「おならが出やすい」「次から次へとおならが止まらない」「おならのニオイが強い」など、おならにまつわる悩みを抱えていませんか? 健康な状態であれば、おならがまったく出ない人はいませんが、頻度が多すぎたり臭すぎるのは困りもの。そんな、おならにまつわる悩みの原因と対策について解説します。
目次
おならが正常に出るは健康の証

腸内にたまったガスのうち、おならとして体外へ放出されるのは約90%といわれています。ニオイや音が気になったり、我慢のしすぎでおなかが痛くなったりすることもありますが、おならが出るのは腸が動いている証拠でもあり、健康の証ともいえます。
しかし、回数が極端に増えたり、いつもよりニオイがきつくなったりするときは、体の変調を伝える印である可能性もあります。
ちなみに、おならのことを「屁」といいますが、その語源はハッキリとはしていません。一説にはおならの音を元にした擬声語といわれています。
通常は、1日に何回くらいが普通?
健康な人の、1日あたりのおならの平均回数や量については諸説あり、また個人差が大きいため一概にはいえませんが、一説には以下のようなデータがあります。
- 1日のおならの回数:13.6回±5.6回
- 1日のおならの量:200ml〜1,500ml(平均で360ml)
また、1回のおならの量は数ml〜150ml程度。1日でのおならの量は、多いときには3,000mlにもなるという説もあります。
では、1日でどのくらいの回数を越えると、通常とは異なる状況だと考えればいいのでしょうか。健康な人では、おならの回数は1日に25回を超えることはないとの説があり、「おならが多すぎるかどうか」を判断する基準の一つと考えられます。
おならの構成成分
おならの元となるのは、大腸内のガスです。このガスの組成はどうなっているのでしょうか。
海外の論文によれば、もっとも多いのは窒素、その他には酸素や炭酸ガス(二酸化炭素)、水素、メタンなどからなり、これらはいずれも無臭の気体で、割合は約99%にもなります。
残りの1%未満に、硫化水素などニオイのある気体が含まれ、これがおならのニオイの原因になっています。
おならの量や回数が増えすぎる原因

不快に感じない程度の量であれば、おならは健康の証拠ですが、増えすぎて困るケースもあります。その原因として考えられる理由には以下のようなものがあります。
口から飲み込む空気が多くなる
食事のときに、食べ物と一緒に飲み込む空気の量が多いとおならも増えてしまいます。ストレスなどにより唾を飲み込む回数が多くなったり、急いで食べたりしていると、空気を飲み込んでしまうことも増えて腸内ガスがたまりやすくなります。一説には、唾を飲み込む際には2ml〜4mlの空気も飲み込んでいるとされています。
腸内細菌の活動で腸内のガスが増える
体外から取り入れる空気の量のほか、腸内で生じるガスが増えておならが増えるケースもあります。腸内に棲む腸内細菌の発酵や腐敗の過程で腸内にガスを発生させます。それがおならの増加にもつながる可能性があります。
おならがにおうのはなぜ?

おならのニオイの元は、腸内ガスに含まれるごくわずかな悪臭ガスです。どのような原因で、悪臭を放つガスが生じるのでしょうか?
硫黄を含んだアミノ酸が悪臭の元に
腸内で悪臭のあるガスが生じる一因は、ウエルシュ菌などの悪玉菌がたんぱく質に含まれるメチオニンを発酵・腐敗により分解する際に、ニオイの元となる硫化水素を生み出すためです。メチオニンは必須アミノ酸の一つで、「含硫アミノ酸」の一つでもあります。「含硫」とは「硫黄を含む」という意味で、メチオニンに含まれる硫黄がおならのニオイの元となっています。メチオニンは肉や魚介類、鶏卵やうずらの卵、大豆やごま、ナッツ類などに多く含まれています。
肉や魚介類では脂身よりも赤身に多く含まれて、卵では鶏卵よりもうずらの卵のほうが多く含まれています。おならのニオイが気になるときは、メチオニンを多く含む食材を必要以上に摂りすぎないよう注意しましょう。
生活の乱れなどによる悪玉菌の増殖
ニオイの元となるガスを生み出す悪玉菌が増加することも、悪臭を強くする要因の一つです。たんぱく質・脂質の多い食生活や、不規則な生活リズム、各種のストレスのほか便通異常によっても腸内環境は悪化してしまいます。
止まらないおならの頻度や量を正常化させるには
おならの回数や量、そしてニオイが通常とは違うレベルだと感じたら、以下のような対策を試してみるといいでしょう。
よく噛んでゆっくり食べる

