「発酵」と「腐敗」の違いは人間の都合!?〜「発酵」とは?

2018.12.25

発酵と腐敗は紙一重!?

健康のために、また腸内環境改善のために発酵食品を意識して食べている方に質問です。そもそも「発酵」とは、どういうことなのかご存じでしょうか? 『広辞苑』によると、このように説明されています。

①一般に、酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・二酸化炭素などを生じる過程。

糖をエタノールと二酸化炭素に分解する「アルコール発酵」や、糖をグリセロール(グリセリン)に分解する「グリセロール発酵」、糖を乳酸と二酸化炭素に分解する「乳酸発酵」など、発酵にはいろいろな種類があります。

ほどよく発酵させた食品は味わいや風味が増し、大変おいしいものですが、発酵させすぎてしまうと酸味が強くなりすぎたり、アルコールの風味がきつくなったりして食べられなくなることも。もしそんな食品を口にしたら「傷んでいる!」と吐き出してしまうでしょう。

2つを分けるその定義は…「人間の都合」

発酵が進みすぎた状態=腐敗なのでしょうか? それでは、腐敗の定義はどう説明されているのか、同じく『広辞苑』を引いてみると次のようになっています。

①有機物、特に蛋白質が細菌によって分解され、有毒な物質と悪臭ある気体を生じる変化。くさること。

有機物が細菌によって分解され、有毒な物質と悪臭ある気体を生じる…。あれ? もしかして、これって「発酵」にもそのまま当てはまるのでは? 生じるものが人間にとって「有毒」かどうかで、「発酵」なのか「腐敗」なのかが分かれるということのようです。

比喩的な使われ方の解説でも、同じような違いがあります。発酵は「(比喩的に)ある考えや計画が、心の中で次第にできあがっていくこと」なのに対して、腐敗は「精神が堕落して、弊害が生じる状態になること」。ともに次第に変わっていく状況を指していますが、よくなっていく「発酵」と、悪くなっていく「腐敗」との印象の差は一目瞭然です。

化学的な「発酵と腐敗」も、比喩的な「発酵と腐敗」もまったく同じ現象なのに、なぜ2つの表現が生まれる必要があったのかと考えると、「腐敗」するものの中から「食べられるもの」や「人間が使えるもの」を、長い時間を掛けてより抜き「発酵」するものとして区別するためだったのかもしれません。

 

「JAPAN BLUE」も発酵が生み出した!

発酵は世界中で活用され、さまざまな地域に根ざした発酵食品があるのはご存じのとおりです。乳酸菌による乳酸発酵で作られ、乳酸菌が豊富に含まれている「ヨーグルト」や「キムチ」、「なれずし」。酵母によって醸造される「ワイン」や「日本酒」「ビール」などの醸造酒。また、大豆を納豆菌で発酵させた「納豆」や、カビを利用して発酵させた「かつお節」など、世界各地の料理として有名な食品がたくさんあります。意外なものでは、タバスコソースや和菓子の「くず餅」(くず粉ではなく、小麦粉を乳酸菌で発酵させたもの)も発酵食品です。

発酵を活用しているのは食品ばかりではありません。感染症の治療に用いられる「ペニシリン」や、がんの治療薬として利用されている「アクチノマイシン」などの抗生物質、赤血球の合成に関わる「ビタミンB12」や、アミノ酸、アミラーゼなど、医薬品として用いられるものも、発酵によって製造されています。

直接口にするもの以外では、葉巻に用いるタバコの葉。乾燥が終わったあとに発酵させることで葉巻独特の香りが生まれます。日本に古くから伝わる藍染めにも発酵が欠かせません。徳島県名産の染めもの「阿波藍」では、夏に収穫した藍の葉に、初秋になると水を撒いて発酵させ、蒅(すくも)と呼ばれる染料を作ります。この藍色は「JAPAN BLUE」として知られる、あの深く鮮やかな青なのです。

発酵とは、人間が長い時間を掛けて培った経験と知識の結晶と言ってもいいのかもしれませんね。発酵食品を見る目が少し変わるかも?

 

【参考文献】
「発酵」「腐敗」(『広辞苑』岩波書店)
「元祖くず餅」(株式会社 船橋屋公式サイト)
「発酵工業」(『世界大百科事典』平凡社)
「阿波国」(『日本歴史地名大系』平凡社)

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