中野美和子先生に聞く!子どもの便秘のスペシャリストが語る「赤ちゃんの便秘のおはなし」

2019.07.03

離乳食期前後の赤ちゃんを持つ多くのママ・パパが「赤ちゃんの便秘」について悩みを抱えていることに、coco-banaは注目!

森下仁丹株式会社とNPO法人日本トイレ研究所は港区と協力し、離乳食期前後の赤ちゃんを育てている保護者を対象に、「排便やうんちに関する正しい知識」をお届けする参加費無料のミニフォーラムを「港区立芝浦アイランド・児童高齢者交流プラザ」と「みなと保健所・子ども家庭支援センター」にて開催しました。

このミニフォーラムは、森下仁丹株式会社とNPO法人日本トイレ研究所が、子育て中の保護者に役立つ情報提供を目的として実施する「親子の健康サポートプロジェクト」の一環として行われました。子どもの便秘治療の“スペシャリスト“・さいたま市立病院小児外科の中野美和子先生による講演「赤ちゃんの便秘のおはなし」と、参加者からの質問に中野先生がお答えくださった内容を、coco-bana読者の皆様にもお伝えします。

うんちが出ても“スッキリ“しなければ
それは「便秘」

「便秘の定義」を知っていますか? それは「便が滞った、または便が出にくい状態」です。乱暴ではありますがひと言でいうと「快便ではない状態」です。つまり、排便があっても「スッキリ」したという感覚がない場合は「便秘」です。1歳以上の場合、正常なうんちの回数は週に3回以上とされていますが、これは大人も同じです。週3回ですから、毎日、または1日おきの頻度であれば、正常といえます。でも「スッキリ」したという感覚がなければ、「便秘」といえます。また「下痢」状の便でも、便が溜まっていれば「便秘」です。

意志では排便をコントロールできない

排便に直結する腸の動きのほとんどは、自律神経が担っています。うんちを出そうといきむときは横隔膜や筋肉を少し使ってはいますが、実はそれらの力を借りなくとも、本来は筋肉が自然に緩んでうんちが出ます。赤ちゃんでも大人でも、自分で調節できるのはいきむことと、トイレに駆け込むまでの間、漏れないよう括約筋を締めることくらいなのです。

つまり排便は自律神経が担っていますから、自律神経が良好に動くような生活習慣が、便秘を予防するうえで一番大切です。食事・排泄・睡眠が“通常“の生活パターンになっていれば、自律神経も整いうまく働きます。

赤ちゃんの便秘と、大人の便秘との違いとは?

赤ちゃんと大人では、実はうんちが滞ってしまう場所が違います。赤ちゃん、特に離乳食開始以降の赤ちゃんの便秘の多くは、肛門のすぐそばの「直腸」にたまります。大人の場合、もちろんいろいろなタイプがありますが、多いのは直腸の手前にある「S状結腸」にたまり、直腸はからっぽになっているタイプの便秘が多いですね。

直腸に常にうんちがたまっていると、直腸が広がって伸びてしまい、そのため直腸の動きが鈍くなり、さらにうんちが出にくくなる悪循環が起きてしまいます。

国際的な便秘の診断基準であるローマ基準(ROMEⅢ)では、4歳未満の機能性便秘の診断基準は、以下の6項目のうち2項目以上が1ヵ月間以上続いている(乳児の場合は、1または4に加えて、いずれか1項目)と便秘と診断され、快便にならない、硬いうんちが続くといった症状が出たりすると治療の対象になります。

  1. 排便が週2回以下
  2. 少なくとも週1回以上の便失禁
  3. 過度の便の貯留の既往
  4. 痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
  5. 直腸の大きな便の既往(大量に排便したり、トイレが詰まる)
  6. トイレが詰まるぐらい大きな便の既往

「いいうんち」「悪いうんち」
見極め基準は色!