よく噛まずに早く食べてしまうと、食べ物と一緒に空気を飲み込む回数も増えてしまいます。食事のときにはリラックスした状態で、よく噛んでからゆっくり飲み込むようにしましょう。
鼻呼吸を意識

口呼吸が多いと、口から入った空気を飲み込みやすくなります。そこで、鼻から呼吸するように意識すると、空気の飲み込みを減らせます。
不足しがちな食物繊維を摂取する

日本人は食物繊維摂取量が不足しがちだといわれています。厚生労働省が策定する『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によれば、年代別の食物繊維摂取量は男女のどの年代でも、摂取目標量に届いていません。
食物繊維は人間の消化器官では消化されず、腸にそのまま到達するもので、体に有用な働きがあります。その一つが便通を整えて便通異常を防ぐ役割です。
水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維は、ビフィズス菌などの善玉菌によって分解される「エサ」となり、腸内環境を酸性へと傾けて善玉菌を増やす働きや、便をやわらかくする作用があります。
水に溶けない不溶性食物繊維も、同様に善玉菌の「エサ」となって善玉菌が増えやすい腸内環境作りに役立つほか、便の量を増やして腸管を刺激し、便通を整える役割を担います。
食物繊維を多く含む、海藻類や根菜類、きのこ類などを積極的に食べて、腸内環境を整えるとともに便の量を増やして排便の正常化につなげましょう。
腸の活動を活発にするため、適度な運動を行う

身体活動や運動量の低下も、便通異常をもたらす要因の一つと考えられます。筋肉を鍛える激しい運動よりも、負荷の少ない運動を長時間行う「有酸素運動」のほうが腸の動きを促すといわれていますので、ジョギングやウオーキングなどを行う時間を、生活習慣のなかに取り入れて便通異常の解消を目指しましょう。
まとめ
おならが出るのは健康の証ですが、なるべくなら出すぎないように気をつけたいものです。おならの悩みでストレスを感じることのないように、日頃から“おなら対策”を心がけてみませんか?
【参考文献】
「屁」(小学館『日本大百科全書』)
「屁」(小学館『日本国語大辞典』)
村岡衛「消化管ガス症状」(日本心身医学会『心身医学』vol.50 No.11 2010年)
「屁」(平凡社『世界大百科事典』)
寺井岳三、植田秀雄、行岡秀和「放屁モニター ─消化管活動の指標としてのおなら─」(『におい・かおり環境学会誌 2005年36巻5号』におい・かおり環境協会)
「空気をのみ込む病気…呑気症」(小郡三井医師会WEBサイト「病気と健康の話」)
丹羽利充 編『臨床栄養実践ガイド』(中外医学社)
「腸内細菌と健康」「食物繊維」「便秘と食習慣」(厚生労働省「e-ヘルスネット」)
高野正太「Ⅴ.慢性便秘症に対する食事療法,運動療法,理学療法」(日本大腸肛門病会『日本大腸肛門病会誌』第72巻 第 10 号 2019 年10月)
「健康は快便から」(四日市羽津医療センターWEBサイト「梅枝博士のうんち講座」)
「1日15回は普通!? おならが止まらない13の理由」「どうしてこんなにオナラが出るの? 12の理由をチェック」(ハースト婦人画報社「Women’s Health」)