便の臭いのもとは、ユリ科の花やジャスミン、スミレなどにも含まれているスカトールやインドールといった物質です。花の香りと同じ成分なのに、なぜ便は不快な臭いなのかというと、その理由は濃度の違いだとか。ふだんよりも臭いの原因物質の濃度が高まると、便の臭いはきつくなってしまい悩みのタネに…。今回はその悩みを解消するための、知識と対策を紹介します。
目次
便が臭いのは腸内環境の悪化による悪玉菌の活動が原因の1つ

便の臭いは、腸の状態や体調を示すシグナルです。ふだんと違う悪臭を便が放っているときには、腸の状態が悪化していることを示しているのです。悪臭を生み出す大きな要因となっているのが「食べ物」です。たんぱく質や脂質を摂りすぎると、腸内フローラのバランスが乱れてしまい、悪玉菌と呼ばれる「ウエルシュ菌」「病原性大腸菌」「黄色ブドウ球菌」の活動が優勢になります。
この悪玉菌がたんぱく質などを発酵・腐敗させて分解するときに生じるスカトールやインドールなどの臭いのもとが、便を臭くしてしまうのです。野菜でも、ニンニクやタマネギ、ラッキョウ、ニラなどに多く含まれる「アリシン」のように硫黄分が多いものを食べると、やはり便の臭いが強くなります。
また、腸の調子の悪化によって便通異常が起こることで、腸での便の滞留時間が長くなると、便の臭いは強くなります。
すぐに始められる便の悪臭対策4選
それでは、便の臭いを抑えるには、どのような方法が考えられるのでしょうか?
脂質の摂取を控える

脂身や鶏肉の皮のほか、バターやラード、生クリームなど脂肪分の多い食品・食材を少なくし、臭いを生み出す素となる脂質の摂取を控えるのが、もっとも手軽な対策といえます。脂身や鶏の皮を取り除いたり、調理時に油の使用を控えめにしたり、牛乳に代えて低脂肪乳を選ぶようにしましょう。
主食以外では「おやつ」の脂質にも注意したいところです。特にケーキやクッキー、チョコレート、油で揚げたスナック菓子などは、脂質が多く含まれています。肉を減らした代わりにおやつを多めに食べてしまっては、元の木阿弥になってしまいます。
また、たんぱく質を過剰に摂ると、消化吸収できないまま腸に届いたたんぱく質が悪玉菌によって分解されてしまい、便の臭いの元となる成分が増える可能性がありますので注意しましょう。
過剰な糖質制限は避ける

ダイエットのために炭水化物(糖質)の摂取を控える「糖質制限」を行う人も多いですが、便の臭い対策としては避けたほうがよいかもしれません。その理由は、主食である炭水化物を減らすことで、かえっておかずの量が増えてしまい、たんぱく質や脂質を多く摂りがちになったり、食物繊維の摂取量が少なくなりやすいためです。
食物繊維を摂取して、食生活の改善を

腸内の悪玉菌の働きを抑制するには、善玉菌を増やしたり、働きを活発にすることが対策になります。善玉菌のエサとなる「プレバイオティクス」を摂取すると、腸内の善玉菌を増やすのに役立ちます。プレバイオティクスとして知られる代表的な成分は食物繊維とオリゴ糖です。食物繊維を豊富に含む根菜類(さつまいも、ごぼうなど)や、きのこ類(干ししいたけ、乾燥きくらげなど)、豆類(大豆、いんげん豆、小豆など)を積極的に食事に取り入れましょう。
オリゴ糖を多く含む食品には、前述のアリシンを多く含むものもあります(タマネギ、ネギ、ニンニクなど)のでそれらは避け、アスパラガスやバナナを選ぶようにしましょう。
また、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌「プロバイオティクス」を直接摂取するのも、腸内フローラのバランスを整え、善玉菌の活動をサポートする方法です。
適度な運動習慣をつける

便通異常によって便が腸内を通過する時間が長くなっているために、悪臭が強くなるケースに悩んでいる方には、食生活・食習慣の改善とともに、運動不足を解消するための運動習慣を身につけることも、腸の調子を整えて悩みを解消するのに役立ちます。運動を通じて腸の動きが促され、便通異常の解消にもつながるためです。
まとめ
便の悪臭に悩む人にオススメしたい、4つの方法を紹介しました。便の状態や臭いは、腸内環境や体調のバロメーターでもあります。悪臭が続く場合は、まず腸内環境の改善から始めてみましょう。
【参考文献】
「腸内細菌と健康」「脂質異常症(実践・応用)」「間食のエネルギー(カロリー)」「便秘と食習慣」(厚生労働省「e-ヘルスネット」)
「健康長寿と腸と排泄の関連について」(健康長寿ネット)