理由を解説!

生後間もない赤ちゃんに栄養を届けるには、「母乳」と粉ミルクや液体ミルクなどの「人工乳」の2つの方法があります。母乳のみで育てた乳児と、人工乳または混合乳で育てた乳児では、腸内フローラを構成する細菌に違いがあることが分かっています。具体的には、母乳で育てられた乳児は、腸内フローラ内の乳酸菌やビフィズス菌が多いといわれています。

新生児の腸内環境がどのように形成されるのかに関しては、まだ完全には明らかになっていません。しかし、この分野の研究が盛んになるまでは、胎児の腸内は基本的に無菌であり、赤ちゃんは生まれる際に母親由来や環境由来の菌にさらされることによって腸内フローラが形成され始めると考えられていました。

しかし、近年の研究によってママの羊水や胎児膜、胎盤などに細菌が存在することが明らかになっているため、赤ちゃんは胎児のころからすでに腸内細菌に触れていると考えられています。また、それ以外にも母乳を通してママと同じビフィズス菌を“受け継いでいる”という説もあります。

ビフィズス菌を増やすのは、母乳のオリゴ糖

粉ミルクでは赤ちゃんの腸内のビフィズス菌は育たないって本当? その答えと理由を解説!

それでは、母乳で育てられた乳児は、なぜ乳酸菌やビフィズス菌が多いのでしょうか。それは、赤ちゃんの腸内フローラ内でビフィズス菌を優勢にする要因の一つとして、母乳に含まれる「ヒトミルクオリゴ糖」の存在が挙げられます。

ヒトミルクオリゴ糖の特徴はその成分と複雑な構造です。そもそもオリゴ糖とは、糖質の最小単位である「単糖(加水分解してもそれ以上簡単な糖に分解されないもの)」が複数結合したものをいいます。牛乳に含まれるオリゴ糖はほとんどが乳糖(ラクトース)からなりますが、人間の母乳のオリゴ糖は約20%がラクトース以外の糖からなります。オリゴ糖を構成する糖の種類はさまざまで、3つ以上の単糖が結び付いた複雑な構造を持つ、約130種類のオリゴ糖の混合物をヒトミルクオリゴ糖と呼んでいます。

ヒトミルクオリゴ糖は、初乳の中には1リットルあたり20g、それ以降の母乳には1リットルあたり10g含まれています。母乳を構成する栄養素の中では乳糖・脂質に次いで3番目に多い栄養素です。母乳の中で最も多い乳糖は小腸で消化・吸収されて赤ちゃんのエネルギー源となりますが、ヒトミルクオリゴ糖は小腸で消化されずに大腸まで届けられます。大腸に届けられたヒトミルクオリゴ糖は、ビフィズス菌などの腸内細菌の栄養源として利用されます。このような仕組みにより、母乳を与えられた赤ちゃんはビフィズス菌が多くなると考えられています。

赤ちゃんの腸内フローラは、母乳でも粉ミルクでも育てられる

粉ミルクでは赤ちゃんの腸内のビフィズス菌は育たないって本当? その答えと理由を解説!

これまでの話で、赤ちゃんの腸内フローラの形成の要素となるビフィズス菌の生育に母乳が重要な役割を果たしているということが分かりました。しかし、だからといって「赤ちゃんは母乳で育てないと、腸内環境が正常に育たない」というわけではありません。

まず、人工乳で育てた赤ちゃんの腸内フローラは、そうでない赤ちゃんと比べてより多様性に富んだものとなっています。また、いくつかの腸内細菌に関しては、人工乳で育てた赤ちゃんの方が数が多いということも分かっています。

そして、最近では粉ミルクの改良が進んでいますが、特に腸内細菌の観点からの改良も行われています。それにより、最近の粉ミルクには、オリゴ糖などビフィズス菌を増やすのに役立つ成分が含まれるようになりました。つまり、母乳でなくとも腸内のビフィズス菌を育てることができ、バランスの取れた腸内フローラを形成できるのです。

赤ちゃんの腸内フローラに関しては、kintre!の過去記事「胎児期の腸内環境が将来に影響⁉ 赤ちゃんの腸内フローラと健康の関係性」にも解説していますので、合わせてご覧ください。

【参考文献】
牧野博、松本隆広「乳児腸内フローラの形成機構 生涯の健康状態を左右する重要なイベント」(『科学と生物』Vol. 56, No.4 日本農芸化学会 2018年)
堀米綾子、江原達弥、小田巻俊孝、清水隆司 「母乳中の因子および人工乳の改良がもたらす乳児腸内細菌叢への影響」(『腸内細菌学雑誌』33巻 第1号 腸内細菌学会 2019年)
牧野博「乳児の腸内ビフィズス菌は母親から受け継がれる」(第 22 回腸内細菌学会 受賞講演/『腸内細菌学雑誌』32巻第2号  腸内細菌学会 2018年)
「オリゴ糖」(「e-ヘルスネット」厚生労働省)
「母乳のオリゴ糖からビフィズス菌増殖因子を切り出す酵素のしくみを解明」(物質構造科学研究所プレスリリース 2013年)

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