「黄色」「黄緑」のうんちは「いいうんち」です。やわらかくてもかまいません。一方、「黒っぽい」「深緑(グレーがかった)」のうんちは「悪いうんち」で、硬かったり、重かったり、生臭いようなにおいがします。赤ちゃんのうんちで、においが臭かったら注意が必要ですね。

継続的な刺激が大切!

便秘でうんちが出なくて苦しんでいる赤ちゃんには、綿棒などを肛門から入れて腸を直接刺激します。医師は指で刺激することもあります。それでも出ないようならば、浣腸を使います。また、おなかのマッサージはスキンシップとして排便に効果的です。マッサージといっても、グイグイと押したり揉んだりせず、手をやさしく当てて下腹部を温める程度で十分ですよ。

便秘でおなかが張ったり、夜泣きをしたりするようなときは、毎日排便するように刺激をしてください。うんちは本来、毎日出るものなので、繰り返して刺激して出るようになると、自然と毎日出るようになることが多いです。

「赤ちゃんの便秘」のリアルな悩みに
中野先生の回答は?

港区立芝浦アイランド「児童高齢者交流プラザ」での講演(2019年2月8日開催)

講演後に設けられた質疑応答の時間では、会場の参加者から「赤ちゃんの便秘」のリアルな悩みが続々と寄せられました。

便秘解消にいいとされるヨーグルトやバナナなどを取り入れたり、水分をなるべく摂らせたり、おなかのマッサージもしていますが、なかなか便秘が治りません。

中野先生:ヨーグルトやバナナが赤ちゃんの便秘にいい、というのは誤解です。腸内環境にもいい可能性が高いですし、実際にうまく腸が働いてくれてうんちが出た大人もいるのは事実ですが、赤ちゃんの便秘にいいとは、誰もひと言もいっていませんよ(笑)。バナナにしても同じで、たまたま体質に合ってうんちが出る人もいます。また「便秘対策として水分摂取は必要?」とよく聞かれますが水分摂取は脱水状態にならなければいい、という程度です。そもそも赤ちゃんは普段、母乳やミルクを飲んでいますから、水分不足になることはあまりないです。マッサージも軽い便秘には効く可能性がありますが、重い便秘のお子さんには効き目が出にくいですね。

理由としては、赤ちゃんの便秘は直腸にたまるので、直腸のうんちを肛門へ逃がしてあげるのが大切で、まずは綿棒や浣腸でこまめに刺激を与えるのがいいと思います。

6歳なんですが、毎日便は出るものの、トイレに入ると「うーん」といきむ時間が長く、5分くらいかかっています。それは問題があるのでしょうか? うんちを見ると硬いわけではなさそうです。

中野先生:便秘まではいかないけれど、便秘気味ですね。肛門のそばに硬いうんちがたまって、出しにくくて頑張っているのでしょう。5分くらいの時間なら問題はないと思いますが、便秘にいい食事を積極的に考えたほうがいいでしょう。子どもの場合、まだ消化の力が弱いため、消化しにくい食物繊維を摂ることよりも、食事の「量」を多くするよう心がけましょう。小食の子は便秘になりやすいですから。

2ヵ月で母乳とミルクとの混合で育てています。2日に1回、綿棒刺激でうんちは出ていますが、ものすごい臭いので、どうしたらいいか悩んでいます。気になって診察を受けるのですが、「お母さん気にしすぎです」といわれて…。

中野先生:それは、気にしたほうがいいですよ。生後2ヵ月ごろは、いい腸内細菌を作る時期です。その時期に臭いと、そのままの腸内環境で成長しちゃうので、ずっと臭いうんちやおならになってしまう可能性があります。なるべく毎日綿棒で刺激して、まずはうんちを出してあげてください。しっかり出ていないようであれば、市販の浣腸を使ってもいいです。浣腸は下から刺激するだけですから、毎日してもいいし、1日2回してもかまいません。うんちの出が悪くておなかが張ってしまう子は、哺乳のたびに浣腸することもあります。ある意味、飲み薬よりも効果的ですよ。クセになることもありません。

