接し方で人生が変わる?専門家が教える“子を健康へ導く微生物との暮らし方”

2019.04.26

子育て中は、身の回りの「汚いもの」と向き合うことが増える期間です。親はオムツ替えや、毎日の膨大な洗濯物、増え続ける汚れに「これくらいでいいか」と“耐性”がついていったり、汚れからわが子を守るために「ばっちいから触っちゃダメ」と引き離したり。

また、買い物のときには「赤ちゃんがなめても大丈夫」というキャッチコピーがついた掃除用品やアイテムを、つい手にしてしまうのではないでしょうか。

でも「一体どこまでやればいいの?」と途方に暮れてしまっているママとパパも多いのではないでしょうか。そうなる前におすすめしたい一冊がこちらです。

微生物の専門家が、子育てにまつわる100の質問に真剣回答!

『子どもの人生は「腸」で決まる』/ジャック・ギルバート 著/鍛原多恵子 訳/東洋経済新報社

シカゴ大学外科学教授のジャック・ギルバート、カリフォルニア大学サンディエゴ校のロブ・ナイト、そして『ニューヨークタイムズ』のジャーナリスト・サンドラ・ブレイクスリーらによる『子どもの人生は「腸」で決まる− 3歳までにやっておきたい最強の免疫力の育て方』。原題は『Dirt is Good』。つまり“汚いもの(Dirt)は良いものだ“という趣旨です。

ギルバート氏とナイト氏は、マイクロバイオーム(人体にすむ微生物の総称)の専門家。マイクロバイオームは日々、食べ物を消化し、ビタミンをつくり、病気を治し、免疫系を調整し…と、さまざまな面で私たちの行動に影響を及ぼしています。

2人は多くの人々から寄せられる、微生物が人体に及ぼす危険についての疑問に、まず冒頭でこのように答えています。

細菌は病気の元だから何が何でも退治しなくてはいけない。そう思う人は多い。でもそれは間違っている。危険な間違いだ。微生物にかんする最新の考え方によれば、人体の内外にいる細菌の大半は有益だし、私たちの生存に欠かすことができない。

接し方で人生が変わる?専門家が教える“子を健康へ導く微生物との暮らし方”

また、両氏ともに子を持つ親です。その立場から、子どもがあらゆるものを触ったり口にしたり、そして子どもの具合が悪いのに対処法がわからないときの、不安な思いにも理解を示しています。

本書の目的は、最新のマイクロバイオームの研究結果から子どもの食べ物、暮らしについてのアドバイスをすること。胎児期から乳児期、幼児期、未就学児童期まで発達期ごとの疾患や診断、治療に注目しつつ展開されています。

彼らは「いちばんよく尋ねられる質問」を、この本の各章の見出しとして列挙しています。以下は、その一部。

・細菌と不妊の関係は?
・夜にアイスクリームが食べたくなるのは微生物のせい?
・粉ミルクは安全ですか?
・赤ちゃんを菜食主義者にしても良いですか?
・ワクチンは子どもにとって安全ですか?
・土を食べることは本当に子どもに良いのですか?
・食後の皿洗いは食器洗い機ですますべきですか、それとも手で洗うべきですか?
・検査結果が信頼できるかどうかはどうすればわかりますか?

素朴な疑問から「そもそも」の疑問まで、その数、100問。なかには、こんなことにもマイクロバイオームが関係しているの? と驚かされる質問もあります。

こうした質問への前提として、本書ではマイクロバイオームの正体について、生命誕生にまでさかのぼって解説。気の遠くなるような進化の歴史を持つマイクロバイオームですが「マイクロバイオームはあなたが毎日変えることができる」と断言しています。

