カロリーはゼロだけど
“第六の栄養素”!
「食物繊維」とは?

2019.01.31

他の栄養素と違って直接エネルギー源になったり、血や肉になったりするものではないものの、食生活に欠かせない栄養成分が、健康番組や雑誌などでたびたび特集される「食物繊維」です。

そもそも食物繊維とは、「食物成分の中で人の消化酵素では消化できないものの総称」のこと。かつては便秘解消に役立つという程度の認識が一般的でしたが、近年になって「大腸がんのリスク低減」や、「肥満や高血圧といった生活習慣病の予防」などさまざまな効果が判明し、「たんぱく質」「ビタミン」「炭水化物」「ミネラル」「脂肪」の五大栄養素に肩を並べる“第六の栄養素”として一躍注目を集める存在となっています。

一口に食物繊維といっても「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2つに大別され、それぞれの体内でのはたらきは少し異なります。食物繊維の恩恵を受けるには、2種類をバランスよく摂ることが重要なのです。

2つの「食物繊維」とそれぞれのはたらき

2種類の食物繊維のうち、以前から繊維と呼ばれてきたのは「不溶性食物繊維」。これをより細かく分類すると、植物の細胞壁をかたちづくる「セルロース」や「ヘミセルロース」「リグニン」のほか、カニやエビの殻に含まれる「キチン」などに分けられ、繊維の多い野菜や玄米などの穀類、豆類、キノコ類に多く含まれています。不溶性食物繊維は保水性がよく、便の容積を増やしてスムーズな排便を促すため、便秘改善に効果があります。

一方、繊維状ではないものの食物繊維と呼ばれるようになったのが「水溶性食物繊維」です。これをより細かく分類すると、果物や野菜に含まれる「ペクチン」、海藻類のぬめり成分に含まれる「アルギン酸」、こんにゃくの主成分「グルコマンナン」などに分けられます。

その名の通り水溶性食物繊維は水に溶けやすく、水に溶けるとゼリー状になるのが特徴です。小腸での栄養素の吸収速度をゆるやかにして食後の血糖値上昇を抑えたり、コレステロールを吸着して体外に排出して血中コレステロール値を低下させたり、ナトリウムを排出して高血圧を予防するといった効果があります。

ちなみにトウモロコシのデンプンなどからつくられる「難消化性デキストリン」も水溶性食物繊維の一種で、「血中中性脂肪が気になる方に適する」「おなかの調子を整える」「血糖値の気になる方に適する」といった保健用途の表示ができる特定保健用食品の関与成分として認められています。

「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」のどちらも、大腸内の細菌によって発酵・分解され、ビフィズス菌などの善玉腸内細菌のエサになるため、善玉菌が増加し腸内環境の改善につながります。さらに、食物繊維を多く含む食材は低カロリーで噛み応えがあるものが多く、満腹感を得やすいため肥満予防にも効果的です。「大腸がんのリスクを減らす」ともいわれますが、国立がん研究センターの研究によると、食物繊維の摂取量と大腸がんリスクの間に関連は見られず、欧米の研究の解析では「1日10g未満しか摂取していない約1割の人たちでリスクが高くなったと報告」があるものの、通常の食事から得られる摂取量で大腸がん予防のために十分な食物繊維量を満たしているとされています。

1日の摂取基準量は?摂り過ぎの心配は?

それでは、わたしたちは食物繊維を毎日どのくらい摂取したらいいのでしょうか。厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、食物繊維は「極端でない範囲でできるだけ多めに摂取することが望ましい」とされており、成人は1日あたり24g以上、できれば1000kcalあたり14g以上摂取するのが理想とされています。

しかし「平成29年国民健康・栄養調査報告」で実際の摂取量を見てみると、20歳以上の1日あたりの平均値は15.0g(75歳以上は16.4g)! わたしたちの食生活には、想像以上に食物繊維が足りていないことがわかります。そこで厚生労働省は、理想の摂取量と実際の摂取量の中間をとって、成人男性は1日あたり20g以上(70歳以上は19g以上)、成人女性は1日あたり20g以上(70歳以上は17g以上)という目標量を掲げています。まずはこの数字を目指して、食事を意識する必要がありそうです。

ちなみに食物繊維のカロリー(熱量)はというと、厚生労働省が定めた栄養表示基準における食物繊維素材ごとの熱量の換算係数は以下のようになっています。カロリーを気にする必要はほとんどないといってもいいでしょう。

【1gあたり0kcal】

  • 寒天
  • キサンタンガム
  • サイリウム種皮
  • ジェランガム
  • セルロース
  • 低分子化アルギン酸ナトリウム
  • ポリデキストロース

【1gあたり1kcal】

  • アラビアガム
  • 難消化性デキストリン
  • ビートファイバー

【1gあたり2kcal】

  • グァーガム(グァーフラワー,グァルガム)
  • グァーガム酵素分解物
  • 小麦胚芽
  • 湿熱処理でんぷん(難消化性でんぷん)
  • 水溶性大豆食物繊維(WSSF)
  • タマリンドシードガム
  • プルラン

基本的に通常の食事であれば食物繊維の過剰摂取を心配する必要はありません。食事はバランスよく摂ることを心がけたいものですね。

【参考文献】
「食物繊維」(『デジタル大辞泉』『日本大百科全書』『家庭医学館』小学館)
公益財団法人長寿科学振興財団「食物繊維の働きと1日の摂取量」
国立健康・栄養研究所「難消化性デキストリン」(「健康食品」の素材情報データベース)
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ「食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」「平成29年国民健康・栄養調査報告」「「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」の一部改正について」(平成15年2月17日)

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