ダイエット中は食事の量が減るせいか、おなかの調子も変わりやすいもの。おなかがスッキリしないと、体が重く感じるだけでなく、実際に体重が増えてしまう人もいます。便がたまって1kg~2kg増えてしまった?! と感じれば、何とかスッキリしたいと考えるのも当然です。
しかし通常の排便の重量は500gもありません。ではお通じが滞ると体重が変化するのは何が原因でしょうか。今回は日本における腸内洗浄の第一人者でインナー美人アドバイザーである、斎藤早苗さんにお話を伺いました。
目次
美腸の専門家が指摘するのは「むくみ」と「おなか周りのサイズ」

そもそも「便の滞り」で体重は増えるのでしょうか?
一般的に1日の排便(1~3回)で出るうんちの重さは150g~250gといわれています。もし1週間排便がないと単純計算で1050g(150g×7回分)の便がおなかにたまり、体重が1kg以上増える計算になります。
しかし、体重の変化はそれほど重要ではないと齊藤さんはいいます。
もちろん、排便されないことで体重は増えますが、そもそも便通がよくない場合でも、朝と夜では1kgほど体重は変化しています。体重の増加については、あまり気にしすぎないほうがいいでしょう。
そして、体重変化よりも注意すべきなのは、水分が滞る「むくみ」と「おなか周りのサイズ」だと斎藤さんは指摘します。
排便が滞るとなぜ体の見た目に影響するの?

お通じの機会が減ることで、体内の水分が排出されず”むくみ”につながってしまいます。また、腸の動きが悪くなることで腸内に便やガスが滞ると、おなかが出たりウエストのくびれがなくなったりします。さらに、脂肪も燃焼しにくくなるんですよ。
便がたまると、その分だけ太るのではなく、体がむくむために腹囲の数値や見た目にも影響が出るというわけです。また、腸内の有害菌が増え、腸内フローラのバランスが乱れることで、栄養素が体内へ吸収されにくくなったり、お肌の不調につながることも。
キレイになるためのダイエットのはずが、やせないうえに肌荒れまで引き起こしてしまうのは困りものです。おなかの不調を解消するには、どのような対策をとればいいのでしょうか?
まずは食べるものを変えよう!

