上田玲子先生が回答!ママのお悩み「離乳食との上手な付き合い方」篇

2019.09.09

生後5〜6ヵ月ごろから始まる「離乳食」。母乳やミルクとのバランス、作り方や食べさせるタイミング、ベビーフードの使い方など、さまざまなことを一度に考えながら、食材や調理も行う必要があり、お悩みを抱えるママが増えるタイミングです。

森下仁丹株式会社とNPO法人日本トイレ研究所は港区と協力し、区内の0歳児の保護者を対象に、専門家の講演をお届けする参加費無料のミニフォーラムを「港区立芝浦アイランド・児童高齢者交流プラザ」にて開催しました。

このミニフォーラムは、子育て中の保護者に役立つ情報提供を目的として実施する「親子の健康サポートプロジェクト」の一環として行われ、今回は、子どもの栄養の“スペシャリスト“上田玲子先生による講演と、参加者からの質問に上田先生がお答えくださった内容を、coco-bana読者の皆様にもお伝えします。

上田玲子先生が回答!ママのお悩み「離乳食との上手な付き合い方」篇

5秒以上座れたら「離乳食スタート」の目安

厚生労働省の『授乳・離乳の支援ガイド』が、今年、12年ぶりに改訂されまして、新しい研究や情報を踏まえた内容になりました。そのなかで「離乳食のスタート目安」として新しく加わったのが「5秒以上座れること」です。5秒以降は支えて座れれば、もう離乳食を始めていいんです。月齢では5〜6ヵ月ですね。

信頼できる大人と一緒の場で食べることが、子どもの安心につながる

5ヵ月ぐらいになって、5秒座れるようになったら離乳食のスタートです。初めはママが食具(スプーンや食器)で与え、そのうち手づかみで食べられるようになります。この「手づかみ食べ」がすごく大事だと、今はいわれていますね。

手で食べるのにはちゃんと理由があって、ものの硬さ、軟らかさ、温かさ、冷たさ、すべてを確認して、口にしても安全かどうかを認知してるわけです。赤ちゃんも本能で「もし毒だったら危ない・怖い」と思うのです。その食べ物を、ママやパパのような信頼できる大人たちが食べていると、それを見て「大丈夫だ」と思って食べるんです。だから、一緒に食べることがすごく大事なのです。

また「これが好きかな? これが嫌いかな?」と、子どものことを思いながら一緒に食べるなかで、お互いに意思疎通ができます。離乳食の時間は、子どもを理解する大事な役割があるのです。教科書どおりじゃなくても全然いいですから、子どもの様子を見ながら進めてあげていただきたいなと思います。

奥歯の乳歯が生えそろうのは
離乳食スタートから約2年後!

離乳食が進み、1歳になるとかなり自由自在に食べるようになりますが、まだ乳歯は前歯の上4本、下4本がやっと生えたところで、奥歯はまだない状態です。2歳ぐらいのお子さんが「生の野菜を食べない」と本気で心配して、相談にいらっしゃるママがよくいます。そういうときは「子どもの口のなかを見てください」といっています。見ると奥歯はまだないんですよ。奥歯がなかったら、臼のようにすりつぶせないですよね。レタスとか生のキャベツなどはまったく無理で、トマトの皮でも食べづらいでしょう。

あまり食べないときは、好き嫌いの問題だと早合点せず、口のなかを観察してあげてください。乳歯の奥歯が上下が生えそろうのは、2歳半から3歳ぐらい。つまり離乳食が始まってから2年くらいは掛かりますので、思ったよりも遅いのです。

なぜ貧血対策が重要なのか?

上田玲子先生が回答!ママのお悩み「離乳食との上手な付き合い方」篇

新しい支援ガイドになって強調されているのは、「鉄欠乏性貧血」のお子さんが見られることです。ガイドではこう書かかれています。

母乳育児の場合、生後6か月の時点で、ヘモグロビン濃度が低く、鉄欠乏を生じやすいとの報告がある。また、ビタミンD欠乏の指摘もあることから、母乳育児を行っている場合は、適切な時期に離乳を開始し、鉄やビタミンDの供給源となる食品を積極的に摂取するなど、進行を踏まえてそれらの食品を意識的に取り入れることが重要である。

『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)』P32より

なぜ貧血が心配かというと、2歳以下のお子さんが、貧血の状態が3ヵ月以上続いていると、発育・発達が遅れるのです。具体的には寝がえりやつかまり立ち、「パパ」「ママ」「ブーブー」といった発語、「おつむてんてん」とか手をにぎにぎするといった動作や行動です。ちょっとした動作で、時期にも個人差があるので見逃してしまうことが多いですね。

それを見逃したまま3ヵ月、つまり貧血状態が6ヵ月続くと「風邪をひきやすい」とか「高熱がよく出る」という症状が現れ、病院で受診して貧血だと分かるわけです。病院で発見されると、鉄のサプリメントと、ビタミンCと鉄分の多い食事を与えて貧血の治療をします。1ヵ月もすれば、血液の貧血状態は正常に戻るのですが、発育の遅れは取り戻せないのです。

貧血状態が3ヵ月以内で発見できれば遅れを取り戻せるのですが、6ヵ月以上となると取り戻せません。近年の調査によればさまざまな遅れのうち行動障害は成人期まで取り戻せないといわれます (小児科臨床72:193.2019) 。

2歳未満で貧血にならないようにするために、離乳食から鉄分などの栄養素を摂る必要があるのです。ですから、5〜6ヵ月になったら離乳食は開始していただきたいと思います。

卵・ピーナツのアレルギー対策は
「早い時期に食べさせる」こと

以前は、離乳食をあまり早く始めるとアレルギーになるんじゃないか、といわれていたのですが、最近の研究では早く与えれば与えるほどアレルギーになりにくいことが、いくつかの食品では証明されてきました。古い離乳食の本だと、卵は7ヵ月以降といわれていたのが今は否定されて、離乳食が始まる5〜6ヵ月のときにもうあげてください。

ただ、すべて早く与えていい、ということではありません。早い時期に食べさせるとアレルギーになりくにいというエビデンスがあるのは卵黄とピーナツです。他の食品はまだエビデンスが出てないので、従来どおりのタイミングで与えてください。

さまざまな「離乳食」のお悩みに
上田先生の回答は?

