便秘の要因は赤ちゃん時代に?
小児便秘の専門家がすっきり解説!

2019.03.30

「便秘」は大人特有のもの? いえいえ、赤ちゃん、そして、幼稚園や小学校などへ通っている子どもたちの中にも、便秘に苦しむ子たちはたくさんいます。子どもの便秘は本人はもちろん、トイレのたびに苦しそうな子どもの姿を見る親にとっても大きな悩みです。

そしてあなたの便秘の悩みも、もしかしたら赤ちゃんのころの”問題”が原因かもしれないとしたら…? そんな世代を超えた便秘の悩みに、「子どもの便秘」の専門家による、子どもの便秘の基礎知識と対処法をまとめた一冊を紹介します。

『赤ちゃんからはじまる便秘問題 すっきりうんちしてますか?』/中野美和子 著/言叢社

「たかが便秘」ではない子どもの便秘

『赤ちゃんからはじまる便秘問題―すっきりうんちしてますか?』(言叢社)の著者、中野美和子先生はさいたま市立病院で小児外科部長を務めていた時に「排便外来」を開設されたほか、先天性の疾患をはじめとする難治性便秘、便通異常、便失禁の治療も行う「子どもの便秘」の専門家です。本書ではまず、便秘の診断基準が挙げられています。

医学的には、週に3回より少ない(週に2回以下の排便)、あるいは5日以上出ない日が続くと、便秘としています。(本書41ページ)

お腹が痛い、苦しい、不快感がある、出血があるなど、便秘による苦痛が出ると「便秘症」。その状態が1~2ヵ月続くと「慢性便秘症」とみなされます。

食生活の改善で解消される、一時的な便秘もありますが、2~3ヵ月便秘が続くと要注意。徐々に症状がひどくなり、排便しにくい状態の日常になってしまうと、自然には治りにくくなります。そうなると「たかが便秘」でもなく「そのうち治る」ものでもありません。

赤ちゃんからはじまる便秘問題

赤ちゃんの便秘の場合、日々の排便ばかりでなくおむつからトイレへ移行するトレーニングがスムーズに進まない可能性もあります。赤ちゃんや子どもが慢性便秘症になった場合は、食生活の改善やマッサージといった処置でなんとかしようとせず、医療機関での「適切な治療を受けることが必要」と中野先生は述べています。

小学生低学年でも、クラスの2〜3人は便秘症に悩んでいる!?

本書で紹介されている、NPO法人日本トイレ研究所が小学生低学年の便秘について調査した資料によると、毎日排便している児童は38.4%。先ほどの便秘の基準「週に三回より少ない」に当てはまる「7日間で2日以下」は8.8%。つまり30人学級ならば、1クラスに2人~3人は便秘の可能性があるということになります。

小学1年生~3年生の1,579人のうち、7日間毎日排便している児童は606人(38.4%)、7日間で2日以下であった児童は、138人(8.8%)、このうち7日間で一度も排便のない児童は21人(1.3%)でした。また、3日以上連続で排便がなかった児童は、217人(13.7%”)でした。(本書42ページ)

赤ちゃんからはじまる便秘問題

大人の便秘であれば自覚症状で判断ができますが、子どもの便秘には周囲の観察による変化や異常のチェックが大切です。便秘かどうかはトイレの回数だけでは判断せず、「便の形状」をチェックすべきと、中野先生は指摘します。

正常といえる便は、水分含有量が70~80%ぐらいで、バナナ状、ないしソフトクリーム状です。(中略)便器にすぐ沈む重い便、焦げ茶色など色が濃いのは便が長く溜まっていたことを意味し、水に浮く軽い便、黄色い便は通過が早い便といえます。(本書47ページ)

もうひとつのチェックポイントは「排便後の様子」。「便意」があって、トイレに行って楽に1日分の便が出せて、出した後にすっきりするというところまでがそろっている「快便」がよい排便、正常な排便なのです。

便秘の可能性が高いという便の形状は「おにぎり状」「缶ビールくらいの太さの大きな便」「ねっとりした粘土状」「硬くコロコロしている便」など。また、排便前後の様子では「便意はあっても実際には排便しない」「わずかしか出ない」「何度かトイレに行かないと排便できない」「トイレ時間が長い」といった場合は便秘の可能性が考えられるといいます。

子ども特有の“便秘の悪循環”とは

子どもの便秘は、成長に伴う食生活の変化が要因となるケースもあります。生まれた直後は母乳やミルクだけの生活ですが、5ヵ月ごろから離乳食がスタートするとうんちの形状も変わってきます。またミルクから離乳食へ完全に移行したり、大人と同じような食事になってくる時期にも、うんちを巡る環境は変わってきます。中野先生は子どもの便秘の「悪循環」には、このような子ども特有の事情があるといいます。

1歳を過ぎ、大人に近い食事になると、また1歳半くらいに偏食が出てくると便が硬くなり、便が出にくくなります。どちらが先かはともかく、そういう時に、硬い便が続いて、排便の時に痛い思いをすると、1〜3歳の小さな子どもでは、排便が怖くなってきます。(本書52ページ)

直腸は本来はからっぽで、下りてきた便が直腸の壁を押し広げると便意を感じます。しかしいつも直腸に便があると、一定以上の大きさや量の便が来ないと「便が下りてきた」と感じない“鈍い腸”になってしまうというのです。そうなると、溜まっていた大きな便を出しても、腸は拡張したまま。新たに便が下りてきても便意を感じない…という、まさに「悪循環」ですね。

悪循環を断ち切るためには、腸管の運動を調節する自律神経の働きを正常にすること。そのために必要なのは規則正しい生活のリズム。それは親の時代からまったく変わらずいわれ続けてきた、「早寝・早起き・朝ごはん」の習慣です。

腸管の運動は自律神経が調節しています。交感神経と副交感神経がうまく働いている状態にするには、毎日のリズムがたいせつです。腸管運動は副交感神経が主に司っています、副交感神経がよく働くのはリラックスした状態です。(中略)本来、子どもは思い切り外で遊んで、遊んでいるときはハラハラ・ドキドキがあって、とても楽しい、うちに帰るとホッとする環境で、家族でおいしい食事を食べて、よく眠る。(中略)「早寝・早起き・朝ごはん」は、このリズムを作るのにとても有効です。(本書73ページ)

赤ちゃんからはじまる便秘問題

その上で、週に2回以下の排便が1~2ヵ月続く場合は受診し、食事の見直しや、薬や浣腸などの補助手段を使い排便の回数をコントロールします。子どもの便秘について、薬や浣腸、座薬などの補助手段は「癖になってしまうのでは?」と不安を覚えるかもしれませんが、本書ではその心配に対する答えもしっかり触れられています。

ぶかぶかに伸びて便を溜めこんでしまう「腸の溜め癖」をとって、1~2日の便を感知する、よい腸に戻すための、大事な作業です。(本書94〜96ページ)

浣腸は癖にならず、年単位でも安心して使えるだけでなく、子どもの腸に便が溜まらない状態を作るため、医師の指示のもと積極的に使用すべきというお話は、目からウロコでした。便秘によって子どものQOLが下がってしまうことのないよう、その子に合った適切なサポートをしていきたいものですね。

本書では豊富な事例や便秘のメカニズム、便秘や病気の種類、対処法などがとても詳しく、分かりやすく説明されています。症状別、年齢別の便秘の症状や治療法、日々の対応、また受診すべきかどうかを判断する材料も紹介されています。わが子の便秘に悩むお母さんに、まず読んでほしい1冊です。

 

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