腸内で大活躍する「ビフィズス菌」、意外な弱点とは?

2019.01.11

発見されたのは“乳児の便のなかから”

誰もが名前は聞いたことのあるはずの「ビフィズス菌」。コンビニやスーパーの店頭には、ビフィズス菌入りのヨーグルトやドリンク、また健康食品が何種類も並んでいますから、名前だけではなく、毎日摂取している人も多いのではないでしょうか。

このビフィズス菌が発見されたのは、いまから120年前の1899年(明治32年)のこと。フランスのパリにあるパスツール研究所の研究者ティシェ博士(1866~1926)が、母乳で育てられた乳児の便からV字やY字の形状が多く見られる菌を発見し、その形状からラテン語で「裂け目」「分岐」「二股に分かれた」という意味の「bifidus」を用いて命名したのが、ビフィズス菌の研究の始まりです。

その後の研究の結果、ビフィズス菌は乳酸菌の一種だと判明します。乳酸菌の存在は17世紀から知られていましたが、乳酸発酵を本格的に調べたのはパスツール博士(1822〜1895)でした。パスツールは狂犬病ワクチンの開発に成功し、その寄付金によってパスツール研究所を設立します。乳酸発酵の研究がビフィズス菌の発見につながり、そして乳酸菌の一種だと判明する…。普段何気なく口にしているビフィズス菌には、そんな不思議なドラマがあったのです。

さらにビフィズス菌の研究は進展し、ビフィズス菌属に属する菌種は30種類とされています。ビフィズス菌は腸内で糖を分解し乳酸や酢酸などを作ります。この酸が大腸菌などの有害な作用をもたらす菌の増殖を防ぎ、腸内環境を整えると考えられています。腸の健康維持にビフィズス菌が欠かせないのはこのためです。

体内でのビフィズス菌の役割は八面六臂

体内ではどのような役割を担っているのでしょうか。

1つは「整腸作用」です。ビフィズス菌が叢を形成し有害な働きをする菌の繁殖を抑制することで、アンモニアやインドールなどの腐敗物の生成も少なくなります。この結果、腸の活動が整えられ、下痢の発生を抑えられたり、便秘の改善につながります。ビフィズス菌が腸内で程よく繁殖すると、食べ物の消化吸収を助け、腸内フローラをバランスを良い状態を保ってくれるのです。

もう一つは「免疫調節作用」です。栄養が腸を通じて体内に吸収されるのと同様に、病原菌なども口から侵入して腸などを通じて体内に入ろうとします。これを防ぐのが免疫です。腸管は消化器官であると同時に、体のなかでも最大の免疫疫器官なのです。ビフィズス菌は免疫器官である腸管を刺激して、免疫力を高める働きも担っています。この、感染を防御する効果のほか、脂質代謝を改善する効果も報告されています。

そんなビフィズス菌の弱点は…?

ビフィズス菌は乳酸菌のなかでも「桿状(かんじょう)乳酸菌」と呼ばれるタイプの一種で大腸に定着しています。腸のなかには「球状乳酸菌」という別タイプの乳酸菌も存在し、こちらは主に小腸に定着します。同じ乳酸菌の仲間と言えどもその住みかは異なります。比較的胃に近い小腸に定着する菌と、胃から遠い大腸に定着する菌。この定着場所が異なる理由の一つは胃酸への耐性の違いです。

乳酸菌の耐酸性についての実験では、ビフィズス菌とそれ以外の乳酸菌とで人工胃液に混ぜたときの生存時間を比較した結果、酸性度がpH4以上の胃液ではビフィズス菌はすべて60分以内に死滅しましたが、それ以外の乳酸菌ではpH2の胃液でも120分以上生存しているものもありました。つまり、他の乳酸菌に比べて、ビフィズス菌は胃酸に弱いという“弱点”を持っています。

それでは、口から食べものを取り入れて、腸にビフィズス菌を送るというのは意味のないことなのでしょうか? その答えは「NO」。乳酸菌やビフィズス菌が死んだまま腸に届いた場合でも、免疫機構に影響して整腸作用があると考えられています。また生きたビフィズス菌をそのまま取り入れたとしても、体内で長く生きるわけではありません。そのため、腸の調子を継続して整えるには、継続して摂取するのが効果的なのです。

【参考文献】
よくある質問(公益財団法人日本ビフィズス菌センター/腸内細菌学会)
田中隆一郎「ビフィズス菌の発見者、ティシェ博士の墓参記とその人となりについて」(『ビフィズス 2巻2号』日本ビフィズス菌センター 1989年)
「ビフィズス菌」(『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン)
パスツール研究所について(パスツール研究所)
山本真弓・山田満「乳酸菌の耐酸性について」(『和洋女子大学紀要 家政系編 37』和洋女子大学 1997年)

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