上田玲子先生が回答!ママのお悩み「離乳食との上手な付き合い方」篇

Q:もうすぐ5ヵ月で、おかゆから離乳食を始めようと思っています。ただ、わが家は玄米しか使っていないのですが、おかゆは白米から作ったほうがいいのでしょうか。

上田先生:離乳食はまず消化のよいものから与え始めます。玄米は食物繊維が多く赤ちゃんには消化しにくいので、離乳食の最初に与えるとつらいでしょう。裏ごしするか、フードプロセッサーがあれば粉砕したほうがよいでしょう。それも白米のおかゆから始めて、だんだん白米に慣れてきた9ヵ月以降に玄米がゆとして与えてもよいでしょう。ただし玄米だけですと厳しいかもしれないので、白米と玄米を7:3くらいの割合で始めて、だんだん玄米を増やしていくのがいいかもしれませんね。様子を見ながら進めていってください。

Q:おかゆを食べさせていますが、全部は食べなかったりするときには、残りは捨てたほうがいいのか、また冷蔵して次のご飯として使ってもいいのでしょうか。

上田先生:おかゆに唾液が入ると、唾液に含まれる酵素でデンプンの消化が進んでしまうので、次の食事に回すのはやめたほうがいいですね。唾液が入っていないものは、もう一度電子レンジなどで加熱した後に冷凍するなら、次の食事で使っても問題ないでしょう。ただし、長時間室温に放置したものは廃棄が原則です。

Q:鉄分補給に、鉄鍋で調理したり「鉄玉子」などを使いたいのですが、味は変わらないのでしょうか?

上田先生:味見していただくといいんですけど、ほとんど変わらないですね。もし味が気になる場合は、できるだけ鉄分の多い食品を取り入れれば、鉄製の調理器具にこだわらなくてもかまいません。3回食の時期になったら、食品からだけで鉄分は十分摂れます。例えば、赤身魚のなかでもカツオの血合いは非常に鉄分が多くて吸収もいいので、そぼろにしておかゆに混ぜてもいいでしょう。

Q:もうすぐ8ヵ月の赤ちゃんで、離乳食も食べていますがあまり食が進まず、1回20グラムぐらいしか食べられません。どうしたらいいでしょうか?

上田先生:母子手帳にある成長曲線を見ていただいて、赤ちゃんの体重と身長が「成長曲線カーブの範囲に収まっているか」と「体重が増えているか」をチェックしてください。カーブの範囲の一番下のほうでも、カーブに沿って体重が増えていれば、まずは安心です。

ところが、ある時点から増えなくなることがあるんですね。これはありえないんです。なぜかというと、私たち大人は体が完成しているから増えないことはありますが、子どもは脳が大きくなる、肺も大きくなる、心臓も大きくなる時期だから、体重はずっと増えていかなければなりません。それにもかかわらず体重が増えないときは、栄養が足りないのか、または隠れた病気があるというサインなので、専門医に相談してください。

体重が減っていくケースはすごく危険です。1日や2日ならいいのですが、1ヵ月の周期で体重が減っていくようなことがあったら、すぐ専門医に相談しましょう。

体重が増えているのであれば、母乳やミルクを飲む量が多くて、子どもがあまり食べないというケースもあります。その場合は、離乳食の硬さを見直したり、母乳か粉ミルクを少し離乳食に混ぜて味に慣らしたりするといいでしょう。少しずつ混ぜるミルクの量を減らしていけば、食品の味にも慣れて食べてくれると思います。


上田先生から、ママへのメッセージ

上田玲子先生が回答!ママのお悩み「離乳食との上手な付き合い方」篇

講演後の質疑応答の時間には、参加したママからさまざまな悩みが寄せられました。上田先生は講演のなかで、ママたちの悩みに寄り添うように、次のように語りました。

初めは5秒座れるかどうかだった赤ちゃんが、ハイハイができるようになって、1歳半ごろにはひとり歩きもできるようになって…と変化、つまり成長していきます。小さい時期ほど変化が激しいですよね。生まれたときと生後1ヵ月では全然違います。その変化に合わせていろいろなことしていかなきゃならないのが育児で、離乳食も1ヵ月くらいで変化させなければなりません。そこが難しいですよね。

離乳食の時期は、ただでさえ大きなママの負担が増し、お悩みも増えてしまいがちです。上田先生の解説を参考にしていただき、悩みをためないように、離乳食と上手に付き合っていきましょう!

取材協力

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上田玲子先生

帝京科学大学教育人間科学部幼児保育学科教授・学科長。小児栄養学、小児保健学が専門。乳幼児の食生活や食行動、栄養に関する多くの著書を執筆。『はじめての離乳食』(主婦の友社)ほか。

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