【専門家監修】「生きて腸まで届く」と何がいいの? 菌の働きと腸内にもたらす影響を解説

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ビフィズス菌や乳酸菌が含まれた商品などで「生きて腸まで届く」というフレーズを目にしたことはありませんか? なんとなくおなかにいいイメージがありますが、どういう状態で、どんな作用があるのかについては、意外と知られていません。

食べ物がカラダの中で変化する過程と合わせて、腸内で活躍する菌の種類や働きを見ていきましょう。

カラダの中に食べ物が入ってから出るまでに起きること

私たちが摂取したものは、胃で消化されたあと、小腸でさらに分解・吸収されます。このとき、たんぱく質はアミノ酸に、炭水化物はブドウ糖などの糖類に、脂肪は脂肪酸などに分解され、水分とともに吸収されたのち、3〜4時間ほどで小腸を通過します。

大腸では、水分、カリウム、ナトリウムなどの分解・吸収がおこなわれます。そして、小腸から送られた食べ物の残りかすから水分を抜いたものが、便として形成されます。便は、S状結腸にたまり、腸のぜん動運動によって直腸へと送り出されます。

このとき、水分が十分に吸収されないと下痢状の便になります。一方、便が排泄されないまま腸内に残った場合、次第に便は硬くなり、便秘になってしまいます。

有用菌、有害菌は体の中でどんな働きをするの?

口から入った食べ物が便になるまでの仕組みは変わりませんが、作られる便の質は、腸内フローラの状態によって異なります。

腸内フローラは「有用菌」「有害菌」「日和見菌」によって構成されています。有用菌は大腸にいい働きをする菌で、有害菌は悪い働きをします。日和見菌はどちらにも当てはまらない「未知の菌」ともいわれており、その働きについてはよくわかっていません。

腸内細菌の理想的なバランスは「有用菌2:有害菌1:日和見菌7」といわれていますが、加齢や食習慣、生活習慣などの影響により、バランスが崩れることもあります。

ビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌が優位に傾いているとき、腸内は弱酸性の状態に保たれています。その場合、便の色も黄色や黄土色になり、臭いもあまり強くありません。これが“健康的なうんち”といわれる状態です。

一方、腸内にウェルシュ菌や大腸菌などの有害菌が増えると、腸内はアルカリ性に傾きます。そして、有害菌が発生するアンモニアやインドール、スカトールなどの有害物質が、便やおならの臭いのもととなります。また、これらの有害物質は、疲労や肌荒れなど、さまざまな不調を引き起こしかねません。

有用菌を優位にするためには、腸内細菌の多くを占める日和見菌を味方につけることがポイント。野菜中心の食生活や生活習慣の見直しなど、腸内環境を整える生活を心がけることが重要です。

体にいい影響を及ぼさない有害菌ですが、仮にゼロになると、今度は有用菌や日和菌が有害菌のような働きをする場合もあるといいます。腸内環境のバランスを整える上では、有害菌も必要不可欠といえます。

「生きて腸まで届く」と一体何がいいのか?

腸内環境を整えるときに、重要な役割をするのが「プロバイオティクス」です。プロバイオティクスとは「生きて腸まで届き、体にいい働きをする微生物とそれを含む食品」のこと。ビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌が含まれたヨーグルトや発酵食品などが該当します。

ここで気になるのが、「体にいい働き」についてです。カギは、有用菌が腸内で産生する代謝物質にあります。ビフィズス菌はブドウ糖から酢酸や乳酸を、乳酸菌はブドウ糖から乳酸を作る役割を持っています。これらの物質には、以下の働きがあります。

・腸壁を刺激し、ぜん動運動を活発にするため、便通をうながす
・酢酸、乳酸により腸内が弱酸性に傾く。その結果、有害菌が増えにくくなる

生きて腸まで届いた微生物は、少しの間は腸内にとどまり、もともと大腸に棲んでいるビフィズス菌を増やします。生きたビフィズス菌や乳酸菌入りのヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取する際には、空腹時よりも食事を摂ったあとの方がいいでしょう。

このように、 “生きて腸まで届く”ビフィズス菌や乳酸菌を用いてこそ、腸内環境を整えることが可能なのです。

ビフィズス菌や乳酸菌が生きて腸まで届くとなぜいいのか。その理由や仕組みがわかると、腸内環境への意識や興味も変わってくるのかもしれません。以前よりも少しだけ意識的にプロバイオティクスを摂取して、おなかの調子を整えてみるのもいいですよ。

【参考】
『整腸力』(かんき出版)
『大便力』(朝日新書)

【監修者プロフィール】
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辨野義己先生
農学博士。国立研究開発法人理化学研究所辨野特別研究室(特別招聘研究員)。専門領域は腸内環境学、微生物分類学。日本人2万人の腸内細菌の構成と生活特性を用いたデータベースを構築している。著書に『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)、『大便通』(幻冬舎新書)、『整腸力』(かんき出版)『大便力』(朝日新書)、『大便革命〜腐敗から発行へ〜』(幻冬舎新書)など多数。

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