知れば肥満の予防に役立つかも!「腸内細菌と肥満の関係」

冬が終わり春が訪れ、装いが変わると「おなか周りのぜい肉」や「体重の増加」が露わになってしまう不安にさいなまれてはいないでしょうか? 年末年始の暴飲暴食がクセ付いてしまったり、不規則な食生活が続くと肥満症へと至ってしまうことも…。

その要因の一つとして「腸内フローラ」の乱れが関係すると言われています。腸内細菌や腸内フローラが、肥満とどう結び付くのか? その関係性について正しく知るため、研究論文をもとに調べてみました。

腸内フローラと肥満との関係が注目されるようになったのは約15年前

知れば肥満の予防に役立つかも!「腸内細菌と肥満の関係」

肥満症の原因については、体内のエネルギー代謝に関連する「肥満遺伝子」によるものや、睡眠不足などさまざまありますが、毎日のカロリー摂取量や栄養バランス、食事時間などの「食習慣」が大きな要因だと考えられています。

そして腸内細菌に関する研究が進むと、食事の質や種類は、私たちの「腸内細菌の形成」になによりも影響を与えることも分かってきました。

2006年にアメリカの研究グループが腸内フローラの変化と肥満発症との関連を指摘すると、肥満と腸内細菌との関連についての研究が続々と登場し、現在では腸内フローラのバランスが崩れると肥満をはじめとする代謝系疾患の発症につながる可能性が、少しずつ明らかにされはじめています。

“肥満の原因菌”があるのではなく、腸内フローラの“乱れ”が肥満につながる

知れば肥満の予防に役立つかも!「腸内細菌と肥満の関係」

実験用として人工的な環境で産み育てられた、検出されうるすべての微生物、寄生虫がいない「無菌マウス」は、肥満になりにくいという興味深い研究結果があります。無菌だと肥満になりにくいとは「肥満を誘発する菌がいる」ということなのでしょうか?

まず、人間も無菌になれば肥満を防げるのかといえば、それは無理な話。腸内の細菌は数にして約100兆個、重さにして1.5kg〜2kgほどもあります。体内に細菌がなくては腸管の免疫の発達や働きを維持することもできず、腸の動きが活性化されず栄養吸収や消化さえもままならないのです。

そして、腸内フローラと肥満症との関連を探る研究は多くありますが、その報告を総合すると「肥満の人の腸には特定の菌がいる」のではなく「腸内フローラの多様性が損なわれると、肥満になりやすい」という理解が主流だと考えられています。

つまり腸内から“肥満の原因菌”をなくすのではなく、腸内フローラを適切な状態に保つのが、肥満を防ぐ近道だといえます。

今後さらに研究や技術が進歩すれば、「太ったから運動しよう!」ではなく「太る前に腸の調子を整えるように食事を取ろう」と、腸内環境から肥満症の予防や改善につなげるアプローチが増えていくかもしれません。

大人だけではなく、子どもの肥満対策にも腸内フローラは重要

知れば肥満の予防に役立つかも!「腸内細菌と肥満の関係」

近年では、大人だけでなく子どもにも、食生活や運動不足など生活環境による肥満や生活習慣病が増加しています。子どものころから、腸内環境を整えることは、こうした対策として効果があるのでしょうか?

前述のように、大人を対象とした肥満と腸内細菌との関係に関する研究は進んでいる一方、小児の領域では、腸内フローラの改善による肥満対策に効果があるかどうか、明確な結論はまだ出ていないのが現状です。しかし、肥満抑制に役立つ可能性を示唆する研究も発表されています。

食事および運動療法と乳酸菌飲料の飲用による変化を調べた研究では、肥満の子どもに対して最初の6ヵ月は「食事・運動療法」のみを、後半の6ヵ月は「食事・運動療法」に加えて「乳酸菌の一種(カゼイ菌)を含む乳酸菌飲料を1日1本飲む」ことを行ってもらい、腸内フローラの変化とともに体重や血中脂質値の変化を追ったところ、乳酸菌飲料を飲まなかった時期と比較して、乳酸菌飲料で乳酸菌を取り入れた期間において、次のようなデータが得られたといいます。

飲用6ヵ月後に、有意な体重減少、血清HDLコレステロール値の有意な上昇が認められました。また、乳酸菌飲料飲用後の腸内細菌叢は、飲用3ヵ月後にビフィズス菌の有意な増加が上昇されました。

永田智「子どもの肥満・生活習慣病と腸内細菌」
(『乳酸菌ニュース』vol.497 全国発酵乳乳酸菌飲料協会 2017年)

ただし、飲んだ乳酸菌が直接影響したのではなく、カゼイ菌が腸内のビフィズス菌を増殖させ、その代謝で生まれる酢酸などの生産が促進されることで、脂質の代謝に好影響があったものとみられ、今後の研究によってその詳細が明らかになることが期待されます。

大人と違い、子どもの腸はまだ未熟で、腸内環境を整えておくことはとても大切です。日々の食生活に乳酸菌や食物繊維などを積極的に摂り入れて、親子でバランスの良い食事を心がけたいですね。

【参考文献】
「腸内細菌叢と肥満の関係について教えて下さい。」「ノトバイオート動物(gnotobiotic animal)・無菌動物(germ-free animal)」(公益財団法人 腸内細菌学会)
入江潤一郎、伊藤裕「腸内細菌叢と肥満症」(『日本内科学会雑誌』第104巻第4号 日本内科学会 2015年)
永田智「子どもの肥満・生活習慣病と腸内細菌」(『乳酸菌ニュース』vol.497 全国発酵乳乳酸菌飲料協会 2017年)

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