腸内環境と便通が密接な関係にあることはよく知られていますが、便通改善のカギのひとつに、腸の活動が盛んになる「腸のゴールデンタイム」があることはあまり知られていません。
腸のスペシャリストで自律神経の研究の第一人者でもある順天堂大学医学部の小林弘幸教授によると、「腸にはゴールデンタイムがあり、腸のゴールデンタイムに注目することが大切」だと言います。
目次
副交感神経が活性化される時間帯が「腸のゴールデンタイム」
腸のゴールデンタイムの話をする前に、腸のゴールデンタイムを理解する上で重要な「副交感神経」について整理しておきましょう。腸のゴールデンタイムは副交感神経の働きと密接な関係があります。副交感神経とは、人がリラックスしているときに優位になる、自分の意思では動かせない神経で、腸の活動を活性化し、排便を促す神経でもあります。
そのため、副交感神経の働きが弱いとうまく腸が働きません。つまり、副交感神経が活性化される時間帯こそが腸のゴールデンタイムなのです。
腸には2つのゴールデンタイムがある!
それでは、具体的な腸のゴールデンタイムはいつなのか?についてみていきましょう。
腸のゴールデンタイムその1:夕食後の約3時間
食べ物を食べたあと、体は消化や吸収を行うために約3時間かけて副交感神経が活性化されます。そのため、この食後約3時間をリラックスして過ごし、副交感神経を優位にしておくと、腸での消化・吸収も盛んになり、便を排出する腸の働きをスムーズにすることができるのです。
腸のゴールデンタイムその2:午前0時あたり
副交感神経は、夕方から夜にかけて活性化し、午前0時あたりに活動のピークを迎えます。つまり、午前0時は腸の活動が最も盛んになる時間帯といえます。
腸のゴールデンタイムを制して便通を改善しよう!
では、この2つのゴールデンタイムをどう利用するのが、便通改善のカギになるのでしょうか?
最も理想的なのは午前0時までに寝ること
副交感神経の活性化は自分の意思では行えず、起きていると交感神経にスイッチが入るため、うまく切り替えができません。便通の改善を考えたときに最も理想的なのは、副交感神経の活動がピークを迎える午前0時までに寝て、腸の働きを活発にすることです。
寝る3〜4時間前までには夕飯を済ませる
また、副交感神経は食後約3時間かけて活性化されることから、寝る3〜4時間前には夕食を終えていることが理想です。夕食を食べてすぐ寝てしまっては、副交感神経が活性化されないまま寝ることになります。そうすると、食べたものを十分に消化・吸収できないため便通異常になりやすくなってしまいます。なお、夕飯後はリラックスして過ごし、副交感神経を優位にしておくと効果的です。
腸のゴールデンタイムは歳を重ねるごとにより意識を!
順天堂大学が行った「男女年代別の自律神経測定データ」によると、男性は30代、女性は40代で副交感神経の働きが大きく低下したとのこと。副交感神経は加齢と共にその働きが低下してしまうというデータもあるため、腸のゴールデンタイムも歳を重ねるごとにより意識していく必要があるともいえます。
また、加齢の他にも副交感神経のバランスが崩れる原因として、睡眠不足やストレスが挙げられます。現代社会において、ストレスフリーかつ十分な睡眠をとる生活を送ることは非常に困難です。現代人に便通に悩む人が多いのは、知らない間に副交感神経のバランスを崩しやすいことも原因と考えられるのです。
便通異常の原因はさまざまで、複数の要因が組み合わさり生じていることもあります。普段行っている便通改善法に加えて、腸のゴールデンタイムも今夜から意識してみてください。
【参考】
『やせる! 健康になる! コンビニごはんの選び方』小林弘幸監修 (主婦の友社)
自律神経の乱れが便秘を引き起こす その2|All About
腸にもゴールデンタイムがある|くすりのアップル
男女の平均寿命の差は自律神経が関係する?|医療プレミア