マイクロバイオームのゲノムは私たちが食べる物、まわりの環境、私たちが飲む薬、私たちの健康状態によって変わる。そして、乳幼児期ほどこのことが当てはまる時期はない。 私たちの研究の目的は、健康増進のためにマイクロバイオームをどう変えれば良いかを知ることにある。これはある重大な事実を突きつける。あなたのお子さんのマイクロバイオーム、とりわけ腸内のマイクロバイオームは、誕生から3歳まではきわめて流動的なのだ。(中略) つまり、生後3年の期間がきわめて重要であることになる。この幼い時期に介入することは、健康と病気に長期にわたって最大限の影響を与える。

本書には、わが子が生まれ持っている生物学的なプログラムをいかに「常識的な範囲で付け加えて」健康へと導くか、そのヒントが隠されています。

免疫の発達においても
イヌは最高の“人類の友”

接し方で人生が変わる?専門家が教える“子を健康へ導く微生物との暮らし方”

イギリスには「子どもが生まれたらイヌを飼いなさい」という有名なことわざがあります。命の大切さを学ばせてくれる教訓として、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか? 本書では、子どもがイヌと共に育つことはマイクロバイオームの観点からも有効であるとしています。

ワンちゃんが外から帰ってくるたびに、外の環境の細菌を連れ帰るので、赤ちゃんが出合う微生物の多様性と数が増える。心配するかもしれないが、これはじつは良いことなのだ。 お子さんの発達中の免疫系は、これらの細菌に親しみ、その恩恵を受ける。 ある研究で、イヌから採取したラクトバチルス属菌を培養し、喘息にかかったマウスに与えたところ、マウスが喘息発作を起こす回数が減った。イヌがいる環境で育った子どもが喘息やアレルギーを発症する率が13%低いのは、これと同じ理由かもしれない。

また、イヌだけでなく「ネコを飼っている家庭でも、マイクロバイオームに同様の影響が見られた」とあります。さらに別の章では、子どもと牧場に行き、思う存分動物と触れ合うことも推奨しています。

清浄な水や良好な衛生状態は特定の病原体に対するワクチンとは目的が異なるが(ワクチンは危険な病原体に対する暴露を防ぐというより、暴露されたときに私たちを守ってくれる)、私たちの体は現実の世界にあるさまざまな危険から保護され、祖先が日頃慣れ親しんでいた無害な細菌や危険度の低い細菌にさらされることもなくなった。

だから、牧場に出かける、または――できれば――地元の農業やガーデニングの体験プロジェクトに参加することが大切なのだ。必要なワクチンを接種し、感染症の病原体にまつわる基本的知識(ブタのフンを食べない、生肉や腐った肉に触った手を口に入れないなど)を身につけていれば、お子さんは自由に環境を探検して汚れて良い。

自分たちとは違う“汚れ”を排除するのではなく、違う環境や生物に慣れて微生物の量を増やすことが、結果として免疫系の発達へとつながるのです。

古代からイヌと共生してきた人類は、それだけ多くの恩恵を受けてきたはず。よく「イヌが人に慣れる」といいますが、逆に「人がイヌに慣れる」ことも重要なのかもしれません。

「腸で決まる」といっても、最終的な判断を下すのは……?

接し方で人生が変わる?専門家が教える“子を健康へ導く微生物との暮らし方”

本書では翻訳書らしく、寄せられた疑問について「イエス」「ノー」ときっぱりと回答しています。ですが最新の研究結果をもってしても、「おそらく」「難しい質問です」ときっぱりと回答できないものも少なくありません。生まれ育つ環境や両親の体質、そして私たちを取り巻く微生物は千差万別だからです。本書のあとがきでは、「親はあなたなのだ。最終的に判断を下す義務はあなたにあり、結果の良否に関わらず、結果と生きていかなくてはいけない」と言及しています。

「何から予防したらいいのかわからない」という不安は絶えません。例えば何を除菌するか、取り入れるか、メリハリをつけるところから始めてみましょう。生活のリズムを整えて、食べて、遊んで、そして「この行動をしてもいいのかな?」と疑問を覚えたときには、本書のページをめくってみることをお勧めします。

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