腸内環境を整えるには瞑想が効く?腸とストレスの密接な関係を解説

2018.12.21

大事なプレゼンの前にトイレに行きたくなったり、不快なものを見て吐き気を覚えたり。日常的によくある出来事ですが、なぜこうした気持ちの変化が内臓の動きを引き起こすのでしょう?

実は脳と内臓、特に腸とは密接な関係があることが近年明らかになりつつあります。エムラン・メイヤー氏の著作『腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』(紀伊國屋書店・高橋 洋 訳)では、脳が受ける刺激、そのなかでもストレス、腸との関係性をさまざまな角度から解説しています。

世界16カ国で刊行された、
脳と腸の関係を暴いたベストセラー


脳と内臓の相互作用、特に脳と腸のつながりを40年にわたって研究し続けてきたエムラン・メイヤー氏。本書の冒頭では、ロサンゼルス在住のメイヤー氏は、本書の冒頭でアメリカの健康問題に言及しています。

世界保健機関が2000年に発表した画期的な報告は、(中略)医療費に関してはアメリカを最高位にランクしているが、残念ながら医療の総合的な評価は37位、健康レベルについては72位に位置づけている

アメリカでは健康問題に対処するのに莫大な資源が費やされるようになったにも関わらず(中略)心の病の治療に関しては、ほとんど進歩がないという厳しい現実を反映する

メイヤー氏は、これまで病気をあくまで「パーツの破損」として捉え、投薬や外科手術の技術のみで進歩してきた欧米の医療産業に危機感を覚えています。しかし肥満やストレスといったさまざまな原因が引き起こす病気が増加する現代社会に、単純に「壊れたからなおす」という治療法では追いつきません。

そこでメイヤー氏は、これまで単なる内臓の一部と位置づけられていた消化器系の役割に注目。脊髄にも匹敵する5000万〜1億もの神経細胞で構成されている腸を「第二の脳」であるとし、脳と密接に関係する「脳腸相関(gut-brain axis)」という概念で捉え直し、注目したのです。

ストレスを感じたとき、
即座に反応する場所は…?

ストレス
メイヤー氏は脳と腸との密接な関係から、体内の感覚に耳を傾ければ気分や健康をコントロールできるとしています。例えば、過去に出会った患者の症例をもとに、嘔吐症候群などの消化器系の疾患の原因が、内臓そのものの疾患ではなくストレスにあるというメカニズムを紹介。

人がストレスを受けると、まず胃に異常が起こり食物が消化されず、結果的に健康を損なってしまいます。こうした流れ、実は脳を介さずに行われており、メイヤー氏は「内臓反応」と呼んでいます。脳は体のすべてをつかさどってコントロールしている、というイメージが強いですが、メイヤー氏は「身体が脳に送るシグナルの大半は気づかれない」と理論を展開します。

ストレスと上手に付き合うには、内臓感覚に耳を澄ませ、ネガティブな思考や記憶を和らげること、つまり「脳腸相関」の障害を軽くするトレーニングが必要です。そのひとつにメイヤー氏はマインドフルネスを提案。腹式呼吸を行い消化器系の刺激に対して深い気づきを得られるようになると、効率よく情動をコントロールできるようになるとのこと。

アメリカの深刻な肥満問題に、
瞑想や断食を提案

肥満問題

本書では、アメリカの食生活についても書かれています。特に最近のアメリカでは肥満は深刻な社会問題となっており、食欲をコントロールする機能が不全になっていることが明らかに。これによって単なる肥満だけでなく、脳の慢性疾患にも結びついていきます。

そこでメイヤー氏が提案しているのは健康的な食生活だけでなく、瞑想や断食など、アジア圏では親しみのある健康法。こうした海外ならではの健康問題と、それに対する解決策の提案も目を引くポイントです。

メイヤー氏は、消化器系を最先端のスーパーコンピューターに例えています。腸内に存在する莫大な数の微生物は日々、脳の“ビッグデータ”に蓄えるための情報を送っているというのです。数多くの症例をもとに展開される腸のはたらきを見ていると、「排泄物を作るだけの場所」という腸のイメージが見事に覆される一冊です。

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