やせて低体温はカッコ悪い! 女子大生が取り組む「女性の健康プロジェクトに迫る!」<後編>

やせて低体温はカッコ悪い! 女子大生が取り組む「女性の健康プロジェクトに迫る!」<後編>

慶應義塾大学SFC研究所 渡辺賢治研究室が手がける「女性の健康プロジェクト」のコンセプトや目的などをお聞きした前編

続いて後編では、同研究室のプロジェクトメンバーが研究の一環として作成した「女子学生向け基礎体温記録手帳『BEAUTY&HEALTH DIARY』」のポイントや、研究成果について、慶應義塾大学 SFC研究所上席所員 /総合政策学部講師(非常勤) 本田 由佳先生、総合政策学部 上﨑彩絵さん、環境情報学部 金子紗由香さんからお話を伺いました。

女子大生の目線で作った基礎体温記録手帳「BEAUTY&HEALTH DIARY」

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右から本田由佳先生、金子紗由香さん、上﨑彩絵さん

――基礎体温記録手帳を作ったきっかけを教えてください。

金子:プロジェクトメンバー4人で「どうやったら基礎体温を記録するきっかけを作れるだろう」と話し合った時に、「おしゃれだったり、かわいかったりすれば、興味を持てるのでは?」と考えて、今回の手帳を作り始めました。

――手帳に描かれている猫のイラストには、どんな意味があるのでしょうか?

金子:月経周期全体を「cat」、月経期間を「kitty」という名称にすることで、全体のテーマキャラクターを猫にしたんです。月経(cat)は、キラキラするような美の期間として考え、毎月の周期が経るごとに女性としてきれいになっていく。さらに年齡とともに積み重ねることで、輝くような女性になっていくというイメージにしました。
月経期間(kitty)は、ホルモンバランスが崩れることで起こる不調を、子猫がいたずらをするようなイメージとして捉え「この時期は子猫のようにやんちゃになってしまうけど許してね」という意味を持たせています。

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――手帳には透明のシートがついていますが、こちらはどのような使い方をしますか?

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金子:これは基礎体温チェックシートで、月経による体温変化を表す3本のラインがプリントされています。
それぞれ、低温期と高温期が正常な“二相性パターン”のライン、高温期がない“無排卵パターン”のライン、低温期と高温期それぞれ短い“黄体機能不全パターン”のラインを表しているのですが、基礎体温の記録の上にこのシートを載せることで、自分の基礎体温のパターンがどれにあてはまるか、確認できるようになっています。

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本田由佳先生(以下、本田):排卵期は性交渉においてもデリケートな時期ですから、学生にもぜひ認識しておいて欲しいポイントです。
シートには猫がジャンプするイラストが描かれており、ジャンプする直前の体温が一番低くなる時に排卵があると言われています。排卵後はプロゲステロンという女性ホルモンの影響で体温が上がり(高温期)とても体力を使うことを意味しています。この時期は、月経前緊張症(PMS)といって、心も体も不調を起こす方も多いのですが、辛い時は無理をせず過ごしたり婦人科へ相談に行ったりする、ひとつの指標にして欲しいですね。

金子:基礎体温の記録にスマホアプリを利用する人も多いのですが、手軽である一方、画面が小さく体温変化が分かりづらいというデメリットがあります。この手帳は持ち歩きもしやすく、体温変化が分かりやすいA5サイズで作りました。また、病院へ持って行った時、お医者さんにも見やすいようになっています。
多くの女性は書く作業が好きなので、この手帳をさらにかわいくなるよう、工夫する楽しみを持たせつつ健康管理ができるようにしました。

――実際に使ってみて、使い心地はいかがですか?

上﨑:もし、記録を忘れてしまっても、また翌月から記録が再開できるので、自分のリズムで続けられる点がうれしいですね。カレンダーも付いているので、月経周期を照らし合わせ、体調を考えながら予定を組むことができます。予定ありきで動くのではなく月経周期で動くことで、自分に対して優しくなれました。

金子:私は、手帳を付けることで月経がアラーム代わりになり、月ごとに自分の体調を見つめ直すきっかけになっています。

基礎体温記録手帳による研究で分かった女性に大切な「健康」とは?

