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腸内フローラ・腸内細菌叢って何? 善玉菌・悪玉菌と健康との関係とは

テレビや雑誌、そしてSNSなどで「腸内環境を整えることが健康につながる」という「腸活」の話題をよく目にします。「腸内フローラ」という言葉も注目を集めていますが、そもそも腸がどのような働きをしているか、きちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか?

腸内フローラとはいったいどういう意味なのか、また腸内フローラ・腸内細菌と健康とのかかわりについて、詳しく見ていきましょう。

もっとも腸内細菌が集まる「腸内」は、実は大腸!

腸内フローラ・腸内細菌叢って何? 善玉菌・悪玉菌と健康との関係とは

ヒトの消化器官は、口から肛門まで1本の管でつながっています。口から摂取したものは胃液や胆汁などによって分解され、腸で栄養素や水分が吸収されます。人間にとって必要不可欠な水分と栄養素を取り入れるための重要な器官なのです。この腸は小腸と大腸とに大きく分けられます。

小腸はさらに「十二指腸」「空腸」「回腸」の3部分に分けられます。胃で消化された食べ物をさらに分解し、栄養素を吸収する働きがあります。また小腸の長さは約7メートルと、からだの中で最も長い臓器です。

一方、大腸の長さは約1.5メートルで、「盲腸」「結腸」「直腸」に分けられます。大腸には、小腸で消化・吸収されなかった栄養分の残りから水分を吸収し、便を作る機能があります。作られた便はS状結腸にたまり、直腸を通過して排泄されます。

腸内には種類にして1,000種類以上、数にして約100兆個、重さにして1kg以上もの腸内細菌が棲みついています。しかし腸全体に均等に繁殖しているわけではありません。胃からの距離が近く消化液が届きやすい十二指腸では細菌の数は1グラム当たり1万個以下。胃から遠くなるに従って細菌数は多くなり、空腸〜回腸では1グラム当たり1,000万個以上になります。

さらに遠い大腸では酸素量が少なくなり、酸素を嫌う嫌気性の細菌が大幅に増殖し、1グラム当たり1,000億個程度にまで細菌数は多くなります。善玉菌の代表格であるビフィズス菌は酸素を嫌う細菌で、大腸に存在します。

よく聞く「腸内フローラ」とは同じ細菌の集団が複数集まった状態

腸内フローラ・腸内細菌叢って何? 善玉菌・悪玉菌と健康との関係とは

腸内に棲まう細菌は、やはり均等に分布しているわけではなく、同じ細菌同士が集まった集団が複数集まった状態で腸内に存在しています。その状態はさまざまな「同じ花の群生」が集まり、大きな花畑(フローラ)を形成する様子と似ていることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。

腸内フローラを構成する腸内細菌は、主に善玉菌(有用菌)・悪玉菌(有害菌)・日和見菌の3グループに分けられるといわれています。

善玉菌(有用菌)

消化吸収を助けたり、乳酸などの酸を作り、腸内環境をよくする働きをします。代表的なものとしてビフィズス菌やアシドフィルス菌・ガセリ菌などの乳酸菌などが挙げられます。中でもビフィズス菌は、赤ちゃんのときには腸内で優勢になりますが、離乳期以降は成人と変わらない数になり、高齢になると急激に減少することが知られています。

悪玉菌(有害菌)

炎症を起こしたり、有害な物質を作ったりします。代表的なものとして大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌など。

日和見菌

通常時はとくに害はありません。ただし体調の変化やストレスなどによって悪玉菌が増えると悪玉菌に加勢して、悪い作用を及ぼすことがあります。

腸内フローラは生活習慣や加齢、ストレスなどによって影響を受けるため随時変化しますが、健康な人の腸内フローラでは善玉菌が優勢となっていて、たんぱく質や脂質が多い食事、不規則な生活などによって悪玉菌が優勢になる状態が続くと便通異常をはじめとする、さまざまな体調悪化につながってしまいます。反対に善玉菌が優勢になると酢酸や乳酸などの酸が産生されて腸内の環境が酸性にかたむき、悪玉菌の増殖が抑えられます。

腸内環境、そして体の調子をよくするには、腸内細菌のバランスをよりよく保ち、善玉菌を優勢にすることが大切なのです。

腸内フローラは腸の働きと体の健康にも関係あり!

腸内フローラ・腸内細菌叢って何? 善玉菌・悪玉菌と健康との関係とは

腸内フローラのバランスが乱れ、悪玉菌が優勢になってしまうとどのような影響があるのでしょうか。

悪玉菌の増殖が便通異常の要因に

一つは便通異常です。悪玉菌の繁殖によって腸内で腐敗物質が生じ、その毒性によって腸管のぜん動運動が鈍くなると、消化物が腸内にとどまる時間が長くなり水分の少ない硬い便になってしまうのです。

反対に、悪玉菌によって生まれる腐敗物質を早く体外へと排出させようとしてぜん動運動が活発になり、大腸での水分吸収が不十分なゆるい便として排泄されることもあります。この状態が長く続いてしまうと、悪玉菌ばかりか善玉菌までも体外に流されてしまい、腸内環境の悪化につながります。

おなかの調子を整える食生活には
「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を

腸内フローラ・腸内細菌叢って何? 善玉菌・悪玉菌と健康との関係とは

腸内環境を整えるために重要なのは、食事の見直しです。たとえば、高脂肪・高たんぱく食をメインにした食生活を続けていると、胃腸で消化しきれない動物性脂肪やたんぱく質が悪玉菌のエサとなり、腸内環境を悪化させる原因にもなります。

おなかの調子をよくするためには、
・ぬか漬け、味噌、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品や善玉菌を含んだ食品(プロバイオティクス)
・野菜やキノコ類、海藻類など善玉菌のエサとなる食物繊維を豊富に含む食品やオリゴ糖(プレバイオティクス)
を摂ることを心がけるといいでしょう。

発酵食品の多くには乳酸菌が含まれています。摂取することで、腸内の善玉菌を増やすことにもつながります。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状になり、腸内で便をやわらかくします。不溶性食物繊維は水分を吸収して大きく膨らみ、便のカサを増して腸のぜん動運動をうながす働きがあります。

腸内環境は食事だけでなくストレスや生活習慣によって変化します。逆にいえば、食事や生活習慣を見直せば、腸内環境を改善することができるのです。

ふだんあまり意識しない腸の機能や働きを知った上で、発酵食品や食物繊維などを意識的に取り入れ、健康向上を目指しましょう。

【参考文献】
「ヒトの腸内にはどのような微生物が棲んでいるのですか?」「腸管免疫(gut immunity)」(腸内細菌学会WEBサイト)
「腸内細菌と健康」(厚生労働省「e-ヘルスネット」)
「生活習慣で乱れた腸内環境を整える方法」(健康長寿ネット)
国立がん研究センター「下痢・便秘がある方のお食事」

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