星野恭子先生に聞く!赤ちゃんの眠りの専門家が教える「理想的な睡眠」とは(後篇)

2019.08.28

小児神経科医の星野恭子先生に、「赤ちゃんにとっての睡眠」そして「睡眠が赤ちゃんの成長に与える影響」について伺ったお話を前後篇にわたってお届けします。後篇では、睡眠サイクルの作り方と、睡眠不足が及ぼすさまざまな健康への影響について伺いました。

睡眠サイクルと
赤ちゃんの成長の密接な関係

──赤ちゃんはどのように睡眠サイクルを作っていくか、詳しく教えてください。

星野:生まれたばかりの赤ちゃんは、だいたい3時間ごとに「眠る」「起きる」を繰り返します。このときは睡眠だけでなく、体温やホルモン、心拍、呼吸に至るまで大人のようなリズムがない状態です。昼夜のある生活を過ごすうちに、生後3〜4ヵ月ごろにはおおまかな「二相性睡眠」になっていきます。

赤ちゃんの睡眠時間の目安は10〜13時間程度ですが、お父さん・お母さんが早寝早起きに気をつけて管理をしないと睡眠サイクルが作られず、昼夜の区別がつかなくなります。そして昼行性として成長すべき自律神経系が形成されないと、脳や身体の発育への悪影響を引き起こします。後から挽回もできますが、子どもの体はどんどん成長して変わっていきますから、早い段階から睡眠サイクルを整えることは非常に重要です。

保護者の方が赤ちゃんの睡眠不足を心配しますが、赤ちゃんは眠くなったら自然と眠るので、大人の不適切な環境にさらされなければ睡眠不足になることはあまりないでしょう。よく眠っていると親が感じられれば、神経質にならなくていいと思います。

私たちは体内時計を作る「時計遺伝子」を持っているのですが、そのなかには光によって駆動する遺伝子があります。赤ちゃんも網膜から光が入ることで、時計遺伝子のメカニズムが動き、自律神経系や交感神経系、体温やホルモン、心拍、呼吸、これらのリズム、つまり体内時計が作られていきます。ですから「昼間に起きて夜に眠る」というリズムを作るためには、太陽の光を浴びることが大切なのです。

──夜にしっかり眠るために、朝はきちんと起きて活動することが大切ですね。

星野:そうですね。朝は太陽の光を浴び、そしてきちんと朝食をとることも重要です。昼間は外で遊んで、その結果、夜には疲れてスムーズに眠れるようになります。規則正しい早寝早起きのリズムがある生活は、脳内でのセロトニン合成を活発にしますが、セロトニンが不足すると脳の機能低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなります。朝起きたら、太陽の光を浴びるよう心がけましょう。日中の活動以外に気をつけるべきなのは、食事の時間です。できれば、夕食から2〜3時間後に眠るようにしてください。赤ちゃんは夜にあまり食べすぎないほうがいいですね。栄養面で補足すると、基本的な炭水化物・脂質・タンパク質の三大栄養素はもちろんですが、神経学の観点からいうと、脳の発達には鉄分も神経の働きを助けるので必要です。ほうれん草やレバーなどからきちんと鉄分を摂るよう心がけたいですね。

睡眠は排便にも影響!
生後3ヵ月には
昼夜の区別がつくリズムを

──睡眠は、赤ちゃんの排便にはどのような影響がありますか?

星野:腸はいわば”自律神経そのもの”で、密接な関係があってお互いに影響しあっています。正しい睡眠サイクルが作れず自律神経が乱れれば、排便にも問題が生じてきます。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つに大別され、この2つがバランスよく働くことで調和が保たれます。腸のぜん動運動を支配しているのは副交感神経ですが、寝不足が続き、交感神経の活動が優位になった状態、つまり緊張したままだと、腸の動きが鈍くなり便秘を引き起こします。

通常の睡眠リズムでは、明け方になるに連れてレム睡眠が頻回になり、長くなります。その理由は、レム睡眠のときは自律神経系が活発になり、それによって汗をかいたり、唾液が出たり、おなかが動いたりして、朝に体が起きる準備をしています。起床して朝食をとると、便が出るのはそのためです。

もし、睡眠リズムが不規則で起床前のレム睡眠が足りないと、体が起きる準備ができていないままだから、起こされても頭がぼーっとしたままで、朝食をとる気もおきません。朝から忙しくて余裕がない家庭では、赤ちゃんでさえ朝にうんちが出なくなってしまいます。腸内環境を整えるためにも、睡眠リズムはとても大事なのです。

──家族の生活リズムも大きく影響してきますね。

星野:最近では共働きの夫婦も多く、睡眠への正しい理解がないままお父さん・お母さんそろって夜更かしの習慣があり、一方で「赤ちゃんは夜眠るものだから」と思い込んで、正しい睡眠環境を作らず「うちの子は眠らない、どうしよう」と、睡眠の管理がきちんとできずに悩んでしまう方が多いように感じます。

繰り返しになりますが、乳児期に正しい睡眠リズムが身につかないと、子どもの成長に大きく影響します。まだ昼夜の区別がついていない生後すぐ、赤ちゃんと一緒に、家族みんなで早寝早起きの習慣作りを始めましょう。そして生後3ヵ月には、昼夜の区別がしっかりついて、夜に長く眠れるようにしましょう。

まとめ

  1. 朝起きたら太陽の光を浴び、朝ごはんをしっかり食べ、早寝早起きのリズムある生活を心がけましょう。
  2. 睡眠不足は便秘の原因にもなります。夜しっかり眠って、副交感神経を優位にし、腸のぜん動運動を活発にさせましょう。
  3. 早寝早起きは、家族みんなでの協力が大切です。生後3ヵ月には昼夜の区別がつくようにしましょう。

取材協力

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星野恭子先生

瀬川記念小児神経学クリニック理事長。医学博士。専門外来は神経学全般。子どもの「眠らない」「眠れない」状況に危機感を抱き、子どもたちの生活リズムや心身の発達について全国にて啓発活動を行う「子どもの早起きをすすめる会」の発起人。

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