排便後にトイレの水を流したら、便器にうんちがこびりついたまま…。何回も水を流したものの、きれいにならない……。こんな経験をしたことはありませんか? 便器にこびりつく便は、掃除の手間が増えるばかりか、実は腸内環境の悪化が影響しているのかもしれません。そして、こびりつかずにすっきりと流れる便と、どのような違いがあるのでしょうか。便器を汚すうんちの特徴とともに、対処法を紹介します。
目次
便器にこびりつくうんちの原因は腸内環境にある

便器の汚れの原因となるうんちを知る前に、まずはこびりつきにくい“健康的なうんち”の状態をチェックしてみましょう。
- 黄色または黄土色
- バナナのような形をしている
- 臭いがきつくない
- お尻を拭いたあと、トイレットペーパーにうんちがつきにくい
健康的なうんちはほどよいやわらかさで、便器に接してもするりと滑るように水とともに流れてくれます。健康的なうんちが出ているときは、すなわち腸内環境が健康な状態に保たれている証拠といえます。
便器にこびりつかないうんちと、こびりつくうんちの違いはどこに
健康的なうんちの場合、組成の約80%を占めるのが水分です。残りの20%のうちの3分の2は腸からはがれた腸粘膜と腸内細菌、3分の1は主に食物繊維などの消化されなかった食べカスといわれます。腸粘膜は腸壁の一部を形成している粘膜で、表面には腸内細菌が棲みついています。腸粘膜の細胞は3日に1回のペースで生まれ変わり、腸内細菌のエサとなるのです。このようなうんちは、便器にこびりつきにくいと考えられています。
一方、うんちを構成する要素のうち水分量や腸粘膜の量が多くなると、便器にこびりつきやすくなるそうです。原因の一つとして挙げられるのが、肉食メインの食生活。肉に含まれる脂肪分が多かったり、その脂肪分を分解するために胆汁が過剰に分泌されてしまったりするためです。
乱れた腸内で起こっていることは…
うんちの水分量が多いのは「下痢」に近い状態。腸粘膜が多いのは「便秘」に近い状態といえます。つまり、こびりつきやすいうんちが出るときは、腸の状態が乱れている可能性が高いのです。
たんぱく質や脂質が多く食物繊維の少ない食事、夜更かしの続く生活、さまざまなストレスなどが原因で腸内に有害菌が増える一方、腸の健康を保つ有用菌の割合が低くなってしまうことで腸内フローラのバランスが乱れ、うんちの状態にも影響していると考えられます。
トイレをうんちで汚さないための対処法
トイレを汚さずにすませる方法には、即効性のある対策と、永続性のある対策との2種類があります。どちらも知っておけば、いざというときにも慌てずに対処できます。

すぐ使える!便器を汚さないテクニック
1つ目は、排便時に活用できるちょっとしたテクニック。トイレ前に便座をひと拭きしたトイレットペーパーを広げて便器の中に敷いておくだけで、うんちのこびりつきを軽減することもできます。
もしも公共のトイレを汚してしまった場合は、トイレットペーパーで汚れをさっと拭くなど、次に利用する人への心遣いも忘れずにしておくといいでしょう。いずれにせよ、排便後に慌てることのないよう、さまざまなアプローチを試してみてください。
ずっと便器を汚さないためには、健康な腸内環境を取り戻そう!
トイレを汚さないうんち、つまり健康なうんちを作るポイントはどこにあるのでしょうか。ポイントは腸内環境を整えることです。腸内フローラはおなかの調子を整えてくれる善い菌や、その反対の働きをする菌などさまざまです。この「おなかに善い菌」を増やすことが大切です。
そのために気をつけたいのが、日々の食事です。おなかの調子を整えるためには、以下のポイントを意識した食生活を送りましょう。
乳酸菌やビフィズス菌入りのヨーグルト、納豆などの発酵食品を摂る

プロバイオティクスとは、ヒトの体にいい影響を与える生きた微生物のことで、乳酸菌やビフィズス菌などはその代表格。摂取しても微生物は腸に定着しませんが、定期的に補い続けることで、おなかの調子を整えられます。
食物繊維を多く含む野菜中心の食事を摂る

食物繊維は、海藻類やゴボウ、オクラ、アボカドなどに多く含まれる「水溶性食物繊維」と、ブロッコリー、豆類、キノコ類などに多く含まれる「不溶性食物繊維」とに分けられます。
水溶性食物繊維は便をやわらかくして排便を促す働きがあり、不溶性食物繊維は水分を吸収して便を膨らませ、腸のぜん動運動を活発にします。さまざまな料理があるなかで、とりわけ適しているといわれるのは野菜を中心とした和食です。
適度な運動の習慣をつける

さらに、食事と同じく大切なのは適度な運動です。例えば、エスカレーターやエレベーターを使わずに3階ぐらいまでは階段を使う、軽いウォーキングをするなど、ちょっとした習慣を見直すことで“健康的なうんち”づくりに役立ちます。
腸を動かすツボ刺激
運動がしづらいときや、時間が取れないときには、腸のツボを刺激することで腸の動きをうながすとよいでしょう。代表的な腸のツボとして知られるのは、おへその横の「天枢(てんすう)」、天枢の外側に位置する「大横(だいおう)」、向こうずねと膝の間にある「上巨虚(じょうこきょ)」の3か所。詳しい場所はこちらの記事でご確認ください。
入浴後など、体が温まった状態で、リラックスした状態でゆっくりと指で押して刺激すると気の巡りが改善し、胃腸の調子やお通じをよくしてくれます。指での指圧のほか、お灸や針による刺激も効果的ですよ。
すぐに使える対処法と、体のなかからうんちの状態を改善する方法とを組み合わせ、こびりつくうんちに悩まない生活を送りましょう!
【参考文献】
辨野義己『整腸力 医者・薬いらずの体をつくる腸内改革』(かんき出版 2013年)
辨野義己『大便力 毎朝、便器を覗く人は病気にならない』(朝日新聞出版 2013年)
「腸内細菌と健康」(「e-ヘルスネット」 厚生労働省)