小倉ヒラク×ドミニク・チェン、発酵好きの二人による出版トークイベントレポート<前編>

発酵デザイナー・小倉ヒラクさんと情報学研究者・ドミニク・チェンさんによる出版トークイベントが東京で行われました。“発酵”をライフワークにしているお二人からはどんなトークが醸し出されるのでしょうか?

高校生からおじいちゃんまで! 老若男女から注目される話題の2冊

今回のイベントは、2017年4月に発刊された小倉ヒラクさんの『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)の出版ツアーのひとつ。対談相手のドミニク・チェンさんも、7月に松岡正剛さんとの共著『謎床:思考が発酵する編集術』(晶文社)を出版したばかりです。

『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』は“発酵”を「文化人類学」の方法を使って分析したもの。一見ちょっと難しそうなタイトルですが、ページを開くと「微生物の力を使いこなすことで人類は発展してきた」ということが、ヒラクさんの人懐っこい文体で説明されていて、わかりやすく、どんどん読み進められます。

一方、ドミニクさんと松岡さんの対談形式で綴られている『謎床:思考が発酵する編集術』では、「情報はどう生まれ、どう変化していくのか?」という“謎”について知性がぶつかり合うトークが繰り広げられています。

小倉ヒラク×ドミニク・チェン、発酵好きの二人による出版トークイベントレポート
どちらも重版が決定した話題の書籍です

本イベントは、参加募集をしたところ1日でほぼ満席になったのだとか!? 若い女性から仕事帰りのサラリーマン、ご年配の方、そして高校生まで(!)、本当に幅広い年代の方が参加していて、その注目度の高さを感じました。

小倉ヒラク×ドミニク・チェン、発酵好きの二人による出版トークイベントレポート
発酵飲料(=お酒)を飲みながらゆる~くトークを聴講できます

小倉ヒラク×ドミニク・チェン、発酵好きの二人による出版トークイベントレポート
ステージ脇のオブジェには驚きの秘密が!

“謎”があるから、考えることはおもしろい!

では、イベントではどんなお話で盛り上がったのか? 少しだけご紹介します。

小倉ヒラク(以下、ヒラク):とにかく『謎床』はすっごくおもしろい! 松岡さんの本はとても難解なものもあるんだけど、この本はドミニクさんの言葉がうまくつなげてくれて、まるでドミニクさんと松岡さんと一緒に思考の迷路に入ったような感覚になれる。

ドミニク・チェン(以下、ドミニク):実は、タイトルの『謎床』は、対談の最後に出てきたフレーズなんです。サブタイトルの『思考が発酵する編集術』は、「“謎”を発酵させる床」という意味。“謎”は永遠のテーマだし、必ずしも答えを求めないものだと思うんです。本の中では僕と松岡さんの“謎”を育んできたプロセスを紹介し、その思考をまるでぬか床を混ぜるように“まぜまぜ”しているんです(笑)。

この本は出版されて間もないですが、すでにネットでもさまざまな感想を寄せてもらっています。中には誤読されているような感想もありますが、個人的に誤読はとてもいいことだと思っています。

ヒラク:SNSで本の感想を発信してくれるのってすごくうれしいですよね。だから本を読んだらどんどんつぶやいてほしい。

ドミニク:SNSで意見交換ができるのってものすごくおもしろくて、著者が思っていないことに気付かせてくれる。これもひとつの“発酵現象”だと思うんですよね。

ヒラク:僕の本も、書評をいっぱい書いてもらったんですけど、「あぁ、そういう切り口もあるんだ!」って驚いたし、そこからまた新しい思考が発展していくことがすごくスリリング。“謎”が生まれることで、永遠に物事が完結せずに進んでいくことがおもしろいし、「わからない」と思うことで、次のページに進んでいけるんです。

ところで“発酵”って日進月歩で研究が進んでいるにも関わらずそのほとんどが解明されていないって知っていますか? 大学の先生にぬか床について質問しても「なんかよくわからないんだよ~」って言われる(笑)。ぬか床って乳酸菌とか酵母とか、納豆菌みたいな菌とかたくさんの菌が混じっていてカオス状態。その菌たちがいろんな意見を出しながら「もっといい環境にするにはどうしたらいいか?」と協議し合っている。それってすごく日本的ですよね。

小倉ヒラク×ドミニク・チェン、発酵好きの二人による出版トークイベントレポート
歴史上の人物から最新テクノロジーまで、次々と話が飛び出す。お二人の知識の豊かさに驚きました

女性は会話をするとき“共感”を求めると言いますが、「誤読されるからこそ新しい考え方に気付かされる」というおふたりの意見は「なるほど!」と思いました。会話の中に疑問や反対意見が生まれることで新しい思考が生まれるんですね。

後編では、ヒラクさんの書籍を中心に炸裂した“発酵トーク”の内容と、イベント終了後の懇親会の様子をご紹介しますのでお楽しみに!

(取材・文/小野喜子)

【参考】
小倉ヒラク公式HP
http://hirakuogura.com/

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