ラーメンとおなかの調子について、悩みを抱えている人は意外と多いもの。さまざまな悩みの中には「背脂がたっぷり入った、こってり系ラーメンを食べるとおなかの調子が悪くなる」「とんこつラーメンをお店で食べるたびにおなかの調子が変わってしまう」といったように、インスタントラーメンやカップラーメンは問題ないのに、お店のラーメンを食べたときだけ、おなかの調子が崩れてしまうケースもあるようです。
今回はお店のラーメン、特にとんこつラーメンを食べるとおなかの調子が悪くなってしまう理由について、久野銀座クリニックの岡村信良院長に話を聞きました。
目次
「硬めの麺」が原因か?

とんこつラーメンと相性がよいのが「硬め」の麺。一般的な「硬め」よりも、さらに硬い「バリ硬」、もっと硬い「ハリガネ」や「粉落とし」といったオーダーができるお店も少なくありません。麺と絡む濃厚なスープを堪能したいと、替え玉で硬めの麺を注文する人も多いのではないでしょうか。とんこつラーメンでおなかの調子が悪くなる理由に、もしかしたら「麺の硬さ」が影響しているのでは…。たしかに、茹でてやわらかくなった麺よりも消化が悪そうですし…。その推理について、岡村先生は次のように回答しています。
麺の硬さが変わっても含まれる成分は同じです。同様に、硬さに関わらず麺は胃や腸の中で十分消化されるので体への影響はそれほど変わらないと思います。
(岡村信良先生)
麺の硬さはどうやら因果関係は見られないようです。では次に考えられる原因は…。
麺に含まれる「かんすい」の影響?

ラーメン屋の麺は、お店のスープに合うように炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどアルカリ性の食品添加物を含んだ「かんすい」を使い、麺のコシを調整しています。かんすいを使うと、弾力性のある柔らかい麺になり食味も高まるのです。
ラーメンでおなかの調子が変わる理由の一つとして、かんすいがやり玉に挙がることもあります。しかし、岡村先生はこの“疑惑”についても否定的な見方を示されました。
人によっては、かんすいの影響で多少おなかがゆるくなることはあります。しかし、あくまでも多量に摂取した場合の話です。ラーメン一杯に含まれるくらいの量ですぐにおなかの調子が悪くなる可能性は低いでしょう。
(岡村信良先生)
ニンニクや唐辛子などのトッピングの過剰摂取は関係ある?

とんこつラーメンといえば、トッピングで味を変えられる楽しみもあります。すりおろしたにんにくをたっぷり入れたり、生にんにくをまるごと1個つぶし入れたり、あの辛さとニオイがとんこつスープの味にアクセントをつけてくれます。また、辛いもの好きの中には唐辛子をたっぷりのせる人も。
しかし、刻んだ生のニンニクには、あのニンニク臭の元となるアリシンが豊富に含まれ、また、トウガラシには辛味の成分となるカプサイシンが含まれています。アリシンやカプサイシンは過剰摂取するとおなかの調子を崩す原因になる可能性もあると言われています。ただ、「ニンニクだけ」「トウガラシだけ」で食べるわけではないので、直接の影響とは考えにくいといえるでしょう。
「グルテン不耐症」の可能性も!?

岡村先生の指摘には「自分がグルテン不耐症だと気づかず食べている人もいるかもしれない」という説もありました。麺の原材料の小麦に含まれるグルテンをうまく消化できない「グルテン不耐症」という体質の人がいます。
この場合、とんこつラーメンだけでなく、グルテンが含まれるパンやインスタントラーメンを食べたときにも、症状が出るはずです。
もし、ラーメンやパンなどの小麦粉を多く使った食品を食べたときに限っておなかの調子が崩れやすい、その程度がひどい場合には、医療機関で一度検査してみてもいいかもしれません。
一番の原因か?とんこつラーメンに含まれる油分が影響?

とんこつラーメンを食べた後のおなかの調子の変化について、原因になりそうな項目をいくつかあげましたが、岡村先生は「油分」が原因の1つになっている可能性を指摘します。
カップラーメンだと大丈夫なのに、お店のラーメンではおなかの調子が悪くなる場合、使われている油の量に原因があるのではないでしょうか。油分の多いものを食べると膵臓や胆のうが消化液を活発に出して、腸を刺激して動かします。その刺激でおなかがギュルギュルとゆるくなることはあります。特にとんこつや濃厚なスープには油が多く、刺激になることが多いと考えられます。
(岡村信良先生)
白濁色のとんこつスープは、一見、それほど油が多くないように思いがちですが、実は豚骨を煮込む過程でかなり油が出ています。また背脂を使っていることも多く、スープのなかには油分が多く含まれています。
体内で消化しきれない量の油を摂取すると、腸がすぐに体外へと排出しようとするのだと、岡村先生は言います。
「冷たい水」が影響?

さらに、岡村先生は「お店のラーメン」でおなかを下す理由として、意外なものを指摘しました。
油分や味の濃い調味料などの刺激に加えて、冷たい水の飲みすぎでもおなかの調子は悪くなりますよ。
(岡村信良先生)
冷たい水を一気に飲むことも、おなかへの刺激になります。脂が多い濃い味や辛いラーメンを食べておなかの調子を崩す人は、口の中を冷ますためについつい冷水を飲みすぎて、おなかへの刺激が増えすぎているのかもしれません。
岡村先生によると、ラーメンを食べることによるおなかの不調の、はっきりした原因を医学的に解明するのは難しいとのことでした。おなかの調子が崩れるかどうかは、アルコール分解能力と同じように、同じものを食べたとしてもかなり個人差があるようです。たくさん食べても大丈夫な人もいるし、そうでもない人もいるとのことでした。
“ラーメンでのおなかの不調”の原因は?
ではラーメンを食べたあとに発生するおなかの不調には、どのように対処するのがいいのでしょうか? ラーメンを食べるまではなんともなかったのに、食後の翌日に発生するおなかの不調のほとんどは消化不良によるものといわれています。
腸内に入った食べ物が吸収されにくいものだと、腸内の浸透圧が高まり、腸からの水分吸収が妨げられて、本来腸から吸収されるはずの水が腸に残り、水分の多い便として排出されてしまうのです。主なケースとしては、糖分の消化吸収がうまくいかないときや、人工甘味料の摂り過ぎなどで起こります。
“ラーメンでのおなかの不調”への対策は?
浸透圧性の腸の不調は、通常であれば1日〜2日程度で治ります。対策としては、以下の2点が挙げられます。
- よく煮込んだうどんやおかゆ、アイスクリームなど消化吸収のよい食べ物をとる
- 失われた水分と電解質をスポーツドリンクなどで補給する
実はラーメンは消化の悪い食べ物の代表格。おなかの不調が生じてしまったときは、腸の調子が戻るまで、とんこつラーメンはもちろんのこと、さっぱりとした薄味のラーメンも控えるようにしましょう。
ラーメンを食べてよくおなかの調子を崩す人は、ひとまず油やお店で飲む水の量などに気を配ったり、急いで食べるのをやめたりなど、ひと工夫することによって症状が改善するかもしれません。楽しいくおいしくラーメンを楽しめるとよいですね。
【参考文献】
一般社団法人 日本臨床内科医会『わかりやすい病気の話シリーズ42 下痢の正しい対処法』