携帯トイレはなぜ必要? 災害時のトイレ、対策と心構え

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地震、水害、土砂災害などいつ起こるかわからない災害。“そのとき”の備えとして大切なものの一つが、トイレです。実際、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の際も、トイレのトラブルが多発したそうです。

では、私たちは何を備え、どんなことを心がけたらいいのでしょうか。トイレを通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動しているNPO法人「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんにお話をうかがいました。

災害時に起こるトイレのトラブル&悩み

排泄は、食事や睡眠と同様に大切なもの。災害現場のトイレトラブルと同様に知っておきたいのが、日頃何気なく使っている“トイレ”についてです。

「まず大前提として、ふだん私たちが使っているトイレは“システム”ということを知っていただきたいです。電気、給水、排水というインフラに加え、最もプライベートで安心できる空間であること、これらが全て整うことで快適に使用できるのです」と加藤さんはいいます。

つまり、インフラが一つでも止まってしまうと、水洗トイレは使えなくなってしまいます。
実際に、阪神淡路大震災のときにはトイレが汚物で溢れ、「トイレパニック」という言葉も生まれました。トイレが不快、もしくは不便だと、おもに以下の2つのトイレ問題が起こります。

1.トイレが汚い、暗くて怖いという理由でトイレに行く回数を減らそうとし、食事や水分を控える。それが原因で、脱水症状や膀胱炎など体調を崩してしまう。エコノミークラス症候群や心筋梗塞などの発症にもつながり、最悪死に至る。
2.劣悪な衛生状態となり、胃腸炎などの感染症が蔓延する。

震災により停電になれば、トイレの電気もつかなくなるため、安心できる空間とは程遠いものになります。真っ暗ななか、屋外の仮設トイレに行くのは怖いので、我慢してしまうと思います。

「高齢者や障がい者、子どもたちに配慮することはもちろんですが、20~40代の人は自分の体力を過信しがちです。災害時は過緊張により免疫力が低下します。また、下痢になったり、嘔吐することもあります。一人ひとりが自分をケアすることも大切です」と加藤さんは注意を促していました。

大きな地震の後に水洗トイレを使用してはいけないの?

ところで、大きな地震があった場合、私たちは何をすればいいのでしょうか?

「大きな地震の直後は、水洗トイレで排泄をしてはいけません。まずは携帯トイレ(災害用トイレ)を便器に設置してから排泄するようにしましょう。トイレが今まで通りに使えるかどうか確認するのは、それからでも遅くありません」と加藤さんは警鐘を鳴らします。

なぜそうしなければいけないのか? もしその水洗トイレが使えなかった場合、排泄物を流すこともできません。そして、排泄物をトイレの中から取り除くのは、とても難しいからです。

また、排水管が壊れているのに無理に流してしまうと、排水管が詰まってしまい汚水が溢れたり、逆流する可能性もあります。自宅のトイレが使えないことはもちろん、マンションなどの集合住宅であれば、階下への水漏れなどの原因にもなりかねません。

災害時に備えてふだんからやっておくべきこと

私たちは災害時のトイレ問題に対して、日ごろからどんなことに心がければよいのでしょうか? 加藤さんがとくに重要だと考えるのが、家庭でのシミュレーションです。

<シミュレーション内容>
・携帯トイレを開封して使ってみる。
・家族の排泄量、トイレの回数、災害時に不安なことを話し合っておく。
・携帯トイレのゴミ回収方法、保管の仕方を調べておく。
・自治体のインフラ復旧日数を調べておく。

携帯トイレは、製品によって仕様が異なります。災害時に慌てないためにも、一度開封して使ってみることが大切です。自分にとって使いやすいのかどうかも含めてチェックしましょう。

また、家族の1日の排泄量と回数、そして自治体のインフラ復旧日数を知っておくことで、携帯トイレの必要数を把握できます。昼間は屋外の仮設トイレやマンホールトイレを使い、夜間は携帯トイレを使うなど、家族ルールを決めておくのも有効な方法です。

自治体のゴミ回収の方法や使用済み携帯トイレの一時的な保管場所も確認すべきことの一つ。防臭しているとはいえ、室内での保管はストレスの一因になる可能性も。ベランダや庭など、置き場所を家族で話し合っておきましょう。

「ちょっとしたことですが、トイレの上部にある棚に重いものを置かないことも大切です。地震でそれが落ちてしまうと、便器が壊れてしまい、せっかく用意した携帯トイレを設置できなくなる可能性があります」

「自宅のトイレは安心できる空間として維持しなければならいない場所」と加藤さん。身の周りのことが大きく変化する災害時は、性別年齢問わず過度なストレスがかかっている状態です。考えなくてはいけないこともたくさんあるため、心配事は一つでも減らしておきたいもの。そんなとき、トイレが平常時に近い状態で使用できれば、安心感も得られます。

いざというときに慌てないためにも、備えは必要です。家族との話し合いやシミュレーションなど、できることから始めてみましょう。

【取材協力】

profile
NPO法人日本トイレ研究所代表理事 加藤篤
まちづくりのシンクタンクを経て、現在、特定非営利活動法人日本トイレ研究所代表理事。野外フェスティバルや山岳地などにおけるトイレ計画づくり、災害時のトイレ・衛生調査の実施、小学校のトイレ空間改善、養護教諭を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業を展開。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、災害時にも安心して行けるトイレ環境づくりに向けた人材育成に取り組んでいる。日本トイレ大賞(内閣官房)審査委員、避難所の確保と質の向上に関する検討会・質の向上ワーキンググループ委員(内閣府)、徳島県災害時快適トイレ計画策定検討委員(徳島県)も務める。
おもな著作文等に、『うんちさま』絵本(金の星社)、『四快のすすめ』(共著・神山潤編)(新曜社)、『元気のしるし朝うんち』(共著)(少年写真新聞社)がある。

日本トイレ研究所:https://www.toilet.or.jp/
災害用トイレガイド:http://www.toilet.or.jp/toilet-guide/

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