5ヵ月の娘がいます。3〜5ヵ月になると、排便の回数が1日2〜3回になるのが普通だといわれているのですが、まだ1日に5〜6回しています。ミルクを飲むたびにうんちが出るという状態です。

中野先生:そういう赤ちゃんもいます。胃に食べ物や飲み物が入った刺激で、大腸が動いてうんちで出るのは、通常の生理的な反応です。それが、成長すると鈍くなって減っていきますが、この子は“鈍さ”の発達がゆっくりしているのですね。そういうタイプのお子さんは、大人になっても食事ごとにうんちすることもありますが、必ずそうなるわけでもないですから、まったく気にする必要はありません。よくうんちが出ているほうが、腸のためにはいいです。

母乳で育っている時期は、母親が食べたものが、赤ちゃんの便秘や腸内環境に影響するのでしょうか?

中野先生:基本的にはないです。お母さんがお薬を飲んでいれば、その影響はあるかもしれませんが、食べ物だけではそこまでの影響は出ません。

「みなと保健所」での講演(2019年3月8日開催)

4日に1回くらい、綿棒で浣腸をしていますが、便秘が改善されません。

中野先生:便に形ができてきたら、綿棒浣腸はあまり効果がありません。肛門の手前の硬い便を出してあげればお通じが良くなるので、積極的に市販の浣腸を利用すると良いです。浣腸を利用しても便が出る気配がまったくない場合は、迷わず病院にいきましょう。

Q:うんちの色についてのお話がありましたが、緑色のうんちはすべて悪いうんちなのでしょうか。

中野先生:緑黄色のきれいな色のうんちは問題ありません。しかし、灰色がかった生臭いうんちは、悪いうんちなので溜めないように積極的に出してあげるのがよいでしょう。

男児の方が胃腸が弱いと聞いたことがあります。本当ですか。

中野先生:子どもに関しては、男児の方が便秘の子が多いという傾向はあります。

Q:便を出す時間帯は、1日のうちのいつが最もよいのでしょうか。

中野先生:どの時間帯がよいという明確な指標はありません。通常は食事後に腸の大きな動きがあるので「食後30分〜1時間がよい」という考え方や、「習慣づけのために朝うんちがよい」という考え方もありますが、人によって違うのでそこまで気にする必要はありません。無理にその生活にあわせることないでしょう。また毎日いろいろな時間帯にうんちが出ていても、医学的にはまったく問題ありません。

腸の働きと離乳食の硬さの関係性を知りたいです。離乳食を硬めにすると便秘になりやすいということはありますか。便秘だったら食事を柔らかめにした方が良いのでしょうか。

中野先生:そんなことはありません。消化吸収は胃と小腸で行いますが、ほとんどは胃で消化、つまりドロドロになるため、離乳食が硬くても大腸にはほとんど影響はありません。硬い食事は量が多く、やわらかい食事は水分が多い。量が多いからうんちも多くなるのです。離乳食の硬さに関してはその子のペースでだんだん変えていけばよいでしょう。

ミニフォーラムの終了後、参加者のみなさんに回答いただいたアンケートでは、中野先生のお話がお悩み解消に役立ったとの声がたくさん寄せられました。

  • とても参考になりました。毎日のうんちを、もう少し気を付けて見てみようと思います。
  • かなり勉強になりました。質問もできてよかったです。
  • 食事内容によって母乳の質に影響が出て便秘or下痢になるわけではないと知って安心しました。先生のハキハキとした話し方が心地良かったです。

赤ちゃんの便秘にお悩みのかたは、ぜひご参考いただき、お悩みを“ためず”に解消しましょう!

取材協力

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中野美和子先生

さいたま市立病院小児外科(非常勤・元部長)。2004年に排便外来を開設。これまでに、2000人以上の患者を初診する。子どもの便秘のスペシャリスト。

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