胃や腸の調子が悪くなると、便通異常や腹痛、胃のむかつきなどを感じて体全体の調子が悪くなることも…。胃腸の調子を整えるために、手を使って足やおなかのツボを刺激してみましょう! 胃腸の調子を整える「脾」の働きを助けるツボを紹介します。
目次
胃腸の調子を保つには「脾」の働きが大切

東洋医学では内臓を「臓腑」と呼びます。「臓」は気や血や栄養素などを生み出す働きを持ち、「心」「肺」「脾」「肝」「腎」の「五臓」があります。「腑」は食べ物や水分が通る消化器官で「胆」「胃」「小腸」「大腸」「膀胱」「三焦」の「六腑」があります。
西洋医学でいう「肺」や「胃」などの臓器とほぼ一致しますが、実は「脾」が指すものは「脾臓」とは異なります。東洋医学の「脾」は消化液を分泌する器官とされ、膵臓だけでなく肝臓など、消化液を分泌するほかの器官の機能も含まれているのです。「脾」は、食べ物や水分の消化や吸収を調整して、栄養を体内に届ける役割を担っています。胃腸の調子を保つには、この「脾」の働きが大切です。
「脾」の機能のバランスが崩れると、胃腸の動きや働きも悪くなる

ストレスによる自律神経の乱れや、暴飲暴食などにより「脾」の働きが弱まってしまう状態を「脾虚」と呼びます。脾が不調になると水分の代謝が悪くなり、体に余分な水分がたまってしまい、胃もたれや食欲低下、便通異常や痛みなどをもたらすとされています。
体の余分な水分を排出することを、東洋医学では「除湿」と呼びます。脾の機能のバランスを元に戻すのに役立つ、ツボを紹介します。
胃腸の不調に効く、「脾」を活発化する5つのツボ

東洋医学では、人間の体には「経絡(けいらく)」と呼ばれる「体表面と臓腑をつなぐ筋」が14本あるとされています。「脾」とつながっているのが「脾経」で正式には「足の太陰脾経」と呼ばれています。この脾経の上にあるツボを刺激すると「脾」の働きを活性化し、胃腸の不調に効果をもたらすのです。
脾を刺激するツボ①:太白

場所は足の内側の、親指の付け根(第一関節)にあり、目印は足の親指を折り曲げたときに大きく深いしわです。そのしわができたところの真上に位置するのが「太白」です。胃腸症状全般の改善に使われるツボで、消化や吸収を改善する効果があります。
脾を刺激するツボ②:公孫
①で紹介した「太白」から指2本分、かかと側へ行ったところが「公孫」のツボ。脾経の「経穴(ほかの経絡に連絡するツボ)」とされ、胃腸の働きを整えて消化や吸収の能力を高める効果があります。胃がムカムカとするときや吐き気をもよおすときに刺激するといいでしょう。
脾を刺激するツボ③:三陰交
足の内側で、くるぶしから指の幅4本分上に上がった位置で、骨と筋肉の境目にあるのが「三陰交」です。冷えに効くツボとしても知られ、夏バテによる冷たいものや飲み物の摂りすぎなどで胃腸の動きが鈍くなっているときに刺激すると効果的です。胃腸の冷えを感じたときには、このツボを指圧で刺激したり、お灸などで温めてみましょう。

脾を刺激するツボ④:大横
おへそから外側に4寸、指3本分の位置にあるツボが「大横」です。「大横」はちょうど大腸の上にあたり、「大横」を押すと腸に直接刺激を与えられます。腑を巡る気の流れが改善され、腑気(内臓を巡る気)の流れもよくなります。呼吸を吐くタイミングに合わせ親指の腹を使ってグッと押しましょう。便通異常に効果があるとされています。
脾を刺激するツボ⑤:腹哀
おへそから指4本分真上へ上がり、そこから体の外側へ指6本分行ったところにあるのが「腹哀」です。「哀」は悲しくなくという意味で、おなかが泣き声を上げているような症状に効果があるといわれています。指で刺激すると重く感じるような痛みがあります。便通異常や消化不良に効くツボです。
まとめ
ぬるめのお風呂に長時間つかって体全体を温めたり、カイロやお灸でコリを感じる部分を温めたりすると、体の緊張がほぐれて血液の滞りが解消され、胃腸が温められることで不調解消につながりやすくなりますので、ご紹介した「脾」を活性化するツボへの刺激とともにお試しください。
【参考文献】
『いちばんわかりやすい漢方の基本講座』(佐藤弘、吉川信、谷口ももよ監修 成美堂出版 2014年)