おなかの不調の原因としては、ダイエットによる「食生活」の変化。そしてストレスからくる自律神経の乱れも考えられます。便には体にとっての有害物質が多く含まれています。自律神経のバランスが乱れると、腸の動きが鈍り有害物質の排出ができなくなってしまいます。
血行も悪くなるので、むくみやすい体になり、ダイエットどころか体全体に負担をかけることに。そこでダイエット中でもおなかの不調にならない方法を齊藤さんに教えてもらいました。
便通改善の食事1:食物繊維を多く含んだ食材
食物繊維は大便を作るのに必要不可欠。食物繊維を多く含む食材を選び、効率的に摂りましょう。
具体的な食材としては「小麦ふすま(小麦ブラン)を使用した加工品」、「こんにゃく」「きのこ類」「豆類」などです。便のかさを増やしたり、腸内細菌のエサになるなどの役割がありますので、水溶性食物繊維も非水溶性食物繊維も積極的に食べるようにしましょう。
便通改善の食事2:便を押し出す炭水化物を適度に摂る
ダイエット中は控える方も多い炭水化物ですが、糖質は重要なエネルギーでもあります。とはいえ、食べすぎはよくありませんので、軽めに食べるよう意識しましょう。
最近では糖質オフダイエット用のインスタント食材なども販売されているので、有効活用してみてはいかがでしょうか。
ダイエットの方法として糖質(=炭水化物)制限を選ぶ人も多いですが、極端に控えるのではなく適度に摂るよう心がけましょう。ダイエットを意識しすぎて便の量を増やす役割のある炭水化物を摂取しないと、便を押し出せず、おなかの不調を誘発してしまいかねません。
便通改善の食事3:「○○だけ」はNG!量と栄養のバランスを重視
食事のバランスが崩れると腸の働きも弱くなってしまいます。おなかの不調に限らず、美しさと健康を保つためにもバランスの良い食事は大切です。
胃腸は食物を送る管ですから、食べる量が減ると胃腸の動きも低下してしまいます。食事量を減らして摂取カロリーを減らすのもダイエットのポイントですが、おなかの不調を防ぐためにも適度に食べることが大切です。
小腹がすいたときは、アンズやプルーン、イチジクなどのドライフルーツやヨーグルトを食べると◎。オススメのドライフルーツは、「砂糖をまぶさずに、果実だけを乾燥させたもの」「食物繊維の含有量が多いもの」とのこと。整腸作用があるといわれる「温リンゴ」も齊藤さんのオススメの一つです。
熟したリンゴ(赤い皮のもの)を一口大にカットして耐熱容器に入れ、ラップをして500wの電子レンジで2分40秒温めるだけ。香りもよく、おなかにもやさしいスイーツです。甘みを加えたいときは、オリゴ糖を少し足してもいいですよ。
青リンゴや黄色い皮のリンゴもありますが、温リンゴには赤いリンゴが適しているそう。とても簡単なのですぐに作ってみたくなりますね。
食事のタイミングも重要で、齊藤さんは腸内洗浄を行った際に次のように指導しているそうです。
まず、夕飯は18時までに済ませるのが理想。就寝時に胃を空っぽの状態にしておくと、睡眠中に腸内をそうじする強い動きが起こり、便が作られ、翌朝朝食を食べることで排便が促されます。このリズムを整えることは、ダイエットはもちろん、腸内環境を整えるうえでも非常に重要です。
とはいえ、仕事をしていると18時までに夕飯を食べ終えるのはなかなか難しいもの。そんなときは、19時くらいまでにメインとなる食事を済ませ、帰宅後は野菜スープなどを軽めに摂る「分食」がいいそうです。
次にむくみを解消しよう!

ダイエットと便通改善を両立させるためには、食事の改善とともに、むくみ対策にもいっしょに取り組みましょう。
太りにくい体を手に入れる「ちょこまか運動」習慣
おなかの不調にならずに体重を減らすには、食事はもちろんのこと、ちょっとした運動が大切です。「わざわざジムに通う必要はありません。エスカレーターではなく、階段を使うなど『ちょこまか運動』を日常的におこなってください」と、齊藤さんはいいます。
腸活マッサージで腸の動きを活性化
自宅で手軽にできる腸の活性化が、「マッサージ」と「ツボ刺激」です。腸のマッサージはおへそを中心に左右4本の指を重ねるように押し当て、ひらがなの「の」の字を書くように、腸の形に沿ってお腹の硬い部分をほぐします。食後すぐに行うのは避け、30分以上たってからマッサージしましょう。
ツボ刺激は、腸の血行を改善するツボを、指の腹を使ってゆっくりとやや強めの力で押すのがコツです。「大腸兪(だいちょうゆ)」「天枢(てんすう)」「大巨(だいこ)」の3か所が、腸の血行改善ツボの代表格(それぞれの場所はこちらの記事をご参考ください)。体が温まっている入浴中や、入浴後のリラックスタイムに押してみるといいでしょう。
入浴でじっくり腸を温める
疲れているときは、入浴だけでも腸活につながります。そのコツは「ぬるま湯(37℃~39℃)」で「10分以上ゆっくりつかる」こと。
副交感神経が刺激を受けて緊張がほぐれ、また副交感神経が優位になると腸のぜん動運動が活発化します。腸が動くと、腸内環境の正常化にもつながり便通改善にも役立ちます。
「やせるための生活=腸のための生活」と齊藤さんはいいます。腸内環境を健やかにして、太りにくい体を手に入れましょう!
【参考文献】
「うんちっておもしろい」(神奈川県衛生研究所)
「便秘と食事」(「e-ヘルスネット」厚生労働省)