仕事中や食事の最中に突然おならが出そうになり、がまんした経験がある人も多いと思います。出したくないのにおならが止まらなくなったり、おならの臭いがくさくなったりするのは、腸内環境や腸の状態・働きの悪化が考えられます。ぜん動運動が鈍くなることで、排泄物やおならとなる腸内ガスの排出がうまくいかず、腸内にガスがたまった状態「ガスだまり」が発生してしまいます。このガスだまりを防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
目次
おならが止まらない「ガスだまり」の状態とは?

おならのもととなるのは、食事の際に飲みこんだ空気と、腸内細菌が食べ物を分解したときに発生するガスです。この胃や腸を通った空気や、腸内で発生したガスが肛門から排出されたものが「おなら」です。
おならは通常、腸から血液中へと吸収されて体外へと排出されますが、空気を飲みこみすぎてしまったり、腸内でのガスの発生が増えすぎたりすると、排出が追いつかず腸内にたまってしまいます。これがガスだまりの状態です。下腹部がぽっこりと膨らんで目立ってしまったり、おなかが張って痛くなる膨満感を覚えたりするなど、外見も内側も困ったことになってしまいます。
そして、一番の困りごとがおならが止まらない状態になること。おならをしてもすぐに腸内にガスがたまって、また膨満感に悩まされることになります。
おならが止まらない「ガスだまり」状態の原因

止まらないおならや、臭うおならなどに悩まされがちな、ガスだまり状態の主な原因は、3つあります。
原因1:ストレスによる腸の働きの低下
腸の動きや消化をつかさどる、自律神経は体や心のストレスによる影響を受けやすく、ストレスが続くと正常に機能しなくなってしまいます。腸の働きは、副交感神経が優位になることで活発化し、ストレスにより神経の興奮が続くと副交感神経が優位な状態にならないためです。
吸収されるはずのおならが、腸の動きが鈍くなって腸内にとどまってしまうとガスだまり状態になり、おならとして放出される量が多くなってしまうのです。
原因2:括約筋の筋力低下でおならが止められない
肛門の周囲には「肛門括約筋(こうもんかつやくきん)」という、肛門の開閉を調節する筋肉があります。加齢などの理由によってこの筋力が衰えてしまうと、おならを止めることができず、おならが止まらなくなってしまいます。
原因3:腸内細菌の働きの活性化

腸内でガスが発生するのは、腸内細菌が食物を分解する過程でガスを生じさせるためです。悪玉菌が増えるとガスがたくさん出ると思われがちですが、実は善玉菌も悪玉菌もガスを生み出します。
善玉菌に分類される乳酸菌などは、糖質や食物繊維などの炭水化物を分解して水素やメタンガスなど、ニオイのないガスを発生させます。一方、悪玉菌が腸内で消化物を腐敗・発酵させると硫化水素やスカトール、インドールなどの臭気ガスが発生し、おならのニオイが臭くなります。避けたいのがこの臭気ガスの増加です。
肉などの動物性脂質や、たんぱく質の多い食事ばかりを食べ続けたり、夜遅い時間に食事をとることが続くなどの不規則な生活が続いたりすると、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ悪玉菌(ウエルシュ菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌など)の活動が優勢になります。
臭気ガスの発生量が増えてしまうとおならのニオイも臭くなります。くさいおならを我慢するようになると、いっそうガスが腸内にたまりやすくなってしまうのです。
腸のガスだまりを防ぐ対策は?
運動と睡眠で自律神経を整える

自律神経のバランスの乱れとは、すなわち「交感神経」と「副交感神経」のリズムがうまく切り替わらない状態です。日中は心や体を活発にさせる「交感神経」が活発になり、夜は心身を休息させる「副交感神経」が優位になって互いにバランスを取りながら、体や臓器の状態を調節しています。
腸の働きや動きが活発になり消化や吸収が促進されるのは副交感神経が優位のときです。寝不足などが続いて体内時計のリズムが乱れると、副交感神経が優位になる時間が短くなり、睡眠時のぜん動運動も少なくなって便通異常やガスだまりなどの不調をもたらしてしまうのです。
体内時計のリズムを整えて自律神経を正常化させるには、なるべく毎朝同じ時間に起床し、日中には太陽光を体に浴びたり、規則正しい時間に食事をとることを心がけましょう。また、適度な運動は血流を促進し腸の動きも活発化させます。なるべく30分以上の運動を生活の中に取り入れると、睡眠の質を高められ自律神経を整えることにも役立ちます。
括約筋のトレーニング

肛門を閉じる「括約筋」のうち、内肛門括約筋(内括約筋)は自分の意志では動かせず、自律神経によってコントロールされています。そのため睡眠時でも緊張していてしっかりと閉じられるのです。一方、お尻をキュッと締めようとしたときに動く外肛門括約筋(外括約筋)は自分の意志で動かすことができます。
外括約筋は周囲の筋肉と合わせて骨盤底筋群と呼ばれます。この骨盤底筋群を鍛える方法としては、
- できるだけ長く収縮させる
- できるだけ強く収縮させる
- 収縮と弛緩を素早く繰り返す
という方法があります。通勤時間やデスクワークの間にもできる簡単な動作ですので、おならの漏れが気になる前に鍛えておくといいでしょう。
食物繊維をしっかり摂ろう

食物繊維をしっかりと摂ると、腸内フローラを善玉菌が優勢な状態へと促せるほか、便の量が増えて便通がスムーズになり、腸内環境を整えることができます。ただし、食物繊維が分解される際にも腸内でガスが発生しますので、急に大量摂取をするとガスが増えてしまいます。1日の目標量(18~64歳で男性21g以上、女性18g以上)を目安に継続的に摂取するようにしましょう。
まとめ
ガスだまりが解消されれば、“困ったおなら”やぽっこりおなかの改善にもつながります。上手に対処して、おならの悩みを解決してください。
【参考文献】
「自律神経失調症」「食物繊維の必要性と健康」(厚生労働省「e-ヘルスネット」)
「運動とおなかの調子」(神奈川県衛生研究所WEBサイト)
正岡建洋「おならの原因」(キョーリン製薬『ドクターサロン』61巻11月号 2017年)
「肛門講座~痔の治療のための正しい知識~ 健康は快便から」(四日市羽津医療センターWEBサイト)