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――この基礎体温記録手帳を利用した研究の内容を教えてください。

金子:高校生と大学生に配布して1カ月~3カ月ほど使ってもらい、基礎体温の統計とアンケート調査、栄養調査を実施し、その結果をもとに、ヘルスリテラシーについての意識解析をしました。その結果、ヘルスリテラシーの向上には、女性ホルモンに対する教育が重要だと分かったんです。

上﨑:私の場合は、基礎体温に個人差があることに着目し、その差が栄養や体格、運動量に関係しているかどうかの解析をしました。低温期の3日間の平均体温を計測したのですが、タンパク質の摂取量と運動量が多い人ほど、体温が高いことが分かりました。

本田:今まで個人差のある体温については、あまり言及されてきませんでした。中高生の低温期の平均は何度なのか、また低温期の中でも体温が低い人の割合はどれくらいかなど、全体の平均値には注目されていなかったんです。そこで、月経が始まって5日間の平均体温を低温群(36度未満)、中温群(36~36.5度)、高温群(36.5度以上)の3つに分けて、割合を計測する調査も行いました。

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上﨑:今回の集団の体温平均は36.2度前後であることがわかりました。また全体の約17%が低温群、約57%が中温群、約23%が高温群という結果になりました。
さらに、生活習慣の調査も行ったところ、高温群の人のほとんどが朝食を食べている一方で、低温群では食べていない人が多かったのです。

本田:この調査から、摂取エネルギーと栄養素の違いが体温にあらわれているのではないかという推測ができますよね。

上﨑:他にも、高温群の人はタンパク質をたくさん摂取している傾向がある一方で、低温群の人は摂取が少なく、さらに運度量についても低温群の人はほとんど運動していないという結果も出ています。

本田:今後はさらに詳しい研究もすすめていきたいと思っています。
日本人はとにかく体重に固執しすぎる傾向が強く、若い女性は特にダイエットとして体重を落とすことに一生懸命です。しかし、体重に固執して体重を落とすと体温が下がり不健康に…。しっかり食べて、筋肉をつけると体温や基礎代謝も上がり、太りにくい体ができることを学生さんとともに実証していきたいと思っています。体温が高いことは、妊娠についてもメリットがあるといわれていますから、今後若い女性が体重ではなく体温に着目するようになればいいなと思いますね。「やせていて体温が低い女性はかっこ悪い! 適正体重、適正体脂肪、適正な体温が一番かっこいい!」という指標に変えていきたいです。

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体型を気にするあまり、体重という分かりやすい部分に注目しがちですが、本来の美しさを考える時には、目に見えにくい内側の部分に注目することが大切です。また、「月経はわずらわしいもの」という印象がありますが、女性が自分の体調を見つめ直すきっかけになるというポジティブイメージを持つことで、生活の質や美意識の向上にもつながりそうです。

【取材協力】
本田由佳
慶應義塾大学SFC研究所 健康情報プラットフォーム・ラボ
上席所員/総合政策学部講師(非常勤)/健康科学者/博士(医学)
横浜生まれ。一児の母。ワーキングマザー歴20年。元東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学分野客員研究員。
自ら経験した極端なダイエット、妊娠・出産・子育てがきっかけで女性健康科学者となった。2012年7月まで株式会社タニタ開発部研究員として、女性や子ども、プロサッカーチーム選手の身体組成の研究、睡眠計の開発等を行った。現在はICTを用いた健康情報管理システムの研究をしている。夢は「女性と子どもの健康力をあげて日本を元気にすること」。著書に「ママと赤ちゃんにやさしい 産前・産後のボディケアとビューティーメソッド」(あさ出版)「価値創造の健康情報プラットフォーム:医療データの活用と未来」( 慶應義塾大学出版会)がある。
現在は、日本第一号 健康科学者として、女性の健康全般に関する研究を大学で実施している。

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