発酵食品の専門家・高橋香葉さんに聞く(前編) 「日本の発酵食の魅力」とは

発酵食品の専門家・高橋香葉さんに聞く

私たちが慣れ親しんでいる味噌や醤油の他にも、チーズやキムチなど、世界中にはさまざまな発酵食が存在します。今回は、日本の発酵食の素晴らしさを広めるためにさまざまな活動をしている高橋香葉さんに、発酵食の魅力についてお聞きしました。

――高橋さんが発酵食品に興味を持ったきっかけを教えてください。

発酵食品の専門家・高橋香葉さんに聞く

高橋:以前はIT企業で全国を走り回る多忙な生活を送っていました。食事はもっぱらコンビニで買えるもので、睡眠は数時間。そんな暮らしをしていた時に、やっと取れた有休を使って、千葉県にある醤油蔵を訪れたんです。

そこで職人さんの話を聞きながら製造過程を見学しました。最後に醤油の味比べをさせていただき、それぞれの味がまったく違うことにとても驚きました。それと同時に、これだけ広大な土地の中で、1年かけて発酵して、絞って、加熱をして殺菌をする。いったいどれだけの先行投資の上に、日本の発酵文化が成り立っているのだろうかと思い始めたんです。職業病ですね(笑)。

そのとき、味噌蔵や醤油蔵がどんどん潰れていっていることを知り、このままでは日本の素晴らしい伝統的な食文化がなくなってしまうのでは、と不安を覚えて守りたいという気持ちが芽生えたんです。

――旅行で訪れた醤油蔵がきっかけで、現在の活動が始まったんですね。

高橋:はい。その後、どんどん日本の食文化に興味が湧いてきました。そして、私が多忙だった時に食べていたコンビニの食事が、キムチや納豆といった発酵食品だったことに気付いたんです。あれだけの忙しい生活を乗り切れたのも、知らず知らずのうちに食べていた発酵食品のおかげでしたね。

――高橋さんが思う発酵食品の魅力とはどんなところにありますか?

高橋:自宅でも外食でも、いつでも気軽に取り入れられるところでしょうか。日本には古くから発酵食文化が根付いているので、どんな土地にもその土地の風土や文化から発達した発酵食品が存在します。ですから、旅行に行った時などに、その土地の歴史と密接につながっていることを学びながら、発酵食品を楽しんだりすることもできるんですよ。あとは、自分で発酵食品を作ることで、発酵の醸し出す旨みが高まる過程や味の違いを楽しむのも面白いと思います。

――自宅で作れる発酵食品だと、どんなものがありますか?

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高橋:一番手軽で楽しいのは梅酒。「梅酒って発酵食品なの?」と疑問に思われるかもしれませんが、梅酒に使うアルコール類が発酵の中でも「醸造」というものになります。
通常ならホワイトリカーを使用しますが、ブランデーを入れるとコクと甘みが出るんですよ。漬けた後の色の移り変わりや、氷砂糖が溶けていく様子も、見ていて飽きません。それに、アルコールの配合を毎年変えるなどして、「自分好みのオリジナル梅酒」を追求できるのも楽しいです。今年仕込んだ梅酒が、ちょうどこれから飲み頃を迎えます。
また、これからの真夏におすすめの自宅で作る発酵食品は、塩麹と醤油麹(しょうゆ麹)です。この日本の夏の暑さが、一番おいしく発酵を促してくれる時期なんです。

――発酵食品には、味わう以外にもさまざまな楽しみ方があるんですね。ちなみに、海外と日本の発酵食品には違いがあるのでしょうか。

高橋:発酵の定義は、微生物の働きによって成分が変化し、栄養が高まったり旨みが増すなど、人の体にとって良いものに変化することです。その点では海外でも日本でも違いはありません。海外の発酵食品としては、魚の成分が入ったナンプラーや、中華料理の調味料であるXO醤、韓国のコチュジャンなどが代表的ですが、実はチョコレートやバニラビーンズなども発酵食品なのです。発酵食品と一言で言っても、それぞれの国に根付いた菌と文化によって、かなり雰囲気が変わりますよね。

――海外の発酵食品と言うと、ヨーグルトやチーズなどのイメージがありましたが、チョコレートも含まれるとは意外でした。発酵食品のスペシャリストである高橋さんが、現在一番注目している発酵食品はありますか?

高橋:今は乳酸菌に注目しています。乳酸菌とは総称であって、さらに細分化されているのですが、自分と相性の良いものはどんなものか、腸内まで届く乳酸菌はどれかなど、色々試しています。

発酵食品は乳酸菌ひとつ取っても奥が深いものですが、そのぶん、楽しめる要素がたくさんあるのも魅力的ですね。次回は、自宅でできる発酵食のレシピやおすすめの発酵調味料についてお聞きします!

<後編に続く>

【取材協力】
高橋香葉(たかはし かよ) 発酵料理研究家
http://takahashikayo.blog.fc2.com/

「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。現在も、日本全国の蔵を回り勉強を続けている。米麹の香りから、作り手の性格が分かるなどの特技を持つ。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。

主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等

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