下痢や便秘がずっと続く「過敏性腸症候群」の症状や治療法を医師に聞いた

2018.08.14

ストレスや不安を感じると、おなかが痛くなる。下痢や便秘といった症状が長期間続き、おなかの調子が回復しない。そんな症状を感じたことはないでしょうか? もしかしたらそれは「過敏性腸症候群(IBS)」という病気が原因かもしれません。

おなかに不快感がある人の1~2割が罹患しているという過敏性腸症候群とは、どんな病気なのでしょうか。順天堂大学医学部附属順天堂医院・消化器内科の石川大先生にうかがいました。

順天堂大学医学部附属順天堂医院・消化器内科の石川大先生

順天堂大学医学部附属順天堂医院・消化器内科の石川大先生

過敏性腸症候群はどんな症状が出るの?

「過敏性腸症候群(IBS)」とは、おなかの不快感や痛み、張りのほか、下痢や便秘、またはその両方を数カ月以上繰り返す病気です。激痛などの強い症状はなく、ずっとぼんやりとした不快感がある状態が続きます。一過性の病気ではなく、一度治ってもまた同じ症状が出てきてしまうのも特徴のひとつです」

過敏性腸症候群の場合、臓器に潰瘍や炎症ができるなどの症状が見られないため、内視鏡検査や血液検査をしても異常は確認できません。しかし、胃腸に違和感を覚える人の約1割に過敏性腸症候群の可能性があるといわれるくらい、患者数の多い病気であることも事実。一般的に知られている過敏性腸症候群ですが、まだ解明されていないことも多いそうです。

同じおなかの不快感でも、激しい腹痛や多量の血便が出る場合は「潰瘍性大腸炎」の可能性が高いです。検査をしても目立った症状が見つからない過敏性腸症候群に対し、潰瘍性大腸炎には潰瘍(粘膜の組織欠損)ができるというはっきりとした所見が確認できます。

ともに腹痛や下痢などの症状があり、初期段階は非常に似ているそう。病気が進行すると、その症状は違いがはっきりしてきます。

とはいえ、潰瘍性大腸炎は難病に指定されている炎症性腸疾患です。「潰瘍性大腸炎の症状は突然悪化する場合がある」と石川先生も注意をうながします。急なおなかの痛みや便器が真っ赤になるくらいの多量の下血、血便が出た場合はすぐに医師の診断を受けるようにしましょう。

過敏性腸症候群はなぜ起こるのか

過敏性腸症候群はどうして起こるのでしょうか。「全てが解明されているわけではありませんが……」と前置きしたうえで、石川先生は続けます。

「研究の中で、過敏性腸症候群には自律神経の乱れが影響していることがわかっています。自律神経には心身を緊張させ興奮状態に導く交感神経と、リラックスさせ鎮静状態へ導く副交感神経があり、このふたつのバランスが崩れてしまうと腸の動きも乱れてしまうのです」

この自律神経の乱れにストレスが大きく影響することはよく知られており、石川先生も「過敏性腸症候群の原因のほとんどはストレスが関係していると考えられます」と指摘します。

自律神経はホルモンバランスの乱れも影響するため、閉経期や思春期世代の女性はとくに過敏性腸症候群の症状が出やすいそうです。とくに思春期の場合は体の成長とホルモンの影響により、気持ちが不安定になってしまうこともあります。通学途中に起こる腹痛やテスト期間中の下痢などの症状も、広義的には過敏性腸症候群と考えられます。

仕事や学校、人間関係など、現代社会に生きる人々は、多かれ少なかれストレスにさらされています。そういう意味では、過敏性腸症候群は年代や性別に関わらず、どんな方でも罹患する可能性が高い病気のひとつだといえます。

こんな症状になったら病院へ行こう

「私も過敏性腸症候群かも?」と思ったら、どのタイミングで医療機関を受診したらいいのでしょうか。その目安は「日常生活に支障が出たら」と石川先生が教えてくれました。

「たとえば、下痢を繰り返すことで通勤することが困難であったり、腹痛により大事な試験を休むことになってしまったり……。このような症状が日常的に出ているのであれば、それは何かしら胃腸の病気が影響している可能性が高いです」

胃腸の症状が心配であれば、無理をせずに医師に相談しましょう。

過敏性腸症候群を予防するには?

日常生活にも影響を及ぼす過敏性腸症候群、できることなら予防したいですよね。そこで、過敏性腸症候群になりにくくするヒントを石川先生に教えてもらいました。

「ストレスが大きく影響することは先ほどもお話しましたが、ストレスによって腸内環境が悪化しているのか、腸内環境が整うことでストレス耐性がつくのか、どちらが先に起こっているのかはまだ解明されていません。どちらにせよ、ストレスと上手に付き合っていく方法を身につけることは重要です」

過敏性腸症候群の対策として、日々の食事の内容が大きく影響することもわかっています。しかし、おなかにいいからといって食物繊維を過剰に摂りすぎたり、肉を一切食べなかったり、極端な食事制限は考えもの。腸内フローラは千差万別なので、何をどのくらい食べたらよいかはその人によって異なります。

一つの食材や栄養に偏るのではなく、多種多様の食材、栄養素を“バランスよく摂取する”ことが肝心です。

一方で、腸内フローラは遺伝的要素も大きく影響します。経膣分娩で生まれてきた赤ちゃんは分娩時にお母さんの膣から腸内細菌をもらいます。そして、3歳までの間に生活環境にいる常在菌を獲得し、そのふたつが合わさって腸内フローラの状態が決まります。

より強い腸内環境を育てるには、乳幼児期に清潔すぎる環境に身を置きすぎず、さまざまな菌に触れさせることもひとつの方法かもしれません。

過敏性腸症候群の治療法

予防はしていても、誰にでも起こりうる可能性のある過敏性腸症候群。罹患した場合、どのような治療をするのでしょうか?

「まずは整腸剤を服用し、食事指導をおこないます。それから、ストレスの原因になっていることから距離を置くようにするなどのストレスコントロールも有効な方法です。

ストレス要因が大きいと判断したときには、心療内科を受診するケースもあるそうです。ストレスの原因から離れ、症状に合った薬を飲むことでほとんどの人は回復します。

なお、過敏性腸症候群はプラセボ効果(心理効果により病気の症状が軽減すること)を得られやすい病気のため、お医者さんから「この薬が効くよ」といわれると症状が軽くなることもあるそうです。

また、胃腸にプロバイオティクスを届けるなど、腸内環境を整えることも有効な方法のひとつ。日ごろからヨーグルトなど整腸作用のある食品を摂ることも大切ですね。

多くの人が悩まされている過敏性腸症候群は、うまく付き合うことで改善していけることがわかりました。おなかの不快感が続くようなら、我慢せずほかの病気の可能性も考えて、一度医療機関を訪れることをおすすめします。

 

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