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腸ってスゴイ! 知られざる腸の働きと「腸内フローラ」の役割

テレビ番組や専門雑誌など、メディアで「腸の働き」について取り上げられる機会が増えています。近年の研究によると、腸の中にすむ膨大な量の細菌が、私たちの健康に大きく影響を及ぼすことがわかってきました。

ではいったい、腸はどのような働きをしているのでしょうか? 腸が持つ知られざる機能と、研究が進んでいる「腸内フローラ」について解説します。

膨大な数の細菌が生存競争

腸の中にはたくさんの細菌が生息しています。その数、なんと約100兆個。ヒトの体を構成する体細胞の数は約37兆個といわれていますので、その2倍以上です。その膨大な数の細菌たちが、腸の中で生存競争を繰り広げているのです。

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数百から千種類もいる腸内細菌と、小腸および大腸の腸管細胞などが相互に関係し合い、おなかの中にひとつの生態系を形成しています。
そして近年の研究では、腸内における生態系が私たちの健康に大きく影響を及ぼすことがわかってきました。

外来菌から守る仕組みも

そもそも腸は、どのような働きをしているのでしょうか。もっとも大切な機能は、栄養素の吸収です。食べたものはまず胃で消化され、おかゆのような状態になります。その後、たくさんの消化酵素とまざり合いながら分解され、腸管の吸収上皮細胞によって栄養素が吸収されます。

小腸の表面は絨毛(じゅうもう)と呼ばれるヒダに覆われており、その内側はリンパ管や毛細血管につながっています。栄養素はここから体内へ吸収され、血管を通して全身へ運ばれるのです。

未消化物を待ち構える腸内細菌。 ここで生まれる代謝物質がカギ

小腸で吸収されなかった水分と、食物繊維などの未消化物は、大腸へと送られていきます。大腸に生息する腸内細菌の数は、小腸の約1万倍。内部はまるでお花畑のようであり、その様子から「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。

腸内細菌は食物繊維などをエネルギー源としていますが、そのエサを分解する過程でさまざまな物質を作りだします。これを「代謝物質」といいます。
おもな代謝物質は、酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸と、乳酸などの有機酸。それらが腸管上皮細胞から吸収され、血液に取り込まれることで全身に送られます。

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この代謝物質が人間の健康と密接にかかわっていることが、近年の研究でわかってきました。たとえば、酢酸の働きは便通にも影響を与えています。今後も代謝物質の働きに関する新たな発見が生まれることになるでしょう。

腸内フローラのバランスがよければ健康?

腸内細菌がつくり出す物質は、酢酸のような体に良い作用を与えるものだけではありません。尿毒症物質など、健康に悪影響を与える物質も産生し、同じように腸で吸収され全身へとめぐります。

ではどうすれば、腸内フローラが良好な状態を保つことができるのでしょうか。研究が進む中でわかってきたのは、「腸内フローラは多様性が重要」であるということ。簡単にいえば、なにかひとつの菌だけが増える「一人勝ち」の状態になってはいけないのです。

多様性のバランスが崩れてしまうと、腸だけでなく全身に不調が起きる可能性があります。多種多様な細菌たちがバランス良く生息することによって、腸内の生態系が維持されているのです。

腸のサイエンス豆知識

これまで説明した以外にも、腸にまつわる話はいろいろあります。腸の豆知識を3つ紹介しましょう。

1.小腸はテニスコート1.5面分の広さ

小腸は十二指腸、空腸、回腸の3つによって成り立っています。絨毛のひだを含めて全部広げると、その面積はテニスコート1.5面分にもなるのです。消化管の大半を占める広い面積により、効率よく栄養素を吸収しています。

2.腸が脳に司令を送ることも?

腸はみずから判断して体の状態を一定に保とうとするなど、とても精密な働きをしています。さらに腸と脳は迷走神経でつながっており、内分泌細胞のホルモン分泌を介して腸から脳に指令を送ることもできます。
これらの機能から、「腸は第2の脳」ともいわれています。

3.世界ではじめて腸内細菌研究に着手したのは日本人

1953年、当時東京大学大学院生だった光岡知足(ともたり)先生が研究を始め、「腸内細菌学」という分野を確立しました。広く知られている「善玉菌、悪玉菌」の名付け親であり、ヨーグルトなどの機能性食品に関する研究も進みました。

腸はただ食べ物を消化するだけではなく、健康にとって非常に影響力の大きい臓器であることがわかってきました。言い換えれば、「腸内環境を良好に保つことは、健康的な生活を送ることにつながる」と考えてもよいでしょう。
今後のさらなる研究によって、腸のメカニズム解明が進むことを期待したいですね。

文責:森下仁丹

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