なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがするの?

赤ちゃんが母乳やミルクを飲み始めてしばらくすると、うんちが酸っぱい臭いに変わってきます。独特の臭いなので「どこか調子が悪いのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。

でも、それは授乳期の赤ちゃんにはよくあることで、基本的には安心していいことなのです。しかし、気になる方も多いでしょう。ここでは赤ちゃんのうんちがなぜ酸っぱい臭いがするのかを解説します。

赤ちゃんのうんちが酸っぱい臭いになる理由

なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがするの?

なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱいにおいがするのでしょうか。その秘密は授乳期の赤ちゃんだけの「特別な腸内環境」にあります。ひと言でいえば「ビフィズス菌が酸っぱいにおいの元をたくさん作っているから」です。

うんちの臭いは腸内細菌の働きに影響を受けます。赤ちゃんのうんちに甘酸っぱいヨーグルトのような臭いを感じたことはありませんか? 実はその臭い、腸内にビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌がたくさんいる証拠です。

母乳やミルクだけを飲んでいる頃の赤ちゃんの腸内細菌のほとんどは、有用菌のビフィズス菌が占めています。酸っぱい臭いが強いうんちになるのは、ビフィズス菌から酸性の「乳酸」や「酢酸」が生成されているためなのです。牛乳が乳酸菌やビフィズス菌によってヨーグルトになるときにも、乳酸や酢酸は生成されます。だからヨーグルトのような酸っぱい香りになるのですね。

腐った感じの酸っぱい臭いがある、下痢の場合は要注意!

なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがするの?

実は、赤ちゃんのうんちの「酸っぱい臭い」には2通りあり、ひとつは先ほど紹介した甘酸っぱいような臭い。もうひとつは鼻をつくような腐った感じの酸っぱい臭いです。どちらも酸っぱい臭いですが大きな違いがあります。

下痢の場合で、甘酸っぱい臭いとは明らかに違う、鼻をつくような腐った感じがする臭い(卵がくさったような臭い/硫黄の温泉のような臭い)がしているときは、かぜやその他の感染症などが疑われます。

ただし、うんちの臭いだけで判断するのは早計です。うんちの色や赤ちゃんの機嫌や体調、嘔吐の有無、下痢が始まった時期や時間や回数、食欲などを観察しておき、医師に説明する際の情報として記録しておくといいでしょう。便のついたおむつを医師に見せるのも役立ちます。

白っぽく水状の便になり下痢を繰り返すなど、明らかにいつもと違う様子があれば、早めに小児科を受診して医師に相談してみましょう。

赤ちゃんの腸内環境はどう変わっていくのか?

うんちが酸っぱい臭いなのは、授乳期の赤ちゃん特有のものです。では、生まれてから離乳期を経て、大人と同じ食事をとるようになるまで、赤ちゃんの腸内環境はどのように変わっていくのでしょうか。その変化を解説していきましょう。

・授乳期の腸内細菌の約90パーセントはビフィズス菌

なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがするの?

母親のお腹の中にいるときの赤ちゃんの腸内は無菌状態といわれていますが、出産時に母親の体の細菌が赤ちゃんの口などを通じて体内に入ったり、授乳によって腸へと届くことで、赤ちゃんの腸内に細菌が繁殖していくと考えられています。そして、生後2~4日で赤ちゃんの腸内ではビフィズス菌が急速に増えていきます。

なんと、母乳やミルクだけを飲んでいる時期の赤ちゃんの腸内細菌は、約90パーセントが有用菌のビフィズス菌といわれており、この時期の赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがします。

ビフィズス菌が増える理由は、まだ詳しく解明されていませんが、母乳や乳児用粉ミルクに含まれる「ヒトミルクオリゴ糖」がビフィズス菌を増やす要因になっていると指摘されています。オリゴ糖は他の哺乳類の乳にも含まれていますが、ヒトミルクオリゴ糖は他の哺乳類の乳のオリゴ糖よりも複雑な組成を持っています。

例えば、牛乳のオリゴ糖のほとんどは乳糖(ラクトース)ですが、ヒトミルクオリゴ糖はフコシルラクトース(ラクトースとフコースが結合したもの)です。これが母乳に含まれているため、赤ちゃんの腸内にビフィズス菌が増えていきます。粉ミルクにはビフィズス菌などが増えるように調整されたオリゴ糖を配合し母乳の成分に近づけているため、同じようにビフィズス菌を増やせるのです。

・離乳食が始まると有用菌の割合が減少し、有害菌が増える

なぜ赤ちゃんのうんちは酸っぱい臭いがするの?

生後5~6カ月ごろになり、離乳期になると、ビフィズス菌の割合は相対的に減り、大腸菌やレンサ球菌、ウェルシュ菌などの有害菌が増えていきます。

離乳食が終わり、幼児食や大人と同じような食事ををとるようになる2〜3歳ごろになると有害菌の割合はさらに高まり、大人と変わらない腸内フローラが形成されます。相対的に有害菌が増えてくると、うんちの臭いも大人と同じようになってきます。

乳児期・幼児期の有用菌がほとんどを占める腸内フローラの状態は、その時期だけの一時的なものですが、乳児期・幼児期に腸内環境が乱れると成人後の健康にも影響するという研究結果も多く報告されています。例えば「アレルギー」「喘息」「炎症性腸疾患(IBD)」など炎症に関わる疾病、「肥満」「糖尿病」など代謝に関わる疾病、免疫器官や免疫機能の発達への影響があるといわれ、乳幼児期の腸内フローラの正常化はその後の健康や疾病にも深く関わっているのです。

赤ちゃんのうんちは健康状態と、腸内環境のバロメーターです。母子手帳に掲載されている「便色カード」で便の色をチェックしたり、硬さや形状を観察するとともに、臭いの変化にも気をつけて、体調やお腹の状態を知る手がかりにしてください。

(文/山田由紀子 編集/kintre!)

【参考】
「子どもの救急ってどんなとき?~下痢をした時」(群馬県WEBサイト)
牧野博、松木隆広「乳児腸内フローラの形成機構 生涯の健康状態を左右する重要なイベント」(『化学と生物』56巻4号 公益社団法人日本農芸化学会 2018年)
北岡本光「ヒトミルクオリゴ糖によるビフィズス菌増殖促進作用の分子機構」(『ミルクサイエンス』vol.61 2号 日本酪農科学会 2012)
「赤ちゃんのうんち 下痢編」(赤ちゃん & 子育てインフォ 公益財団法人母子衛生研究会)
伊藤喜久治「腸内フローラと健康 −乳幼児期のフローラの重要性」(「乳酸菌の科学」一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会・発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会)

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