胎児期の腸内環境が将来に影響!? 赤ちゃんの腸内フローラと健康の関係性

2020.02.04

健康維持に重要な役割を担うとして近年注目され、研究が進められている「腸内フローラ」。その研究によって、以前は無菌だと考えられていた生後間もない赤ちゃんの腸の中にも多様な細菌があり、赤ちゃんの健康や生命維持に、さらには成長後の健康にも重要な役割を果たしていることが解明されつつあります。

今回は赤ちゃんの腸内フローラやその影響、そして健康に与える影響について、現在分かっているいくつかの事実を紹介します。

赤ちゃんの腸内は「無菌」ではない

長い間、ママのおなかの中にいる胎児の腸内は無菌であり、したがって赤ちゃんが生まれて初めて排せつする「胎便」も無菌であると考えられていました。しかし近年の研究ではガセリ菌などの細菌が、母体つまりママから受け継がれているということが分かりました。

誕生後の赤ちゃんの体内では、ママから受け継いだ菌を元に生後2〜3日で大腸菌や連鎖球菌が出現し、生後1週間頃にはビフィズス菌が腸内細菌の90%を占めるようになります。その後、1〜2歳頃にビフィズス菌の減少が始まり、3歳頃には腸内環境が安定して成人の腸内環境と同じような状態になります。

ビフィズス菌は糖から乳酸を作り出す「乳酸菌」の一種であり、主に人間や動物の腸内に存在します。整腸作用だけではなく、病原菌の感染や不廃物の生成する菌の増殖を抑制する働きがあると考えられており、腸内の健康のみならず全身の健康に大きな影響があるとの見方がされているものです。

母乳を通じて、ビフィズス菌は赤ちゃんの腸へ

赤ちゃんの腸内環境を形成する要因に関しても、いくつかの報告がなされています。例えば、母乳のみで育てた赤ちゃんは乳酸菌やビフィズス菌が多いということが分かっています。また、母乳を介してママから赤ちゃんへさまざまな種類のビフィズス菌の株が受け継がれているということも判明しました。

しかし、これは「母乳で育てないと、赤ちゃんの腸内環境がよくならない」というわけではありません。インドで行われた研究では、生後2週間以内の赤ちゃんにフラクトオリゴ糖と乳酸菌を投与したところ、そうでない赤ちゃんと比べて敗血症に感染する割合や死亡割合が大幅に減少したという結果になりました。また、母乳のみで育てられた赤ちゃんはビフィズス菌が多い一方、人工乳で育った赤ちゃんは完全母乳の赤ちゃんに比べて多様性に富んだ腸内フローラを持っているという研究結果も報告されています。

いずれにせよ、赤ちゃんの感染症防止や生命維持には、受け継いだ腸内細菌が重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられます。腸内細菌の数が少なくなり、腸内フローラの多様性が損なわれた状態は、腸管のバリア機能が低下し、さまざまな疾患の原因になるとされています。

乳児期の健康だけでなく、成人後の健康にも関係する

赤ちゃんの頃の腸内環境は、乳児期の健康だけでなく成人後の健康にも関係するということが分かりつつあります。

2008年に発表された海外の研究論文によると、7歳時に正常体重の子ども24人とと肥満の子ども25人の、生後6ヵ月時、12ヵ月時の便中のビフィズス菌の数を比較したところ、肥満の子どもは正常体重の子どもと比べてとビフィズス菌の数が少ないことから、肥満と腸内環境には密接な関係があると指摘されています。

ビフィズス菌をはじめとする腸内環境の正常化に大きな役割を果たす菌は、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームといった代謝に関する症状、また免疫に関係した症状との関連もあるとされているなど、乳幼児期の腸内フローラのバランスを整えることは、乳幼児期だけでなく、成長後の健康にも大きな関係があるということが分かりつつあります。

しかし、そのために食事などで乳酸菌やオリゴ糖などを摂取することに関しては、効果があるとするものから効果がないとされるものまでさまざまな報告があり、現時点では確定的なことはまだ分かっていません。

腸内フローラに関すること限らず、健康情報に関しては常に信頼できる最新の情報にあたることが大切です。また、さまざまな情報に振り回されず、普段から健康的な生活を送ることを心がけることも忘れないようにしましょう。

【参考文献】
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「ビフィズス菌」(e-ヘルスネット)
牧野博、久保田博之、石川英司、酒井隆史、松田一乗、秋山拓哉、大石憲司、久代明「新生児・乳児期の腸内環境叢とその形成因子」(『腸内細菌学雑誌』公益財団法人 腸内細菌学会 2019年)
宮本潤基、鈴木卓弥、木村郁夫、田辺創一「腸内細菌脂質代謝産物に見いだされた 腸管バリア保護機能 腸内環境から健康増進」(『化学と生物』Vol. 55, No. 4 日本農芸化学会 2017年)
牧野博、松木隆広「乳児腸内フローラの形成機構 生涯の健康状態を左右する重要なイベント」(『化学と生物』Vol.56,No.4 日本農芸化学会 2018年)
伊藤喜久治「腸内フローラと健康 ―乳幼児期のフローラの重要性―」 (『乳酸菌ニュース』2019 夏季号 NO.505 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会・発酵乳乳酸菌飲料公正取引委員会)

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