肉料理を食べたあとや、ニンニクなど刺激や香りの強い食べ物を食べたあと、自分でも顔をしかめてしまうほどの臭いおならが出てしまった経験はないでしょうか。硫黄のような刺激臭がしたり、卵が腐ったようなニオイだったりと、臭いおならのニオイはさまざまですが、その原因やニオイの違いの理由はいったいどこにあるのでしょうか? おならの臭さの原因とおならのニオイ対策について取り上げます。
目次
おならが臭い原因は「悪玉菌が生み出す臭気ガス」

おならの元は、実はほとんどが「口から飲み込んだ空気」。食べ物や飲み物を飲み込むときにいっしょに胃の中へ入った空気が主成分です。ではなぜ、もともと無臭の空気があれほどのニオイを持つのでしょうか。
体積の割合でいえばわずか1%程度の、さまざまな悪臭の元となるガスがニオイの原因です。そのガスを生み出すのは腸内細菌の悪玉菌のしわざ。
たんぱく質や脂質の多い食事を摂りすぎたり、便通異常や不規則な生活が続いたりすると、腸内細菌のバランス(腸内フローラ)が乱れ、ウエルシュ菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌など、悪玉菌の活動が活発になります。悪玉菌の働きによる発酵や腐敗によって「硫化水素」「メタンチオール」「トリメチルアミン」「硫化ジメチル」「スカトール」「インドール」などの臭気ガスを発生させ、おならが臭くなるのです。
おならが頻発する原因は「ストレス」や「病気」など

1日のおならの回数や量には諸説ありますが、平均回数で1日5回〜10回前後、量にすると1回100ml〜3000mlといわれています。焼き芋を食べた後におならがたくさん出ることがありますが、これはサツマイモに含まれる食物繊維が腸で分解される際にガスを生じさせるためです。
また、食事が変わっていないのに、おならがたくさん発生するときは睡眠不足などからくるストレスによる影響も考えられます。ストレスが腸の働きをつかさどる自律神経のバランスを乱し、腸の動きを鈍らせます。動きの鈍った腸は、腸内に届いた食物をうまく消化できずガスが発生しやすくなってしまいます。
“腸の疲労”=腸内フローラの乱れ

おならが臭くなるのは、腸内フローラのバランスが乱れているため。いわば腸が疲れている状態です。臭いの元となる悪玉菌の活動を抑制するには、善玉菌を増やして働きを活発にし、腸内を弱酸性へと傾ける必要があります。
”腸の疲労”を回復させる方法
規則正しい生活

腸の働きをつかさどる自律神経のバランスを乱す大きな原因が睡眠不足です。自律神経はそれぞれ反対の働きをする「交感神経」と「副交感神経」に分かれていて、日中は交感神経が優位になり体が活発に動き、夜になると副交感神経が優位になり体は休息体制になります。
副交感神経が優位になっているとき、腸での消化や吸収が促進されます。寝不足などが続くと副交感神経が優位になる時間が短くなります。そのため、睡眠時に行われるはずの消化活動やぜん動運動ができなくなり、腹痛や便通異常などの不調をもたらしてしまうのです。
睡眠時間の確保するとともに、毎朝同じ時間に起床するようにしたり、日中は太陽の光を浴びて体内時計を整えるようにしたりするなど、規則正しい生活を心がけることが良質な睡眠をもたらし、腸の疲労回復にもつながります。
食物繊維の摂取

腸内細菌のエサとなる食物繊維をしっかり摂取するのも、腸の疲労回復に役立ちます。特に、昆布を水で戻すときに生じる「ぬめり」や、らっきょう、ケール、大麦などの食品に多く含まれる水溶性食物繊維は、便をやわらかくする働きに加えて、腸内の善玉菌のエサとなって善玉菌の活動を助け、腸内フローラのバランスを整える役割も持っています。
おならの悪臭の元となるたんぱく質や脂質の摂りすぎに注意すると同時に、日本人は食物繊維の摂取量が不足しがちといわれていますので、ダイエット中の人でも積極的に食物繊維を含む食材を摂るようにしましょう。
便意を我慢しない

便通異常も腸内細菌のバランスを乱す要因になります。便通異常になりやすい人の特徴に、便意を我慢してしまうという傾向があるといわれています。接客業など職業的に思いどおりトイレに行けない人や、子どもから目や手を離せず自分のトイレを後回しにしてしまいがちな育児中の母親などは、便意を我慢してしまいがちです。
思い立ったときにすぐトイレに行けない人は、1日の中で胃腸の動きが活発になりやすい朝食後にトイレへ行き、排便する習慣をつけるようトレーニングするのがオススメです。
適度な運動習慣

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2019年)では、1回30分以上の運動を週2回以上行う習慣を1年以上続けている人の割合は、20歳以上で男性33.4%、女性25.1%となっており約7割の人が「運動習慣がない」というデータが出ています。ここ10年間のデータでも、男性で30%前後、女性25%前後で推移していて運動不足を実感している人も多いのではないでしょうか。
適度な運動習慣は、体内の血液の巡りを改善して腸の動きを活発にさせます。普段の生活のなかでも、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上り下りしたり、朝や夜にウオーキングをするといった継続的な運動習慣をとりいれ、腸の働きを促して腸内の健康を保つようにしましょう。
臭いおならが病院へ行くべきサインになることも
病気の症状としておならが出ることもありますので、もし生活改善を続けていても臭いおならや腹部の張りが数か月続くようであれば、すみやかに医師の診察を受けましょう。
【参考文献】
「健康は快便から 梅枝博士のうんち講座」(四日市羽津医療センターWEBサイト)
正岡建洋「おならの原因」(キョーリン製薬『ドクターサロン』61巻11月号 2017年)
「おなら」(旭川消化器肛門クリニックWEBサイト)