星野恭子先生に聞く!赤ちゃんの眠りの専門家が教える「理想的な睡眠」とは(前篇)

2019.08.27

生後間もない赤ちゃんは、昼も夜も眠っていることが多いものです。しかし、成長過程のなかで「夜になっても眠らずに遊んでる」「夜に泣いてしまうので、つい添い乳をしてしまう」などといった睡眠に関するお悩みも増えてきます。赤ちゃんのお世話に追われ睡眠不足に悩むお母さんも少なくないでしょう。

今回は小児神経科医の星野恭子先生に、「赤ちゃんにとっての睡眠」そして「睡眠が赤ちゃんの成長に与える影響」についてお話いただきました。その内容を前後篇にわたってお届けします。寝る子は育つといいますが、赤ちゃんにとっての理想的な睡眠とは、どのようなものなのでしょうか?

赤ちゃんの睡眠は、健やかな成長のための
「生活リズム」の基礎作り

──赤ちゃんの理想的な睡眠環境とはどのようなものでしょうか?

星野:まず、眠る環境を大人と分けることが大切です。そして、赤ちゃんはよく汗をかくので薄い掛け布団にして、室温は暑すぎず寒すぎず、適温で安定していればOKです。テレビなどは消してうるさくないようにして、電気も落として必ず暗くしましょう。

「良い睡眠」とは、お母さんが「よく眠っているね」と感じられることが大切です。そのうえで、睡眠時間の長さとその時間帯はとても大事です。

睡眠の合計時間が足りていればいつ眠ってもいいというわけではなく、生後3ヵ月には昼夜の区別がつき、夜にぐっすり眠るようになっていることが理想です。このころは、まだこまめに授乳が必要な時期ですから、もちろん夜間に授乳しても構いません。でも、赤ちゃんの活動時間が昼夜逆転してしまって、朝を迎えてから午前中にかけてずっと眠っていたり、夜になっても騒いで眠らない場合は、生活リズムを改善していく必要があります。

──睡眠不足が赤ちゃんの成長に与える影響には、どのようなものがあるでしょうか?

星野:子どもに限らず大人にとっても、睡眠は脳の活動に非常に重要です。特に赤ちゃんは、呼吸や神経などを司る「脳幹」という、生命活動の基盤となる部分が育つ時期。脳幹は、早寝早起きや昼間の活動によって発達していきます。

ですから、この時期に睡眠不足になると脳そのものの形成・発達に関わります。コミュニケーションがうまくいかない、注意力がない、集中力がない……といった症状が現れてしまうのです。

──睡眠不足が脳の発達にも影響してしまうのは、なぜでしょうか?

星野:睡眠には脳が活動している「レム睡眠」と脳の活動がゆっくりになっている「ノンレム睡眠」があり、どちらも、子どもの成長にはとても大事です。生まれたばかりは、レム睡眠が多く、昼間の活動によりノンレム睡眠が増え、レム睡眠の比率が減っていきます。

ところが、脳の発達に大切なレム睡眠もノンレム睡眠も不十分で、そのリズムがうまく整わないと、心や身体の発達の問題や、自閉症のリスクになるという研究もあります。

人間は昼行性ですから、朝の光を浴びて、昼間動いて夜眠らないと体のリズムができません。すると、自律神経系や交感神経系、つまり体温やホルモン、心拍、呼吸など、身体のリズムがうまく形成できなくなる可能性があります。

朝から活動して、夜は自然と寝てしまう
生活リズム作りを

──「お昼寝」とは、どのように付き合っていけば良いのでしょうか?

星野:お昼寝の回数は、成長するにつれて自然と少なくなっていきます。生後6ヵ月頃に1日3回だったお昼寝がだんだん1日2回になり、1歳頃には1日1回になっていくでしょう。

ただ、お昼寝の時間は午前中ではなく、午後になるよう気をつけてください。午前中は、テレビを見たりゲームをしたりして室内で過ごすのではなく、できるだけ外に出て身体を動かすようにしてください。テレビを見るのは午後からにしましょう。夜の睡眠は、昼間の活動の「結果」なのです。昼間に活動していれば、夜は自然と眠くなるはずです。

──夜になっても眠らず、夜泣きが続く場合、どのような原因が考えられるのでしょうか?

星野:もし、外で遊んだり、保育園に行くような年齢になっても夜泣きが続くのであれば、環境の変化や赤ちゃん自身の発達が関係していると考えられます。その場合も、時期がくれば夜泣きは自然と収まるはずです。

こうした理由が考えられない場合は、夜間の授乳、いわゆる「添い乳」に原因があるかもしれません。通常、生まれてすぐの夜間の授乳は3~4回から少しずつ回数が減っていき、1歳頃には1回程度になり、その後はなくなっていきます。授乳の必要がなくなっても夜泣きがひどいとき、一番いい対処法は「手出しをしないこと」なのです。

赤ちゃんが泣くと「泣かせちゃいけない」と夜間に授乳を繰り返してしまうお母さんも多いと思いますが、レム睡眠とノンレム睡眠とのサイクルが途中でリセットされて、睡眠リズムの形成を阻害してしまいます。その結果、夜泣きがクセになり、お母さんたちはますます追い詰められてしまうのです。これは、日本の育児が抱える大きな問題のひとつだと感じています。

基本的に夜泣きの原因は、おむつが濡れていたり、暑い・寒いなどを訴える自然なもので、深刻なケースはほとんどありません。「どうして夜泣きが治らないのだろう」と思いつめずに、子どもの健康に問題がなければ勇気をもって放っておき、そして昼間にたくさん遊ばせて、睡眠サイクルを作っていくようにしましょう。

まとめ

  1. 大人と睡眠環境を分けることが、赤ちゃんにとっての理想の睡眠環境
    • 薄手の掛け布団に、室温を適温に保つ
    • テレビや電気を消して、静かな環境に
    • 良い睡眠とは「よく眠っている」と親が感じられること
  2. 睡眠は、赤ちゃんの脳の形成・発達を促す重要な時間
    • 睡眠不足は脳幹の成長を妨げ、脳の発達にも影響を及ぼす可能性がある
    • レム睡眠(浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い睡眠)のリズム作りが重要
  3. お昼寝は、成長と共に1日1回に減らしていく
    • 午前中は家で過ごさず、積極的に外へ出て遊ぶ
    • 昼寝は午前中ではなく、午後に1回
    • 昼間に思いっきり遊び、夜に疲れて眠る生活が理想
  4. 夜泣きは、自然となくなっていくもの
    • 夜泣きの対処は、放っておくこと。思いつめないことが大切

取材協力

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星野恭子先生

瀬川記念小児神経学クリニック理事長。医学博士。専門外来は神経学全般。子どもの「眠らない」「眠れない」状況に危機感を抱き、子どもたちの生活リズムや心身の発達について全国にて啓発活動を行う「子どもの早起きをすすめる会」の発起人。

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