発酵学の第一人者が語る、驚異の微生物パワーとは? 『超能力微生物』【書籍紹介】

小泉武夫『超能力微生物』(文藝春秋)ブックレビュー

目に見えない微生物は、日常生活で特に意識することのない存在です。しかし、晩酌で楽しむお酒や朝ごはんの定番である納豆や味噌などの発酵食品は、微生物なしに語ることができません。

発酵食品がブームになり、微生物のもつパワーを耳にする機会も増えたかもしれません。しかし、私たちが知っている微生物はごく一部のよう。地球上にはまだ未知の微生物が数多く存在しているそうです。

人間の想像を超えたパワーをもつ微生物たち

『超能力微生物』(文春新書)は、発酵学や醸造学を専門とする東京農業大学名誉教授(農学博士)、小泉武夫氏による書籍。

すでに発見されている超能力のようなパワーをもった微生物から、世界の微生物グルメ、今後の可能性まで、微生物について網羅的に知ることができる一冊です。

小泉武夫『超能力微生物』(文藝春秋)ブックレビュー

100℃以上の高温や超高濃度の塩水(死海)、強酸や強アルカリ、高レベルの放射能といった過酷な状況にも耐えることができる微生物たち。驚くべきパワーをもつ微生物が次々と発見されている一方で、いまだ発見されていないものも多数存在するそうです。

世界一食欲がわかない発酵食品

地球上で最も珍しい発酵食品をご存じでしょうか。本書によると、石川県で作られている「フグの卵巣の糠漬け」がそれにあたるそうです。

江戸時代から作られている発酵食品で、微生物の働きによりフグの卵巣に詰まっている猛毒を抜くという特殊な方法が用いられているのだとか。食べられるまでに3~4年かかるそうですが、濃厚で絶妙な風味とのこと。お茶漬けで食べるのがオススメだそうです。

発酵食品は独特な匂いも特徴のひとつ。スウェーデンには、世界一臭い食べ物といわれる「シュール・ストレミング」という魚の缶詰があります。また、エイを発酵させた韓国の「ホンオ・フェ」は、強烈なアンモニア臭を放つのだとか。

小泉氏はこういった強烈な臭いを放つ発酵食品も食べており、その様子を紹介しています。おいしいものもあるようですが、臭いに耐えられず、ときには涙を流しながら食べることもあるようです。

微生物のもつ無限の可能性

科学の進歩により、遺伝子組み換えやゲノム編集が盛んにおこなわれています。人為的にDNAを組み換え新たな生物を作るというのは、ロマンがあるように感じられるかもしれません。

一方で、最新のバイオテクノロジーにより安全性や倫理的な価値観が失われていく可能性があるのも事実です。

地球上には未知の微生物が数多く存在します。人間が求める能力をもつ微生物を活用すれば、安全性や倫理的価値観も損なわれず、最新の設備を用意する必要もないそうです。地球上の微生物にはまだまだ可能性が眠っているのです。

これまで微生物の能力については、「発酵食品を食べるとお通じが良くなるんでしょ?」といったイメージしかありませんでした。しかしこの本を読んで、あらゆる過酷な環境下でも生き抜く微生物たちのパワーを知るとともに、微生物を利用し発酵食品を生み出してきた人々の知恵に驚かされました。

微生物の内なる可能性を感じられる一冊です。


【参考】
『超能力微生物』 小泉武夫著 (文春新書)

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小泉武夫『超能力微生物』(文藝春秋)ブックレビュー

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